522 / 528
第6章 嘘つきな騎士と破られた託宣
番外編《小話》『ボクの名前はアルフレート!』
しおりを挟む
「ヴァルト様、こんな時間にどうなさったのですか?」
「少し手が空いた」
大きなクマの縫いぐるみ二体に挟まれて座っていたリーゼロッテは、赤いリボンのアルフレートを腕に引き寄せ、ジークヴァルトが座るスペースを空けた。
にもかかわらず、ジークヴァルトはリーゼロッテを抱えあげ、自身の膝に乗せてどっかりと座り込んだ。反動で隣に置かれていた黄色いリボンのアルフレートジュニアが、ぽてりとジークヴァルトに寄りかかる。
ジークヴァルトの膝にリーゼロッテが乗り、リーゼロッテの膝の上にはアルフレートが乗っている。その横でアルフレートジュニアが、まるで独りにしないでと寂しがっているかのようだ。
「もう、ヴァルト様、せっかくお席を作りましたのに」
「別に不都合はないだろう?」
言いながら茶菓子のクッキーをあーんと差し出される。素直にそれを口にして、リーゼロッテはもくもくと有難く頬張った。
「今日は口真似はしないのか?」
「口真似? 何のですか?」
「今、抱えているそれのだ」
先日、盗み見られていた醜態を思い出し、リーゼロッテの頬が瞬時に染まる。ひとの黒歴史を蒸し返すなど、なんとデリカシーのない男だろうか。
悔しいのでここは開き直るしかない。唇を尖らせて、リーゼロッテはぷくと頬を膨らませた。
「口真似ではありません。あれは腹話術と言うのですわ」
「腹話術?」
「ええ、唇を動かさずに声を出すことで、あたかも人形がしゃべっているように見せる職人技です」
「あの時、お前の唇は動いていたが?」
「で、ですから職人技なのですわ。技を極めた者は、まるで人形と会話をしているように見えるんですのよ」
良く分からないと言ったように、ジークヴァルトの眉間にしわが寄った。
「いいですわ。もう一度わたくしがやって見せます」
暇を持て余しすぎて、実はこっそり練習を続けていたリーゼロッテだ。今こそ、その成果を見せる時だと、ジークヴァルトの膝を無理やりに降りる。代わりにアルフレートジュニアをジークヴァルトに抱えさせ、自分は隣に腰かけた。
「よろしいですか? よく見ていてくださいませね?」
演技に入る女優のように、ふっと息を吐き短く精神統一をする。次の瞬間にっこりと笑みを作って、リーゼロッテは膝に乗せたアルフレートと見つめ合った。
『ボクの名前はアルフレート! やぁ、リーゼロッテ、気分はどう?』
「とってもいい気分よ。あなたはどう?」
『ボクもいい気分だよ!』
甲高い声と普段のリーゼロッテの声が、交互に口から発せられる。アルフレートをそれらしく動かしつつ、自分の芝居も忘れない。唇は多少動いてしまっているものの、我ながらいい感じでアルフレートの声が出せているのではないだろうか。
『ねぇ、リーゼロッテ。これは何?』
「これはペンね」
『あれは?』
「パイナップルよ」
「それを一緒にするとどうなるの?」
『ペンとパイナップルね』
「ペンパイナ……って、〇コ太郎か~い!」
「ぴ、こた、ろ……?」
ぼそっと入った突っ込みに、リーゼロッテははっと我に返った。調子に乗りすぎて、脳内にとどめておくべき情報がうっかり駄々漏れになってしまった。
こほんとひとつ咳払いをしてから、淑女然とした態度で居住まいを正す。何事もなかったかのように、凛とした表情でジークヴァルトを見やった。
「と、こんな感じであたかもふたりで会話をしているように見せるイリュージョン的な本格エンターテインメントですわ」
「だがやはりお前の唇は動いていたぞ? しかも途中で口調が入れ替わっていた」
唇をアヒルのようにつままれる。どや顔で押し切ろうとしたところを、真正面からぶった切られてしまった。
ぐっと喉をつまらせて、リーゼロッテは途端に涙目になった。しかしここで認めてしまったら、自分の負けが決定だ。ジークヴァルトの手をアルフレートの腕で払いのけ、何とか反撃を試みる。
