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第十章

フラグ回収

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「さて、シズハ・ミナガワよ。話の続きを――」


 ドオォン!


 リーヴァが振り向いた瞬間、轟音と共に部屋の床全体が崩れ、二人は真下のフロアに落下した。

「きゃあぁ!」
「ぐはっ!」

 着地に失敗したリーヴァは強く尻もちをついた。

「ちょっと!フラグ回収速すぎるでしょ!」

 腰布に偽装した赤いマフラーによって落下の衝撃を相殺した静葉はそう毒づきながら体勢を整えた。前を見ると、迎撃のために用意された大砲が無残に打ち砕かれ、その機能を失っていた。周りを見渡すと、予備の砲弾全てが炎に包まれ、部屋全体を赤く染めていた。

「まさか、これもあなたが…?」
「バカな!部屋の真下を爆破するなどリスクが高すぎる!」
 リーヴァは大きくかぶりを振りながら立ち上がった。
「そもそも私の計画ではこんな目立つ工作は――」
「危ない!」
 反論を続けるリーヴァの背後を見た静葉は彼を無理やり横に押しのけ、目前のイレギュラーの顔面に拳をぶちこんだ。
「ぐぶえぇぇ!」
 黒い炎に包まれた拳を顔面にもらったイレギュラーは醜い悲鳴をあげ、背中から床にたたきつけられた。

「こいつは…海賊?」
 静葉は今しがた撃退した敵の容姿を注視した。顔は潰れてよくわからないが、白いタンクトップにドクロのマーク入りのバンダナ。典型的な海賊衣装だ。この男はサーベル片手にリーヴァを背後から斬りつけようとしていたのだ。
「でもどうやって?」
 静葉は爆発で開かれたであろう穴から外を覗いた。他の砲台もこの部屋と同じような目にあったのか、この船からの砲撃はぴたりと止んでいる。それをチャンスと見たいくつかの海賊船がこちらに少しずつ近づいているが、直接乗り込むにはまだまだ距離がある。最初から潜入していたのだろうか?
 そんな思考を阻むかのように静葉の背後から別の海賊が襲い掛かってきた。その殺気を読み取った赤いマフラーは海賊の右手に巻き付き、強い締め付けてその手の骨を砕いた。
「ぐあぁぁっ!」
 その悲鳴に反応した静葉は振り向きながらも黒い炎の手刀を打ち込み、海賊の首をへし折った。

「…考える暇くらいよこしなさいよ…」

 そう呟いた静葉は赤いマフラーが奪い取ったサーベルを受け取った。
「それについては同感だ。しかし…」
 静葉は横から聞こえたリーヴァの声に反応した。

「…もう少し突き飛ばす方向を考える余裕くらいは持ってほしいものだがな…」

 静葉に身体を押しのけられたリーヴァはバランスを崩し、砲弾の引火によって生じた炎に身を落としていたのだ。
海竜族の彼にとってこの程度の炎は大したダメージにはならない。しかし、上質な布地を使った服は大きく焦げており、とてもパーティーに戻れる状態ではなかった。

「自分でどうにかしなさいよ。そのくらい」

 リーヴァの苦言をあしらいながら静葉は殺した敵の生命力を吸収した。
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