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第一章
食堂へご案内
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とりあえず、私はベッドに身体を預け、横になった。ベッドと枕は程よい固さで寝心地は悪くない。
「まったく…とんでもないことになったわね…」
まさか自分がさっきまで読んでいた小説――ラノベの主人公みたいな目にあうとは思いもしなかった。もっとも召喚したのが美しいお姫様ではなく、いかつい魔王だったが。ラノベでは主人公はお姫様に涙目で手を握られながらお願いされていたが、私の場合は強引に魔王の力を植え付けられ、同時に自分の命を人質にされてしまった。全然ロマンチックじゃねぇ。
まぁ、正義だの平和だのきれいごと言いながら女の色気でたぶらかすお姫様よりは潔い気もするけどね。
「…こりゃハーレム展開は望めないかな…」
ちっとも望んではいないけどね。なったとしてもオークとかドラゴンとかスライムとかの人外にモテモテ的な展開になりそうだし、そいつはごめんだ。私にそんな趣味はない。
身体を起こし、壁に掛けられた鏡を覗いてみる。魔王の力によって魔勇者とやらにされたわけだが、見た目は何も変わりないようである。せいぜい念じると手のひらから黒い炎が出るくらいだ。今のところ不都合はないが、もしかしたら時間が経つにつれて力や姿が変化するというパターンかもしれない。頭から角が生え、背中から黒い翼が生え、目から石化光線が出る…そんな厨二の妄想の産物みたいな姿になってしまうかもしれない。果たしてどうなることやら…。そう考えながら備え付けのコップにポットからお茶を注ぎ、一口飲んだ。
「…けっこう美味いわね…」
その味は元の世界でいう麦茶によく似ていた。安心する味だ。
「ポッポー!ポッポー!六時ー!」
壁に掛けられた時計が時間を告げる。時計の上にでかい鳥の頭が飾られており、鳥の口から音声が出る仕組みになっている。なんだこのデザインは。
それはさておき、元の世界ではボチボチ夕食の時間だ。ここではどんな食事が出るかな?そもそも魔物はどんなものを食べているのだろうか?まさか人肉とか出ないでしょうね…?
そう考えていると扉からノックする音が聞こえた。
「どーぞ」
私が入室を許可すると、先程の鳥人のメイド、アウルが扉を開けた。
「失礼します」
アウルは奥ゆかしく一礼した。
「夕食の準備ができました。これから食堂へご案内いたします」
そう言われて私は着ていた制服を整え、部屋を出た。
「食堂まで少し歩きますが大丈夫でしょうか?」
「平気よ」
むしろ歩きたい気分だった。魔王の言う通り、少しずつでもこの城のことは知りたいからね。
アウルの後を追う形で私は石造りの廊下を歩いた。道中、ゴブリンやゴースト、スケルトンなど多種多様な魔物とすれ違ったが、そのほとんどが私を目で追った。まぁ、こんな魔物だらけの場所に人間がいるのが珍しいのだろう。
「あれが魔勇者様?人間じゃん!」
「人間の女子ってあんなに可愛いの?」
「顔もそうだけど、着ている服も素敵だわぁ」
「好き」
「結婚したい…」
「僕もそう思います」
…うん、聞かなかったことにしよう。
「まったく…とんでもないことになったわね…」
まさか自分がさっきまで読んでいた小説――ラノベの主人公みたいな目にあうとは思いもしなかった。もっとも召喚したのが美しいお姫様ではなく、いかつい魔王だったが。ラノベでは主人公はお姫様に涙目で手を握られながらお願いされていたが、私の場合は強引に魔王の力を植え付けられ、同時に自分の命を人質にされてしまった。全然ロマンチックじゃねぇ。
まぁ、正義だの平和だのきれいごと言いながら女の色気でたぶらかすお姫様よりは潔い気もするけどね。
「…こりゃハーレム展開は望めないかな…」
ちっとも望んではいないけどね。なったとしてもオークとかドラゴンとかスライムとかの人外にモテモテ的な展開になりそうだし、そいつはごめんだ。私にそんな趣味はない。
身体を起こし、壁に掛けられた鏡を覗いてみる。魔王の力によって魔勇者とやらにされたわけだが、見た目は何も変わりないようである。せいぜい念じると手のひらから黒い炎が出るくらいだ。今のところ不都合はないが、もしかしたら時間が経つにつれて力や姿が変化するというパターンかもしれない。頭から角が生え、背中から黒い翼が生え、目から石化光線が出る…そんな厨二の妄想の産物みたいな姿になってしまうかもしれない。果たしてどうなることやら…。そう考えながら備え付けのコップにポットからお茶を注ぎ、一口飲んだ。
「…けっこう美味いわね…」
その味は元の世界でいう麦茶によく似ていた。安心する味だ。
「ポッポー!ポッポー!六時ー!」
壁に掛けられた時計が時間を告げる。時計の上にでかい鳥の頭が飾られており、鳥の口から音声が出る仕組みになっている。なんだこのデザインは。
それはさておき、元の世界ではボチボチ夕食の時間だ。ここではどんな食事が出るかな?そもそも魔物はどんなものを食べているのだろうか?まさか人肉とか出ないでしょうね…?
そう考えていると扉からノックする音が聞こえた。
「どーぞ」
私が入室を許可すると、先程の鳥人のメイド、アウルが扉を開けた。
「失礼します」
アウルは奥ゆかしく一礼した。
「夕食の準備ができました。これから食堂へご案内いたします」
そう言われて私は着ていた制服を整え、部屋を出た。
「食堂まで少し歩きますが大丈夫でしょうか?」
「平気よ」
むしろ歩きたい気分だった。魔王の言う通り、少しずつでもこの城のことは知りたいからね。
アウルの後を追う形で私は石造りの廊下を歩いた。道中、ゴブリンやゴースト、スケルトンなど多種多様な魔物とすれ違ったが、そのほとんどが私を目で追った。まぁ、こんな魔物だらけの場所に人間がいるのが珍しいのだろう。
「あれが魔勇者様?人間じゃん!」
「人間の女子ってあんなに可愛いの?」
「顔もそうだけど、着ている服も素敵だわぁ」
「好き」
「結婚したい…」
「僕もそう思います」
…うん、聞かなかったことにしよう。
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