『だったらヴァルト様もやってみてよ! 案外難しいんだから』
「そうですわ、ジークヴァルト様もやってみてくださいませ!」
こうなったらジークヴァルトも巻き込んでやる。やけくそになったリーゼロッテは、アルフレートと共に一気に畳みかけた。
眉根を寄せたジークヴァルトが、何か言おうと口を開きかける。だが唇を動かしてはいけないことを思い出したのか、アルフレートジュニアを抱えたまま口を引き結んだ。
じぃっとリーゼロッテが見つめる中、しばしの時間、部屋に沈黙が訪れる。
「ほら、難しくってできませんでしょう?」
『違うよ、リーゼロッテ。ヴァルト様は恥ずかし過ぎて声が出せないんだよ』
「まぁ、きっとそうね、アルフレート」
『いや、そんなことはないぞ?』
低めだが、ジークヴァルトとは思えない甲高い声が響いた。驚いてその顔を見る。
『やり方に少し戸惑っただけだ。……と、ボクを抱えるこの男が言っている』
目の前に、ずいとアルフレートジュニアを近づけられた。驚くべきことに、ジークヴァルトの唇は全くと言うほど動いていない。
「うそ、どうしてそんな……」
『こんなことまで器用にこなせるなんて、リーゼロッテ、ヴァルト様に惚れ直しちゃうね!』
動揺のあまり、あらぬことを口走る。すぐにしまったと思ったが、ジークヴァルトを褒め倒して恥ずかしがらせる作戦にシフトした。
『ヴァルト様、ほんとカッコいいもんね。こんな素敵な旦那さま、なかなか世間にいないんじゃない?』
「そうね、腹話術もこなせる旦那様だなんて、わたくし本当にしあわせ者だわ」
『背も高くてカッコよくって、仕事もできるし、頼りがいもあるし、ホント世界一の旦那様だね!』
ジークヴァルトの眉間のしわが目に見えて深まった。これは相当動揺しているに違いない。
ほくそ笑み、攻めの一手でリーゼロッテは追い打ちをかけようとした。
『可愛いな』
「えっ?」
『可愛いな、リーゼロッテ』
アルフレートジュニアのもふもふ顔が、さらにずいと近づいた。
『可愛すぎるぞ、リーゼロッテ』
つぶらの瞳と見つめ合い反応できずに固まっていると、アルフレートジュニアが視界から消え去った。後ろから現れたジークヴァルトに、素早く唇を奪われる。
『……と、この男が言っている』
アルフレートジュニアの片腕を上げ、ジークヴァルトは唇を動かさないまま意地悪く魔王の笑みを浮かべた。
「もう! ヴァルト様ったら!」
真っ赤になったリーゼロッテが、アルフレートの腕を使ってぽこぽことジークヴァルトを叩く。そこを引き寄せられて、縫いぐるみを二体挟み込んだまま、深く深く口づけられた。
『ふっ、本当に可愛いぞ、リーゼロッテ』
「も、もう分かりましたから……」
完全敗北を認め、リーゼロッテはただただ真っ赤になった。
ちなみにこのふたりは、たいそう立派な国で、たいそう立派な地位にいる、たいそう立派なご貴族夫妻である。ま、言うまでもないか。
「少し手が空いた」
大きなクマの縫いぐるみ二体に挟まれて座っていたリーゼロッテは、赤いリボンのアルフレートを腕に引き寄せ、ジークヴァルトが座るスペースを空けた。
にもかかわらず、ジークヴァルトはリーゼロッテを抱えあげ、自身の膝に乗せてどっかりと座り込んだ。反動で隣に置かれていた黄色いリボンのアルフレートジュニアが、ぽてりとジークヴァルトに寄りかかる。
ジークヴァルトの膝にリーゼロッテが乗り、リーゼロッテの膝の上にはアルフレートが乗っている。その横でアルフレートジュニアが、まるで独りにしないでと寂しがっているかのようだ。
「もう、ヴァルト様、せっかくお席を作りましたのに」
「別に不都合はないだろう?」
言いながら茶菓子のクッキーをあーんと差し出される。素直にそれを口にして、リーゼロッテはもくもくと有難く頬張った。
「今日は口真似はしないのか?」
「口真似? 何のですか?」
「今、抱えているそれのだ」
