337 / 528
第2章 氷の王子と消えた託宣
4
しおりを挟む
◇
「なんだ、こりゃあ」
目の前の光景にバルバナスは目を見張った。雪が積もった裏庭で、その周りだけが土がむき出しになっている。
何より目を引くのは、そこに立つ一本の木だ。このくすんだ雪景色の中、その枝に生い茂る緑だけがことさら異彩を放っていた。
葉かと思いきや、そこにまとわりついているのはどこかで見覚えのある緑の力だ。その木の根元で、異形の者が木に片手をついて上を見上げたまま立っている。
「おい、なんであんなことになってんだ?」
「あの異形に関する調書の写しです」
横にいた騎士がバルバナスにぶ厚い紙の束を手渡した。それをパラパラめくると、途中でそれを投げ返す。
「数百年間、年に一度は騎士団か神官の調査が入ってるのに、なんでここにきて星を堕とす者なんだ? しかもつい最近、デルプフェルトの小僧が来てんじゃねえか」
忌々しそうに言うと、バルバナスは周囲を見渡した。
バルバナスをはじめ騎士が数人と公爵家の人間が、雪のない円をやや距離を置いて取り囲んでいる。物々しい雰囲気にみな緊張した面持ちだが、ここにいるのは全員力ある者だ。
家令のエッカルトに、ユリウス・レルナー、奥にいる大男は子爵家のヨハン・カークだろう。バルバナスは最後に、先ほど案内を務めた細目の青年に目を止めた。
「お前、ジークヴァルトの……マテアスとか言ったな。なんでこんなになるまで報告しなかった?」
「恐れながら、あの異形がこのようになった後、国には即刻ご報告いたしております。直後からこの区画は誰も近づけぬように封鎖済みですし、公爵家としましては、先日の調査を終え、今後の指示を待っていたところでございます」
隙のないマテアスの返事に、バルバナスはちっと舌打ちをした。ざっと見たところ、ここにいる者の中で自分に次いで力を有しているのはこのマテアスだ。騎士団の特務隊にいる誰よりも、もしかしかしたらマテアスの方が上かもしれない。
ジークヴァルトの手駒に優秀な者がそろっているのも腹立たしい。龍付きはみな無条件で優遇される。この国の成り立ちを思うと当然ともいえるのだが、それこそが諸悪の根源だ。
バルバナスは憮然とした表情のまま、枯れ木の根元に立つ異形に目を向けた。確かめるように、その腕を真っ直ぐと伸ばす。
雪が積もっていない円状の空間に、手のひらを押し当てるように進めていく。ふわりとした圧に軽く押し戻されるような感覚があるが、中に入れないということはなさそうだ。
そのままその空間に足を踏み入れようとしたところで、隣にいた年配の騎士がそれを制した。
「バルバナス様、わたしが行きます」
禁忌の異形とされる星を堕とす者の実態は、いまだによくわかっていない。史実の中で幾度かその名が出てくるだけで、長いこと伝説のように囁かれてきた。
しかし、それは実在するのだと多くの者に知らしめたのが、十五年前におきた前ザイデル公爵の謀反だった。公爵にそそのかされてハインリヒを殺害しようとたくらんだ女は、それを目前にして龍の手により星に堕ちたという。
バルバナスが一歩下がって頷き返すと、その騎士は意を決したように円の中に入っていった。瞬間、身をこわばらせ、数歩歩いたところでいきなり騎士は片膝をついた。異形にはまだ近づいていない、そんなすぐそこの距離だった。
ちっと舌打ちをして、バルバナスは躊躇することなく、自らその中に踏み入った。途端に空気が重くなる。濃厚な緑の力に肺がつぶされるような感覚だ。
脂汗をかいてうずくまっている騎士の腕を引っ張り上げると、バルバナスはその円からすぐに出た。見ると、バルバナス自身も汗が噴き出している。はっと息を吐いて、動揺を表に出さないようにするだけで精いっぱいだ。
引き上げた騎士を他の騎士に任せると、バルバナスはいまだ微動だにしていないジョンを睨みつけた。
「おい、あの侍女連れてこい」
鋭い声に臆することなく、エッカルトが冷静な声で聴き返す。
「恐れながら、あの侍女とは、エデラー男爵令嬢のことでございましょうか?」
「わかってんならさっさと連れてこい!」
その怒鳴り声に、奥にいたヨハンがびくっとその巨体を震わせた。
エラは無知なる者だ。先ほど、バルバナスもそれを見抜いたのだろう。エッカルトの目配せに、マテアスが渋々と言った様子でこの場を離れていく。
ほどなくして、戸惑った様子のエラがマテアスに連れられてきた。物々しい雰囲気の中、バルバナスをはじめ、騎士とエッカルトたちの視線がエラへと集まる。
「これをあの木の根元へかけてこい」
バルバナスに透明な液体が入った小瓶を渡されて、エラは困惑した様子で枯れ木に視線を向けた。みなが取り囲む木の周りは、きれいに雪が避けられている。だが、何の変哲もないただの枯れた大木だ。
