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番外編
遺体処理
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「いや~、今日も派手に殺したっスねー」
ヌコはのんきに拍手していた。静葉の足元には彼女の剣の犠牲者達が転がっていた。どの死体も腕や脚などどこかしらの部分が切断されており、常人にとっては見るに堪えない凄惨な光景であった。
今日の魔勇者の相手はサンユー王国のサンメート騎士団。同王国内で魔勇者の目撃情報が騎士団に届き、国王の命を受けて騎士団の第三部隊が出撃した。
「まったく…バカの一つ覚えみたいに真正面から来て…少しは頭を使いなさいっての」
第三部隊の数は三百。少数である魔勇者のパーティーを包囲し、撃破するというありふれた作戦で挑んできた。もっとも、結果は語るまでもないものであった。
「殺っておいてなんだけどさ…この死体ってまさかほったらかし?」
顔についた返り血を袖で拭いながら静葉はふと思った。
「ああ。それに関しましてはご心配なく。きっちり片付けられますので」
上空からの援護を終えたアウルがゆっくり降下しながら静葉の疑問に答えた。
「片付け?誰かやってくれるっての?」
「まあ、そんなところです。では、ボチボチ帰りましょうか」
アウルはそう言いながら静葉の手を取り、移動魔法『ワール』を唱えた。三人はつむじ風に包まれ姿を消した。
亡骸がそこかしこに散らばる森の中。近くの茂みが不自然に揺れ出した。
「おうおうおう。今日もたくさんお亡くなりになったねぇ、おい」
カラス頭の鳥人が木の陰から姿を現した。
「今日の犠牲者は兵士さん達か」
その後ろからカメレオン頭の魔法使いが出てきた。
「こりゃ掘るのが大変だな」
大きなもぐらが地面から現れた。
「こうして見ると、ちょっとした地獄絵図だね、グリューさん」
もぐらが掘った穴からトカゲ男が顔を出した。
「どれ。さっそく始めるぞ。クー。チェン。レーボン」
グリューと呼ばれたもぐらは両手の爪を前に出し、勢いよく穴を掘り始めた。
「それにしても魔王様も変わってるなぁ。魔族だけでなく、敵の人間の死体も弔ってやれってなぁ」
クーと呼ばれた鳥人は拾った亡骸を丁寧に穴に入れながらグリューに話しかけた。
「『命がけで戦い、散っていった者には敬意を表し、丁重に弔え』っておっしゃってたな。そこに人間と魔族の違いはないってとこじゃね?」
グリューは手際よく人数分の穴を掘っていった。
「死体はそのまま放っておくと腐敗して疫病の原因にもなりかねないらしいからね。きっちり処理しておかなくちゃね。『フレイム』」
チェンと呼ばれたカメレオンの魔法使いは炎魔法を唱え、穴に入れられた死体に火を灯した。
「でもまさか、外で死んだ兵士や冒険者がうちら魔族に埋葬されているなんて人間達は思わねぇよな?」
レーボンと呼ばれたトカゲ男はそう言いながら焼却を終えた死体の上に土をかぶせ、十字架型の墓石を立てた。
一通り作業を終えた四人は墓石に向かい、両手を組んで目を閉じ、祈りを捧げた。
「…人間って確か聖の女神のパルティア様を信仰しているんだよな?祈るウチらはファナトス様を信仰している身だけどいいのかな?」
「いいんじゃね?ファナトス様はそこんところ寛容らしいからな」
クーの疑問にグリューは目を閉じたまま答えた。
「ふう…早くこんなことしなくてすむ世の中になってほしいもんだぜ」
祈りを終え、レーボンが溜息をついた。
「そうだな。そのために魔王様も魔勇者様も頑張ってるんだ。俺らはその裏を支えていかなきゃな」
グリューは懐からたばこを取り出し、一服しながら答えた。
ヌコはのんきに拍手していた。静葉の足元には彼女の剣の犠牲者達が転がっていた。どの死体も腕や脚などどこかしらの部分が切断されており、常人にとっては見るに堪えない凄惨な光景であった。
今日の魔勇者の相手はサンユー王国のサンメート騎士団。同王国内で魔勇者の目撃情報が騎士団に届き、国王の命を受けて騎士団の第三部隊が出撃した。
「まったく…バカの一つ覚えみたいに真正面から来て…少しは頭を使いなさいっての」
第三部隊の数は三百。少数である魔勇者のパーティーを包囲し、撃破するというありふれた作戦で挑んできた。もっとも、結果は語るまでもないものであった。
「殺っておいてなんだけどさ…この死体ってまさかほったらかし?」
顔についた返り血を袖で拭いながら静葉はふと思った。
「ああ。それに関しましてはご心配なく。きっちり片付けられますので」
上空からの援護を終えたアウルがゆっくり降下しながら静葉の疑問に答えた。
「片付け?誰かやってくれるっての?」
「まあ、そんなところです。では、ボチボチ帰りましょうか」
アウルはそう言いながら静葉の手を取り、移動魔法『ワール』を唱えた。三人はつむじ風に包まれ姿を消した。
亡骸がそこかしこに散らばる森の中。近くの茂みが不自然に揺れ出した。
「おうおうおう。今日もたくさんお亡くなりになったねぇ、おい」
カラス頭の鳥人が木の陰から姿を現した。
「今日の犠牲者は兵士さん達か」
その後ろからカメレオン頭の魔法使いが出てきた。
「こりゃ掘るのが大変だな」
大きなもぐらが地面から現れた。
「こうして見ると、ちょっとした地獄絵図だね、グリューさん」
もぐらが掘った穴からトカゲ男が顔を出した。
「どれ。さっそく始めるぞ。クー。チェン。レーボン」
グリューと呼ばれたもぐらは両手の爪を前に出し、勢いよく穴を掘り始めた。
「それにしても魔王様も変わってるなぁ。魔族だけでなく、敵の人間の死体も弔ってやれってなぁ」
クーと呼ばれた鳥人は拾った亡骸を丁寧に穴に入れながらグリューに話しかけた。
「『命がけで戦い、散っていった者には敬意を表し、丁重に弔え』っておっしゃってたな。そこに人間と魔族の違いはないってとこじゃね?」
グリューは手際よく人数分の穴を掘っていった。
「死体はそのまま放っておくと腐敗して疫病の原因にもなりかねないらしいからね。きっちり処理しておかなくちゃね。『フレイム』」
チェンと呼ばれたカメレオンの魔法使いは炎魔法を唱え、穴に入れられた死体に火を灯した。
「でもまさか、外で死んだ兵士や冒険者がうちら魔族に埋葬されているなんて人間達は思わねぇよな?」
レーボンと呼ばれたトカゲ男はそう言いながら焼却を終えた死体の上に土をかぶせ、十字架型の墓石を立てた。
一通り作業を終えた四人は墓石に向かい、両手を組んで目を閉じ、祈りを捧げた。
「…人間って確か聖の女神のパルティア様を信仰しているんだよな?祈るウチらはファナトス様を信仰している身だけどいいのかな?」
「いいんじゃね?ファナトス様はそこんところ寛容らしいからな」
クーの疑問にグリューは目を閉じたまま答えた。
「ふう…早くこんなことしなくてすむ世の中になってほしいもんだぜ」
祈りを終え、レーボンが溜息をついた。
「そうだな。そのために魔王様も魔勇者様も頑張ってるんだ。俺らはその裏を支えていかなきゃな」
グリューは懐からたばこを取り出し、一服しながら答えた。
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