先日、盗み見られていた醜態を思い出し、リーゼロッテの頬が瞬時に染まる。ひとの黒歴史を蒸し返すなど、なんとデリカシーのない男だろうか。
悔しいのでここは開き直るしかない。唇を尖らせて、リーゼロッテはぷくと頬を膨らませた。
「口真似ではありません。あれは腹話術と言うのですわ」
「腹話術?」
「ええ、唇を動かさずに声を出すことで、あたかも人形がしゃべっているように見せる職人技です」
「あの時、お前の唇は動いていたが?」
「で、ですから職人技なのですわ。技を極めた者は、まるで人形と会話をしているように見えるんですのよ」
良く分からないと言ったように、ジークヴァルトの眉間にしわが寄った。
「いいですわ。もう一度わたくしがやって見せます」
暇を持て余しすぎて、実はこっそり練習を続けていたリーゼロッテだ。今こそ、その成果を見せる時だと、ジークヴァルトの膝を無理やりに降りる。代わりにアルフレートジュニアをジークヴァルトに抱えさせ、自分は隣に腰かけた。
「よろしいですか? よく見ていてくださいませね?」
演技に入る女優のように、ふっと息を吐き短く精神統一をする。次の瞬間にっこりと笑みを作って、リーゼロッテは膝に乗せたアルフレートと見つめ合った。
『ボクの名前はアルフレート! やぁ、リーゼロッテ、気分はどう?』
「とってもいい気分よ。あなたはどう?」
『ボクもいい気分だよ!』
甲高い声と普段のリーゼロッテの声が、交互に口から発せられる。アルフレートをそれらしく動かしつつ、自分の芝居も忘れない。唇は多少動いてしまっているものの、我ながらいい感じでアルフレートの声が出せているのではないだろうか。
『ねぇ、リーゼロッテ。これは何?』
「これはペンね」
『あれは?』
「パイナップルよ」
「それを一緒にするとどうなるの?」
『ペンとパイナップルね』
「ペンパイナ……って、〇コ太郎か~い!」
「ぴ、こた、ろ……?」
ぼそっと入った突っ込みに、リーゼロッテははっと我に返った。調子に乗りすぎて、脳内にとどめておくべき情報がうっかり駄々漏れになってしまった。
こほんとひとつ咳払いをしてから、淑女然とした態度で居住まいを正す。何事もなかったかのように、凛とした表情でジークヴァルトを見やった。
「と、こんな感じであたかもふたりで会話をしているように見せるイリュージョン的な本格エンターテインメントですわ」
「だがやはりお前の唇は動いていたぞ? しかも途中で口調が入れ替わっていた」
唇をアヒルのようにつままれる。どや顔で押し切ろうとしたところを、真正面からぶった切られてしまった。
ぐっと喉をつまらせて、リーゼロッテは途端に涙目になった。しかしここで認めてしまったら、自分の負けが決定だ。ジークヴァルトの手をアルフレートの腕で払いのけ、何とか反撃を試みる。
『だったらヴァルト様もやってみてよ! 案外難しいんだから』
「そうですわ、ジークヴァルト様もやってみてくださいませ!」
こうなったらジークヴァルトも巻き込んでやる。やけくそになったリーゼロッテは、アルフレートと共に一気に畳みかけた。
眉根を寄せたジークヴァルトが、何か言おうと口を開きかける。だが唇を動かしてはいけないことを思い出したのか、アルフレートジュニアを抱えたまま口を引き結んだ。
じぃっとリーゼロッテが見つめる中、しばしの時間、部屋に沈黙が訪れる。
「ほら、難しくってできませんでしょう?」
『違うよ、リーゼロッテ。ヴァルト様は恥ずかし過ぎて声が出せないんだよ』
「まぁ、きっとそうね、アルフレート」
『いや、そんなことはないぞ?』
低めだが、ジークヴァルトとは思えない甲高い声が響いた。驚いてその顔を見る。
『やり方に少し戸惑っただけだ。……と、ボクを抱えるこの男が言っている』
目の前に、ずいとアルフレートジュニアを近づけられた。驚くべきことに、ジークヴァルトの唇は全くと言うほど動いていない。
「うそ、どうしてそんな……」
『こんなことまで器用にこなせるなんて、リーゼロッテ、ヴァルト様に惚れ直しちゃうね!』