晩夏から秋にかけてリーゼロッテは、よくこの木の根元近くで休憩をしていた。主にエマニュエルが付き添うことが多かったが、エラも幾度かこの場所へ足を運んだことがある。
リーゼロッテはいつもここでお茶を飲みながら、耳を澄まして時折静かにうなずいていた。小鳥のさえずりに耳を傾けるように、口元をほころばせるその様子は、まるで一枚の絵のようにエラの目には映った。
秋風が吹く頃には公爵に行くのを止められたのか、リーゼロッテはここへ行きたいとは言わなくなった。そのくらいから、リーゼロッテに何か隠し事をされているように、エラはずっと感じとっている。
「エラ様。何かおかしいと思ったら、すぐにお戻りください」
マテアスに小声で耳打ちされて、エラはこくりと頷いた。なぜこんなことを要求されているのかは皆目見当もつかないが、王族であるバルバナスの命令に逆らえるはずもない。
何の抵抗もなく円の中に入り、そのまま木に向かってすたすたと歩いていく。そんなエラを、一同は固唾を飲んで見守った。エラにはジョンが視えていないのだろうが、周りにいる者はいつ何が起こってもおかしくはないと、否応なしに緊張感が高まっていく。
木の根元まで来るとエラは一度こちらを振り返った。すぐ横にいるジョンは、動じることなくじっと上を見上げたままだ。
「そのままそこに水をかけろ」
バルバナスに言われ、エラは手にした小瓶を、木の根元に向けて傾ける。ちょうどジョンのいる足元あたりへと、液体は注がれようとした。
「きゃあっ」
その刹那、エラが手にしていた小瓶が上へと弾き飛ばされ、空中で粉々に砕け散った。中の液体が、瞬時にその場で霧散する。
「エラ様!」
誰もが動けないでいる中、マテアスがなんの戸惑いもなくその円へと飛び込んだ。ぐっと顔をしかめながらも素早くエラの手を引いて、その外へと連れだしていく。
その様子をバルバナスは冷静に眺めやっていた。エラが聖水を傾けた時、一瞬だがジョンから殺気が放たれた。だが、それを覆い隠すように、緑の力がさらに強まったのをバルバナスは確かに目にした。小瓶を割ったのは異形だが、聖水を霧散させたのは緑の力といった所か。
「ちっ。木ごと守り石みたいになっちまってる」
しかも、その力が守っているのは、どうやらあの異形そのものらしい。
「埒があかねぇな」
吐き捨てるように言うと、バルバナスは苛立ったまま振り返った。
「リーゼロッテ呼んで来い。今すぐだ」
「しかし、リーゼロッテ様は今、王城にいらっしゃいますれば……」
エッカルトの答えにバルバナスは再び舌打ちすると、踵を返した。
「明日までに連れ戻して来い。例え、龍付きだとしても従ってもらうぞ。ジークヴァルトにそう言っとけ」
顔だけこちらに向けてそう言い残すと、バルバナスは騎士たちを連れて屋敷の方へと去っていく。有無を言わさぬその背中を、残された者たちは黙って見送った。
龍付きとは、龍の託宣を受けた者たちを揶揄する言葉だ。主に、龍の存在を知り、それでも龍から託宣を受けなかった人間が使う類のものだった。
「なあ、エッカルト。バルバナス様って、いまだ龍に選ばれなかったこと根に持ってんのか? 弟に王位を取られて、託宣の存在を知らない貴族に無能扱いされちゃあ、まあ、無理もねえ話か」
ユリウスの小声に、エッカルトが滅多なことを言うなという視線を向ける。
「オレなんざ、選ばれなくて万々歳だぜ? まったく、王族のプライドってのも厄介なシロモンだな」
託宣を受けた者たちを見ていると、どうにもこうにも窮屈そうだ。あのジークフリートでさえそう見えるのだから、それを望む奴らの気が知れない。
「それ以上おっしゃいますと、今度こそ大奥様にご報告せざるを得ませんな」
エッカルトの言葉に、ユリウスはぴゅっと背筋を正した。
「分かった、もう何も言わん。頼むからディートリンデにだけは黙っててくれ」
情けない震え声を出すユリウスに、エッカルトは小さくため息をついた。
「なんだ、こりゃあ」
目の前の光景にバルバナスは目を見張った。雪が積もった裏庭で、その周りだけが土がむき出しになっている。
何より目を引くのは、そこに立つ一本の木だ。このくすんだ雪景色の中、その枝に生い茂る緑だけがことさら異彩を放っていた。
葉かと思いきや、そこにまとわりついているのはどこかで見覚えのある緑の力だ。その木の根元で、異形の者が木に片手をついて上を見上げたまま立っている。
「おい、なんであんなことになってんだ?」
「あの異形に関する調書の写しです」
横にいた騎士がバルバナスにぶ厚い紙の束を手渡した。それをパラパラめくると、途中でそれを投げ返す。
「数百年間、年に一度は騎士団か神官の調査が入ってるのに、なんでここにきて星を堕とす者なんだ? しかもつい最近、デルプフェルトの小僧が来てんじゃねえか」
忌々しそうに言うと、バルバナスは周囲を見渡した。
