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第二章
報告と相談
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「はっはっは!まぁ、無事治療できてよかったではないか!」
翌日、私はエイルを連れてズワースの洞窟を訪れた。彼は人間の姿になり、胡坐をかいて高笑いしていた。
「ほんとに他人事だと思って…、結構たるかったのよ?」
のんきな黒竜の様子に私は溜息をついた。夕食の後、アウルの攻撃をくらって倒れたヌコの後始末や魔王への報告、エイルの寝床の確保など色々忙しかった。ホント人の面倒を見るのってめんどくさい。
ちなみにエイルは姿を変えたズワースを見て言葉を失っていた。
「あの…え…こ、この人は…?」
エイルはズワースを指さしながら彼と私を交互に見ていた。
「こいつはみんなの人気者の黒竜よ」
「え?で、でも…」
「おぉ、そうか。これじゃわからんのう」
とぼけた口調でズワースは変身を解いた。煙が晴れるとそこには巨大な黒竜がいた。
「どうじゃ?これでわかるじゃろう」
「えぇ!?へ…変身…?」
「魔族にとっちゃこんなん当たり前らしいのよ。私も最初は驚いたわ」
肩をすくめながら私は言った。
「それよりも小僧、今お前さんが何を考えているか知らぬがとりあえずわしとこやつに感謝することじゃな。わしの血がなければすでに死んでおったぞ?」
「え…?」
「あぁ、まだ言ってなかったっけ?」
私は改めて先日ここで起きたことを説明した。よく考えたら竜の血で応急処置したことを言ってなかった。
「りゅ…竜の血…?」
「そうよ。どうやら高級な素材になるらしいけど」
「そ…そんな高級なものを僕に?」
「ちなみにそれってどのくらいの価値があるの?」
興味本位で私は尋ねてみた。
「そりゃかなりの価値ですよ!種類にもよりますけど100mlあれば二世帯住宅が買えるぐらいはしますよ!」
「そ、そんなにするの?」
「ほほう、そいつは驚いたのう。お前さん、少しもらっていくか?」
「いや、別に売る相手がいないから遠慮しとくわ」
どうせ魔王城にそういうストックがあるでしょうしね。今のところ住む場所にゃ困ってないし、大金が必要な用もない。
「それはさておき、こいつどうしよう?」
私は色々戸惑う少年を指さしながらズワースに尋ねた。
「そうじゃのう…まずは本人にどうしたいか聞くべきではないか?」
それもそうね。
「で…あなたはどうしたいの?」
「どうって…もちろん、ギルドに帰りたいです…」
やはりそうか。
「昨日も言ったけど、あんたの仲間はおそらくあんたのこと忘れていると思うわよ?」
「いえ、きっと今頃みんな心配してるはずです。早く戻って無事だと知らせないと…」
ほんと甘ちゃんね。
「まだそんなこと――っておわっ!」
話の途中で後ろから何かが爆発したような轟音が響いた。またズワースが火球を放ったかと思ったが、どうやら違うようだ。エイルを庇いながら後ろを振り向くと、出入り口があるほうの壁が吹き飛ばされ、煙が立ち昇っていた。
「なんなの…?」
煙が晴れると、そこから小さめの竜の頭が三体現れた。
「…竜?」
翌日、私はエイルを連れてズワースの洞窟を訪れた。彼は人間の姿になり、胡坐をかいて高笑いしていた。
「ほんとに他人事だと思って…、結構たるかったのよ?」
のんきな黒竜の様子に私は溜息をついた。夕食の後、アウルの攻撃をくらって倒れたヌコの後始末や魔王への報告、エイルの寝床の確保など色々忙しかった。ホント人の面倒を見るのってめんどくさい。
ちなみにエイルは姿を変えたズワースを見て言葉を失っていた。
「あの…え…こ、この人は…?」
エイルはズワースを指さしながら彼と私を交互に見ていた。
「こいつはみんなの人気者の黒竜よ」
「え?で、でも…」
「おぉ、そうか。これじゃわからんのう」
とぼけた口調でズワースは変身を解いた。煙が晴れるとそこには巨大な黒竜がいた。
「どうじゃ?これでわかるじゃろう」
「えぇ!?へ…変身…?」
「魔族にとっちゃこんなん当たり前らしいのよ。私も最初は驚いたわ」
肩をすくめながら私は言った。
「それよりも小僧、今お前さんが何を考えているか知らぬがとりあえずわしとこやつに感謝することじゃな。わしの血がなければすでに死んでおったぞ?」
「え…?」
「あぁ、まだ言ってなかったっけ?」
私は改めて先日ここで起きたことを説明した。よく考えたら竜の血で応急処置したことを言ってなかった。
「りゅ…竜の血…?」
「そうよ。どうやら高級な素材になるらしいけど」
「そ…そんな高級なものを僕に?」
「ちなみにそれってどのくらいの価値があるの?」
興味本位で私は尋ねてみた。
「そりゃかなりの価値ですよ!種類にもよりますけど100mlあれば二世帯住宅が買えるぐらいはしますよ!」
「そ、そんなにするの?」
「ほほう、そいつは驚いたのう。お前さん、少しもらっていくか?」
「いや、別に売る相手がいないから遠慮しとくわ」
どうせ魔王城にそういうストックがあるでしょうしね。今のところ住む場所にゃ困ってないし、大金が必要な用もない。
「それはさておき、こいつどうしよう?」
私は色々戸惑う少年を指さしながらズワースに尋ねた。
「そうじゃのう…まずは本人にどうしたいか聞くべきではないか?」
それもそうね。
「で…あなたはどうしたいの?」
「どうって…もちろん、ギルドに帰りたいです…」
やはりそうか。
「昨日も言ったけど、あんたの仲間はおそらくあんたのこと忘れていると思うわよ?」
「いえ、きっと今頃みんな心配してるはずです。早く戻って無事だと知らせないと…」
ほんと甘ちゃんね。
「まだそんなこと――っておわっ!」
話の途中で後ろから何かが爆発したような轟音が響いた。またズワースが火球を放ったかと思ったが、どうやら違うようだ。エイルを庇いながら後ろを振り向くと、出入り口があるほうの壁が吹き飛ばされ、煙が立ち昇っていた。
「なんなの…?」
煙が晴れると、そこから小さめの竜の頭が三体現れた。
「…竜?」
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