【完結】斜め前の遠藤君。

古堂 素央

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 ――あ、やっぱり今日も行くんだ

 遠藤君行きつけのパン屋は住宅街にぽつんとあって、知る人ぞ知る小さなお店だった。遠藤君と同じものが食べてみたくて、実はわたしも何度か放課後に行ったことがあったりする。
 ストーカーじゃないよ? そう、パンが食べてみたかっただけ。

 たまたまコンビニで見かけた遠藤君が買ってたシャンプーとリンス、同じもの買って毎日それで頭洗ってるけど、たまたま香りが気に入っただけなんだもん。
 遠藤君とお揃いの香りって密かによろこんではいるけど、あ、これってやっぱりストーカー?

 それはさておき、わたしは慌てて教室を出た。胸にはパンがつまった袋を抱いて、遠藤君の背中を探して昇降口に向かう廊下を急いだ。

「え、遠藤君!」

 勇気を振り絞って声をかけた。靴を履きかけてた遠藤君は動きを止めて、驚いたように顔を上げた。
 鳩が豆でっぽう食らったようって、きっとこんな感じを言うんだろうな。だってわたしが話かけるなんてこと、今まで一度もなかったもんね。

「大木、何、どうしたの?」
「あの、あのねっ」

 ぱんぱんのビニール袋を目の前に掲げながら、夕べ何度も練習した言葉をわたしはいっぺんに吐き出した。
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