バルバナスをはじめ騎士が数人と公爵家の人間が、雪のない円をやや距離を置いて取り囲んでいる。物々しい雰囲気にみな緊張した面持ちだが、ここにいるのは全員力ある者だ。
家令のエッカルトに、ユリウス・レルナー、奥にいる大男は子爵家のヨハン・カークだろう。バルバナスは最後に、先ほど案内を務めた細目の青年に目を止めた。
「お前、ジークヴァルトの……マテアスとか言ったな。なんでこんなになるまで報告しなかった?」
「恐れながら、あの異形がこのようになった後、国には即刻ご報告いたしております。直後からこの区画は誰も近づけぬように封鎖済みですし、公爵家としましては、先日の調査を終え、今後の指示を待っていたところでございます」
隙のないマテアスの返事に、バルバナスはちっと舌打ちをした。ざっと見たところ、ここにいる者の中で自分に次いで力を有しているのはこのマテアスだ。騎士団の特務隊にいる誰よりも、もしかしかしたらマテアスの方が上かもしれない。
ジークヴァルトの手駒に優秀な者がそろっているのも腹立たしい。龍付きはみな無条件で優遇される。この国の成り立ちを思うと当然ともいえるのだが、それこそが諸悪の根源だ。
バルバナスは憮然とした表情のまま、枯れ木の根元に立つ異形に目を向けた。確かめるように、その腕を真っ直ぐと伸ばす。
雪が積もっていない円状の空間に、手のひらを押し当てるように進めていく。ふわりとした圧に軽く押し戻されるような感覚があるが、中に入れないということはなさそうだ。
そのままその空間に足を踏み入れようとしたところで、隣にいた年配の騎士がそれを制した。
「バルバナス様、わたしが行きます」
禁忌の異形とされる星を堕とす者の実態は、いまだによくわかっていない。史実の中で幾度かその名が出てくるだけで、長いこと伝説のように囁かれてきた。
しかし、それは実在するのだと多くの者に知らしめたのが、十五年前におきた前ザイデル公爵の謀反だった。公爵にそそのかされてハインリヒを殺害しようとたくらんだ女は、それを目前にして龍の手により星に堕ちたという。
バルバナスが一歩下がって頷き返すと、その騎士は意を決したように円の中に入っていった。瞬間、身をこわばらせ、数歩歩いたところでいきなり騎士は片膝をついた。異形にはまだ近づいていない、そんなすぐそこの距離だった。
ちっと舌打ちをして、バルバナスは躊躇することなく、自らその中に踏み入った。途端に空気が重くなる。濃厚な緑の力に肺がつぶされるような感覚だ。
脂汗をかいてうずくまっている騎士の腕を引っ張り上げると、バルバナスはその円からすぐに出た。見ると、バルバナス自身も汗が噴き出している。はっと息を吐いて、動揺を表に出さないようにするだけで精いっぱいだ。
引き上げた騎士を他の騎士に任せると、バルバナスはいまだ微動だにしていないジョンを睨みつけた。
「おい、あの侍女連れてこい」
鋭い声に臆することなく、エッカルトが冷静な声で聴き返す。
「恐れながら、あの侍女とは、エデラー男爵令嬢のことでございましょうか?」
「わかってんならさっさと連れてこい!」
その怒鳴り声に、奥にいたヨハンがびくっとその巨体を震わせた。
エラは無知なる者だ。先ほど、バルバナスもそれを見抜いたのだろう。エッカルトの目配せに、マテアスが渋々と言った様子でこの場を離れていく。
ほどなくして、戸惑った様子のエラがマテアスに連れられてきた。物々しい雰囲気の中、バルバナスをはじめ、騎士とエッカルトたちの視線がエラへと集まる。
「これをあの木の根元へかけてこい」
バルバナスに透明な液体が入った小瓶を渡されて、エラは困惑した様子で枯れ木に視線を向けた。みなが取り囲む木の周りは、きれいに雪が避けられている。だが、何の変哲もないただの枯れた大木だ。
晩夏から秋にかけてリーゼロッテは、よくこの木の根元近くで休憩をしていた。主にエマニュエルが付き添うことが多かったが、エラも幾度かこの場所へ足を運んだことがある。
リーゼロッテはいつもここでお茶を飲みながら、耳を澄まして時折静かにうなずいていた。小鳥のさえずりに耳を傾けるように、口元をほころばせるその様子は、まるで一枚の絵のようにエラの目には映った。
秋風が吹く頃には公爵に行くのを止められたのか、リーゼロッテはここへ行きたいとは言わなくなった。そのくらいから、リーゼロッテに何か隠し事をされているように、エラはずっと感じとっている。
「エラ様。何かおかしいと思ったら、すぐにお戻りください」
マテアスに小声で耳打ちされて、エラはこくりと頷いた。なぜこんなことを要求されているのかは皆目見当もつかないが、王族であるバルバナスの命令に逆らえるはずもない。
何の抵抗もなく円の中に入り、そのまま木に向かってすたすたと歩いていく。そんなエラを、一同は固唾を飲んで見守った。エラにはジョンが視えていないのだろうが、周りにいる者はいつ何が起こってもおかしくはないと、否応なしに緊張感が高まっていく。