動揺のあまり、あらぬことを口走る。すぐにしまったと思ったが、ジークヴァルトを褒め倒して恥ずかしがらせる作戦にシフトした。
『ヴァルト様、ほんとカッコいいもんね。こんな素敵な旦那さま、なかなか世間にいないんじゃない?』
「そうね、腹話術もこなせる旦那様だなんて、わたくし本当にしあわせ者だわ」
『背も高くてカッコよくって、仕事もできるし、頼りがいもあるし、ホント世界一の旦那様だね!』
ジークヴァルトの眉間のしわが目に見えて深まった。これは相当動揺しているに違いない。
ほくそ笑み、攻めの一手でリーゼロッテは追い打ちをかけようとした。
『可愛いな』
「えっ?」
『可愛いな、リーゼロッテ』
アルフレートジュニアのもふもふ顔が、さらにずいと近づいた。
『可愛すぎるぞ、リーゼロッテ』
つぶらの瞳と見つめ合い反応できずに固まっていると、アルフレートジュニアが視界から消え去った。後ろから現れたジークヴァルトに、素早く唇を奪われる。
『……と、この男が言っている』
アルフレートジュニアの片腕を上げ、ジークヴァルトは唇を動かさないまま意地悪く魔王の笑みを浮かべた。
「もう! ヴァルト様ったら!」
真っ赤になったリーゼロッテが、アルフレートの腕を使ってぽこぽことジークヴァルトを叩く。そこを引き寄せられて、縫いぐるみを二体挟み込んだまま、深く深く口づけられた。
『ふっ、本当に可愛いぞ、リーゼロッテ』
「も、もう分かりましたから……」
完全敗北を認め、リーゼロッテはただただ真っ赤になった。
ちなみにこのふたりは、たいそう立派な国で、たいそう立派な地位にいる、たいそう立派なご貴族夫妻である。ま、言うまでもないか。
10
※小説家になろうグループムーンライトノベルズにて【R18】ふたつ名の令嬢と龍の託宣 不定期投稿中☆
第6章 嘘つきな騎士と破られた託宣 スタートました♡
※アルファポリス版は第1部令嬢編として一度完結としましたが、ムーンでは第6章を継続投稿中です。
こちらはR18ですので、18歳以上(高校生不可)の方のみ閲覧できます。
第6章 嘘つきな騎士と破られた託宣 スタートました♡
※アルファポリス版は第1部令嬢編として一度完結としましたが、ムーンでは第6章を継続投稿中です。
こちらはR18ですので、18歳以上(高校生不可)の方のみ閲覧できます。
お気に入りに追加
272
あなたにおすすめの小説

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中

【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます
鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────
私、この子と生きていきますっ!!
シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。
幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。
時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。
やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。
それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。
けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────
生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。
※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる