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第1章 ふたつ名の令嬢と龍の託宣
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「今日は随分と楽しそうだな」
一同が振り向くと、カイを連れたハインリヒが驚いたような顔で立っていた。急な王太子の登場に、団員たちがあわてて騎士の礼を取る。
「いや、楽にしていい。いつも通り訓練を続けてくれ……」
そこまで言ったハインリヒが、はっとしたように青ざめた。その視線の先にはルカがいる。
(あちゃー。知り合いの子供ってリーゼロッテ嬢の弟だったのか)
カイはまずいといった表情を隠そうともせずに片手で目を覆った。
「王子殿下。こちらはダーミッシュ伯爵のご子息です」
キュプカーがそう紹介すると、ルカは緊張した面持ちで貴族の礼を取った。
「王太子殿下、お初にお目にかかります。ダーミッシュ伯爵長男、ルカ・ダーミッシュでございます」
ルカは跪いて貴族として最大の礼を取った。
「ハインリヒ様」
ルカを前に呆然としているハインリヒの背中を、周りに気づかれないようにカイはつついた。
「あ、ああ。顔を上げてくれ。君は……、リーゼロッテ嬢の弟だね」
ルカは立ちあがり、不敬にならない程度に顔を上げてハインリヒに笑顔を返した。
「はい。王子殿下には、義姉がたいへんお世話になったと伺っております。両親ともども、王子殿下と王家の方々に心より感謝いたしております」
(うわ、マジでヘマやらかしたかも)
ルカの笑顔は誰かを彷彿とさせた。今日ルカが来るのを知っていたのなら、カイはこの場にハインリヒを連れてくることはしなかっただろう。
リーゼロッテとアンネマリーは従妹同士だ。必然的にルカとアンネマリーも従弟同士ということになる。しかも養子のリーゼロッテと違い、ふたりは紛れもなく血縁関係にあるのだ。
亜麻色の髪に水色の瞳のルカは、アンネマリーと姉弟と言った方が納得いくほど、ふたりの容姿は似通っていた。
カイはちらりとハインリヒの様子を伺った。青白い顔のまま、ルカに対して生返事をしている。
この場をどう切り抜けようか逡巡していたカイは、ジークヴァルトと目が合った。ジークヴァルトもハインリヒの様子がおかしいことに気づいているようだ。
「ルカ、もうじき迎えが来る頃だろう」
ジークヴァルトが自然な感じで手を引いて、ルカをハインリヒから引き離した。そのまま入口で待っていたルカの侍従の元へと歩を進める。
ルカはキュプカー達を振り返って、「本日は貴重な体験をありがとうございました」と優雅な騎士の礼をした。
ジークヴァルトに促されると、ルカは少し残念そうにそれに従った。最後に鍛錬場に向かって一礼すると、ルカはジークヴァルトと共に去っていった。
(借りをひとつ作っちゃったな)
ジークヴァルトもあえてルカが来るとは言わずに、知り合いの子供と濁したのだろう。しかし、自分にだけは言っといてほしかったなどと思ってしまう。
(何にせよオレの失態だ。あーあ、イジドーラ様に怒られるかなぁ)
やってきたばかりだったが、適当な理由をつけて、浮かない顔のハインリヒをカイは早々に回収することにした。
一同が振り向くと、カイを連れたハインリヒが驚いたような顔で立っていた。急な王太子の登場に、団員たちがあわてて騎士の礼を取る。
「いや、楽にしていい。いつも通り訓練を続けてくれ……」
そこまで言ったハインリヒが、はっとしたように青ざめた。その視線の先にはルカがいる。
(あちゃー。知り合いの子供ってリーゼロッテ嬢の弟だったのか)
カイはまずいといった表情を隠そうともせずに片手で目を覆った。
「王子殿下。こちらはダーミッシュ伯爵のご子息です」
キュプカーがそう紹介すると、ルカは緊張した面持ちで貴族の礼を取った。
「王太子殿下、お初にお目にかかります。ダーミッシュ伯爵長男、ルカ・ダーミッシュでございます」
ルカは跪いて貴族として最大の礼を取った。
「ハインリヒ様」
ルカを前に呆然としているハインリヒの背中を、周りに気づかれないようにカイはつついた。
「あ、ああ。顔を上げてくれ。君は……、リーゼロッテ嬢の弟だね」
ルカは立ちあがり、不敬にならない程度に顔を上げてハインリヒに笑顔を返した。
「はい。王子殿下には、義姉がたいへんお世話になったと伺っております。両親ともども、王子殿下と王家の方々に心より感謝いたしております」
(うわ、マジでヘマやらかしたかも)
ルカの笑顔は誰かを彷彿とさせた。今日ルカが来るのを知っていたのなら、カイはこの場にハインリヒを連れてくることはしなかっただろう。
リーゼロッテとアンネマリーは従妹同士だ。必然的にルカとアンネマリーも従弟同士ということになる。しかも養子のリーゼロッテと違い、ふたりは紛れもなく血縁関係にあるのだ。
亜麻色の髪に水色の瞳のルカは、アンネマリーと姉弟と言った方が納得いくほど、ふたりの容姿は似通っていた。
カイはちらりとハインリヒの様子を伺った。青白い顔のまま、ルカに対して生返事をしている。
この場をどう切り抜けようか逡巡していたカイは、ジークヴァルトと目が合った。ジークヴァルトもハインリヒの様子がおかしいことに気づいているようだ。
「ルカ、もうじき迎えが来る頃だろう」
ジークヴァルトが自然な感じで手を引いて、ルカをハインリヒから引き離した。そのまま入口で待っていたルカの侍従の元へと歩を進める。
ルカはキュプカー達を振り返って、「本日は貴重な体験をありがとうございました」と優雅な騎士の礼をした。
ジークヴァルトに促されると、ルカは少し残念そうにそれに従った。最後に鍛錬場に向かって一礼すると、ルカはジークヴァルトと共に去っていった。
(借りをひとつ作っちゃったな)
ジークヴァルトもあえてルカが来るとは言わずに、知り合いの子供と濁したのだろう。しかし、自分にだけは言っといてほしかったなどと思ってしまう。
(何にせよオレの失態だ。あーあ、イジドーラ様に怒られるかなぁ)
やってきたばかりだったが、適当な理由をつけて、浮かない顔のハインリヒをカイは早々に回収することにした。
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※小説家になろうグループムーンライトノベルズにて【R18】ふたつ名の令嬢と龍の託宣 不定期投稿中☆
第6章 嘘つきな騎士と破られた託宣 スタートました♡
※アルファポリス版は第1部令嬢編として一度完結としましたが、ムーンでは第6章を継続投稿中です。
こちらはR18ですので、18歳以上(高校生不可)の方のみ閲覧できます。
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