木の根元まで来るとエラは一度こちらを振り返った。すぐ横にいるジョンは、動じることなくじっと上を見上げたままだ。
「そのままそこに水をかけろ」
バルバナスに言われ、エラは手にした小瓶を、木の根元に向けて傾ける。ちょうどジョンのいる足元あたりへと、液体は注がれようとした。
「きゃあっ」
その刹那、エラが手にしていた小瓶が上へと弾き飛ばされ、空中で粉々に砕け散った。中の液体が、瞬時にその場で霧散する。
「エラ様!」
誰もが動けないでいる中、マテアスがなんの戸惑いもなくその円へと飛び込んだ。ぐっと顔をしかめながらも素早くエラの手を引いて、その外へと連れだしていく。
その様子をバルバナスは冷静に眺めやっていた。エラが聖水を傾けた時、一瞬だがジョンから殺気が放たれた。だが、それを覆い隠すように、緑の力がさらに強まったのをバルバナスは確かに目にした。小瓶を割ったのは異形だが、聖水を霧散させたのは緑の力といった所か。
「ちっ。木ごと守り石みたいになっちまってる」
しかも、その力が守っているのは、どうやらあの異形そのものらしい。
「埒があかねぇな」
吐き捨てるように言うと、バルバナスは苛立ったまま振り返った。
「リーゼロッテ呼んで来い。今すぐだ」
「しかし、リーゼロッテ様は今、王城にいらっしゃいますれば……」
エッカルトの答えにバルバナスは再び舌打ちすると、踵を返した。
「明日までに連れ戻して来い。例え、龍付きだとしても従ってもらうぞ。ジークヴァルトにそう言っとけ」
顔だけこちらに向けてそう言い残すと、バルバナスは騎士たちを連れて屋敷の方へと去っていく。有無を言わさぬその背中を、残された者たちは黙って見送った。
龍付きとは、龍の託宣を受けた者たちを揶揄する言葉だ。主に、龍の存在を知り、それでも龍から託宣を受けなかった人間が使う類のものだった。
「なあ、エッカルト。バルバナス様って、いまだ龍に選ばれなかったこと根に持ってんのか? 弟に王位を取られて、託宣の存在を知らない貴族に無能扱いされちゃあ、まあ、無理もねえ話か」
ユリウスの小声に、エッカルトが滅多なことを言うなという視線を向ける。
「オレなんざ、選ばれなくて万々歳だぜ? まったく、王族のプライドってのも厄介なシロモンだな」
託宣を受けた者たちを見ていると、どうにもこうにも窮屈そうだ。あのジークフリートでさえそう見えるのだから、それを望む奴らの気が知れない。
「それ以上おっしゃいますと、今度こそ大奥様にご報告せざるを得ませんな」
エッカルトの言葉に、ユリウスはぴゅっと背筋を正した。
「分かった、もう何も言わん。頼むからディートリンデにだけは黙っててくれ」
情けない震え声を出すユリウスに、エッカルトは小さくため息をついた。
0
※小説家になろうグループムーンライトノベルズにて【R18】ふたつ名の令嬢と龍の託宣 不定期投稿中☆
第6章 嘘つきな騎士と破られた託宣 スタートました♡
※アルファポリス版は第1部令嬢編として一度完結としましたが、ムーンでは第6章を継続投稿中です。
こちらはR18ですので、18歳以上(高校生不可)の方のみ閲覧できます。
第6章 嘘つきな騎士と破られた託宣 スタートました♡
※アルファポリス版は第1部令嬢編として一度完結としましたが、ムーンでは第6章を継続投稿中です。
こちらはR18ですので、18歳以上(高校生不可)の方のみ閲覧できます。
お気に入りに追加
272
あなたにおすすめの小説

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます
鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────
私、この子と生きていきますっ!!
シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。
幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。
時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。
やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。
それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。
けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────
生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。
※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる