ふたつ名の令嬢と龍の託宣【第二部公爵夫人編開始】

古堂 素央

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第1章 ふたつ名の令嬢と龍の託宣

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     ◇
「おお、わたしの可愛いリーゼ」

 屋敷に着くと、義父母のフーゴとクリスタが出迎えてくれた。使用人たち一同も、屋敷中の者たちがエントランスホールで並んで待っていた。リーゼロッテがいなかった一カ月は、屋敷中が暗く沈んでいるかのようだったのだ。

「お義父様、お義母様、ただいま帰りました」

 優雅に礼をとったリーゼロッテに、一同は顔をほころばせた。
 フーゴとクリスタに交互に抱擁され、リーゼロッテは後ろに控えるアデライーデをフーゴに紹介した。

「お義父様、こちらの方はアデライーデ様、ジークヴァルト様のお姉様でいらっしゃいますわ」
「お初にお目にかかります、フーゴ・ダーミッシュでございます。勅命の件は連絡を受けております。任とはいえ、道中、娘の護衛をしてくださり感謝いたします」

 伯爵がアデライーデに礼を取ると、アデライーデはやんわりとそれを制した。

「しばらくは娘の警護を続けていただけるとか。こちらに滞在中、ご要望がありましたら何なりと申し付けください」
「わたしは王の勅命でリーゼロッテ嬢の護衛を任された身。そのような気遣いは不要に願います」

 騎士の礼を取ると、「勅命の件で伯爵と少し話がしたいのですが、よろしいでしょうか?」とアデライーデは続けた。

「もちろんです。ダニエル、アデライーデ様をわたしの執務室にお通ししてくれ」
 ダニエルは腰を折って礼を取り、アデライーデを案内していった。

「リーゼロッテ、お前をずっと抱きしめていたいけど、わたしは少しアデライーデ様とお話ししてくるよ」

 フーゴは残念そうに言ったが、リーゼロッテはそんな義父の様子を気に留めるでもなく、少し興奮気味に言った。

「お義父さま、わたくし確認したいことがございますの。ジークヴァルト様にいただいた贈り物を見て参ります」

 それだけ言うと、エラを連れて自室の方に去って行ってしまった。

「あらあら。子供が親の手を離れるのは早いものね」
 その背を微笑ましそうに見送って、クリスタは残されたフーゴを見てくすくすと笑った。

 エラがいたとはいえ、一カ月もの長い間、知り合いもいない見知らぬ場所で過ごしたのだ。どんなに心細かっただろうと、ふたりは心配していたのだが。大事な娘は家族以上に大切なものを見つけてきたらしい。

「わたしの可愛いリーゼが……」

 情けない声を出す夫にクリスタは「はいはい」と返すと、アデライーデを待たせてはいけないからと、その背を強引に執務室へと向けたのだった。
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※小説家になろうグループムーンライトノベルズにて【R18】ふたつ名の令嬢と龍の託宣 不定期投稿中☆
 第6章 嘘つきな騎士と破られた託宣 スタートました♡
※アルファポリス版は第1部令嬢編として一度完結としましたが、ムーンでは第6章を継続投稿中です。
 こちらはR18ですので、18歳以上(高校生不可)の方のみ閲覧できます。
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