ふたつ名の令嬢と龍の託宣【第二部公爵夫人編開始】

古堂 素央

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第1章 ふたつ名の令嬢と龍の託宣

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「きゃ」
 小さな悲鳴を上げた次の瞬間には、リーゼロッテはジークヴァルトの膝の上にのせられていた。抗議の声を上げる間もなく、一度手渡されたペンダントを取り上げられ、ジークヴァルトはそれをサイドテーブルへとコトリと置いた。

「あの、ジークヴァルト様」
 言葉を紡ごうとした瞬間、背中を支えられ、そのままジークヴァルトが胸元に唇を寄せる。
「流れを見る。じっとしてろ」

 なぜこの男はいつもこうも唐突なのか。リーゼロッテはもうどうしたらいいのかわからなくなって、ジークヴァルトの騎士服を握りしめた。

 龍のあざが熱い。リーゼロッテはめまいを覚えた。体の内側で何かが渦巻き呼吸が荒くなる。
(な、に? いつもとちがう)
 体の内側から壊されそうな恐怖を覚える。

「ヴぁ、るとさま……」
 その声も口から紡げたのかどうかもあやしかった。

 気づけば、リーゼロッテは守り石を握らされ、ジークヴァルトの腕の中でぐったりと抱き寄せられていた。

「この石のせいなのか? いや、しかし今のは……」
 リーゼロッテを凝視したまま、ジークヴァルトがつぶやいた。

「おい、ダーミッシュ嬢。この石を手にしてから、何がどう変わった? 些細なことでもいい。すべて答えろ」
 両頬を片手でつかまれ、リーゼロッテはむにと不細工顔にされて上向かされた。

『女の子にそれはないんじゃない?』

 両手を頭の後ろで組み、あぐらをかいて浮かんだままのジークハルトがのんきに言った。言葉とは裏腹に、リーゼロッテを楽しげにのぞき込んでいる。

 言われていることはわかっていても、リーゼロッテは答えることができず、ぎゅっと目をつむった。どくどくと心臓の鼓動がうるさく響いている。

「今のは何だ?」
 何かを感じたハインリヒが、執務室から戻ってきていた。しかし、顔色が悪いリーゼロッテに気づくと、ハインリヒはジークヴァルトに今日はもう休ませるように言った。

 ジークヴァルトに抱えられ客間に戻ったリーゼロッテは、そのまま深い眠りに落ちていく。
 その日は一度も目覚めないまま夜が更けていった。




【次回予告】
 はーい、わたしリーゼロッテ。  一日お休みをもらったわたしは、訪ねてきたアンネマリーと久々に再会。おしゃべりを楽しみつつも、ヴァルト様の気になる噂を聞いて!? ヴァルト様、夜更かしは美容の大敵ですよ!
 次回、第11話「逢瀬の秘め事」 あわれなわたしに、チート、プリーズ!!
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※小説家になろうグループムーンライトノベルズにて【R18】ふたつ名の令嬢と龍の託宣 不定期投稿中☆
 第6章 嘘つきな騎士と破られた託宣 スタートました♡
※アルファポリス版は第1部令嬢編として一度完結としましたが、ムーンでは第6章を継続投稿中です。
 こちらはR18ですので、18歳以上(高校生不可)の方のみ閲覧できます。
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