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番外編

ヌコの熱弁

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「…そう言えばさぁ、思い出したんだけど」
「ん?なんスか?」
 魔王城の廊下、自販機の前で私とヌコはだべっていた。

「この前風呂入った時、あんた脱衣所にいなかった?」
「な、ななにゃにゃんのことっスきゃねー?」
 彼女はあからさまに動揺した表情をしていた。
 あれは私が初めて魔王城ここに来た日、彼女と顔を合わせる前のことである。アウルとウーナに案内されて大浴場に来た時、私が使ったロッカーの隣でヌコによく似た猫又がロッカーをなんか漁っていたのだ。その時は別に気にしていなかったが、改めて見るとこいつはその時の猫又によく似ているのだ。そしてこの反応を見るにその疑惑は確かなものとなりそうだ。

「ま、待ってくださいっスよー。あたしはそんなロッカーをピッキングして女子の下着をくすねて男共に売り払うなんてせこい真似なんかしてないっスよー」
「そこまで言ってないんだけど…」
 ていうかそんなことをしていたのかこの猫…。私は呆れながら廊下に目をやると、下半身がクモのタランチュラとほとんど人魂の姿のゴーストがおしゃべりしながら通り過ぎていった。衣装を見るにどちらも女性のようだ。この猫の前科と今の光景から私の中に一つの疑問が生まれた。

「…ああいう女子も下着とか着けているの?」
 我ながらしょうもないと思う質問を投げかけた。
「もちろんっスよ!どんな種族でも下着は着けてるもんっス!」
 自分の好きな話題をふられたからかヌコは目を輝かせながら語りだした。
「女子たるもの下着は大事なファッション!この魔大陸では種族に合わせた下着が一般に流通しているんスよー!」
 大声で何をぬかしとるんじゃこいつは。しかし、タランチュラやゴーストが着ける下着というのもちょっと気になる。

「一番の人気はズバリ人型!あたしやアウルさんのように人間に近い種族用の下着はデザインも秀逸で人間にも需要があるほどなんスよ!」
 人間にも売り飛ばしてるんかい!私が苦い表情をしているにもかかわらずヌコは矢継ぎ早に話を続けた。
「とくに魔勇者様ぐらいの歳の子の物は大人気!オークみたいな体格の人間が――」
 まだまだ話は続くがさすがにしんどい。もう心を無にして話を右から左に聞き流した。

「そんなわけでああいう娘達の下着は高く売れるんスよねーゲヘヘ…」
「…やっぱり盗んでるんじゃないの…」
「あ」
 まんまと自白したヌコはゆっくりと自販機に小銭を入れてジュースを購入し、私の前に差し出した。

「…これあげるから魔勇者様の下着を下さいっス」

 私は厚かましい猫又の顔面にパンチをプレゼントした。
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