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第二章

疲れた

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「なるほど~。それで帰りが遅くなったんスね~」

 魔王城の食堂で私は両腕をテーブルに乗せてぐったりしていた。
「そうなのよ…任務よりそっちの方で疲れたわ」
 帰還に時間がかかり、魔王からお叱りの一つでもくらうかと思ったが、あの黒竜の言ったことはどうやら本当らしく、魔王は私を奴に紹介するつもりで今回の任務を見繕ったらしい。何があったかを話すと魔王はあっさり納得した。
 あの後私は黒竜と一緒に腕立てや腹筋などの筋トレフルコースを体験することになった。腕も腰も足もまんべんなくクタクタだ。こりゃ明日は筋肉痛かな。
「よかったらわたくしがマッサージして差し上げますどすえ~。ちゃんとほぐさないと筋肉痛になるどすえ~」
 そう言いながらウーナは私の肩を揉み始めた。けっこう気持ちいい。

「あの方は黒竜ズワース。先代魔王、つまり今の魔王様の御父上の友人です」
 お茶を注ぎながらアウルが説明した。
「魔王の父の…?」
 なんか年老いた雰囲気はするなと思ってはいたけど、そんな関係だったとはね。
「聞いた話によりますと、昔は魔王様に武術の手ほどきをしたことがあるとのことです」
「へー、そうなんだ…」
 つまり魔王の師匠というわけか。
「…というか、あんた知っていたの…?」
 ウーナに腕を揉まれながら私はアウルに質問した。
「いやぁ、黙っていた方がおもしろ…ゲフンゲフン、ご本人から直接話してもらったほうがよろしいかなと思いまして」
 おい、本音が少し漏れたぞ、この野郎。他にも聞きたいことがいくつかあるが、クタクタで聞く気力がなかった。

「まぁ、今日のところは風呂に入ってゆっくりと休んでください。任務と訓練お疲れ様です」
「…そうさせてもらうわ…」
 こういう日はお湯につかって疲労をとりたい気分だわ。私はカルボが用意したプロテインドリンクを一口飲んだ。ヨーグルト味だ。

「それで、明日もズワース様のところに行くんスか?」
 ヌコが小魚をつまみながら尋ねた。
「冗談じゃないわよ。ああいう習い事は苦手なのよ。だいたい、任務もあるしそんな暇など…」
「あぁ、それに関しましては問題ありません」
「え?」
 アウルが谷間から何かの紙を取り出した。なんちゅうところにしまってんだコラ。その紙を広げると、何かの文章と魔王のサインが記されていた。
「先ほど魔王様から『明日から毎日ズワースの洞窟に通い、訓練を受けよ』という指令を授かりました。任務もそれに合わせて調整するとのことです」

「…うせやろ…」

 そこまで至れり尽くせりにしなくてもいいのに…。
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