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第1章 ふたつ名の令嬢と龍の託宣
第10話 囚われの妖精
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あの鬼のように恐ろしいフーゲンベルク副隊長が、毎日令嬢を連れて歩いている。
そんな噂が、王城の護衛騎士団近衛第一隊の中に駆け巡っていた。その令嬢は妖精のように可愛らしく、とても恥ずかしがりで怖がりらしい。
そんな繊細な令嬢が、あの副隊長の隣にいるなど到底想像できなかったが、目撃者はみな一様に興奮状態だったため、噂が噂を呼び、騎士たちはいつになく騒然となっていた。
王太子殿下の執務室を中心に、王城内の一部では、侍女・女官から下働きの使用人まで女性という女性を徹底的に排除していたため、王太子付きの近衛第一隊の周りには、女っ気がまったくと言っていいほどなかった。
毎朝、ジークヴァルトがリーゼロッテを連れていく時間になると、騎士たちは意味もなく廊下をうろついていた。最近では、第一隊以外の騎士たちも、その令嬢を一目見ようと押し寄せる始末である。
「あの、ジークヴァルト様」
その日も例のごとく、ジークヴァルトに抱えられながらリーゼロッテは王城の廊下を運ばれていた。リーゼロッテがお茶会の日以来王城に留まってから、半月ほど経過していた。
「なんだ?」
「わたくし、自分で歩きますので、降ろしていただけませんか?」
異形の者にも、多少は慣れてきた。いや、いまだに怖いは怖いのだが、何となく距離のとり方はわかってきた。
近づかない、目を合わせない、大げさに反応しないなど、そういうことに気をつけていれば、ジークヴァルトの守り石のおかげか、小鬼たちはリーゼロッテに近づいてこなかった。
「却下だ。お前の足だと辿りつくのに何時間かかると思う」
「そんなにはかかりませんわ! それに、毎日送り迎えの手間をおかけするのは申し訳ないですから、これからは、ひとりで行き来いたします」
「却下だ」
足を緩めることなく、ジークヴァルトは進んでいく。
「なぜですか? わたくしの足が遅いなら、わたくしが早めに部屋を出ればすむことです。道はもう覚えましたから、ひとりでも大丈夫ですわ」
「却下だ。諦めろ」
こんな会話は、実は今日が初めてではない。リーゼロッテは幾度となく訴えてはいるが、ジークヴァルトが頑として首を縦に振らなかった。
通り過ぎざま、また騎士たちとすれ違う。ふたりに道を開け騎士の礼を示しているが、その視線は好奇心に満ちたものだ。リーゼロッテにとっては異形の存在よりも、こちらの方がよっぽどいたたまれなかった。
リーゼロッテはもうすぐ十五歳を迎えようとしていた。十五歳と言えば、ブラオエルシュタインで成人とみなされる年だ。早い者で結婚する者も出始める。
そんな年にもなって、毎日城の中を、子供抱きにされ、行き帰りを輸送されるのだ。そう、輸送だ。これは完全に荷物の運搬業務だ。
(うう、恥ずかしすぎる。恥ずかしぬってこういうことを言うんだわ)
そんな噂が、王城の護衛騎士団近衛第一隊の中に駆け巡っていた。その令嬢は妖精のように可愛らしく、とても恥ずかしがりで怖がりらしい。
そんな繊細な令嬢が、あの副隊長の隣にいるなど到底想像できなかったが、目撃者はみな一様に興奮状態だったため、噂が噂を呼び、騎士たちはいつになく騒然となっていた。
王太子殿下の執務室を中心に、王城内の一部では、侍女・女官から下働きの使用人まで女性という女性を徹底的に排除していたため、王太子付きの近衛第一隊の周りには、女っ気がまったくと言っていいほどなかった。
毎朝、ジークヴァルトがリーゼロッテを連れていく時間になると、騎士たちは意味もなく廊下をうろついていた。最近では、第一隊以外の騎士たちも、その令嬢を一目見ようと押し寄せる始末である。
「あの、ジークヴァルト様」
その日も例のごとく、ジークヴァルトに抱えられながらリーゼロッテは王城の廊下を運ばれていた。リーゼロッテがお茶会の日以来王城に留まってから、半月ほど経過していた。
「なんだ?」
「わたくし、自分で歩きますので、降ろしていただけませんか?」
異形の者にも、多少は慣れてきた。いや、いまだに怖いは怖いのだが、何となく距離のとり方はわかってきた。
近づかない、目を合わせない、大げさに反応しないなど、そういうことに気をつけていれば、ジークヴァルトの守り石のおかげか、小鬼たちはリーゼロッテに近づいてこなかった。
「却下だ。お前の足だと辿りつくのに何時間かかると思う」
「そんなにはかかりませんわ! それに、毎日送り迎えの手間をおかけするのは申し訳ないですから、これからは、ひとりで行き来いたします」
「却下だ」
足を緩めることなく、ジークヴァルトは進んでいく。
「なぜですか? わたくしの足が遅いなら、わたくしが早めに部屋を出ればすむことです。道はもう覚えましたから、ひとりでも大丈夫ですわ」
「却下だ。諦めろ」
こんな会話は、実は今日が初めてではない。リーゼロッテは幾度となく訴えてはいるが、ジークヴァルトが頑として首を縦に振らなかった。
通り過ぎざま、また騎士たちとすれ違う。ふたりに道を開け騎士の礼を示しているが、その視線は好奇心に満ちたものだ。リーゼロッテにとっては異形の存在よりも、こちらの方がよっぽどいたたまれなかった。
リーゼロッテはもうすぐ十五歳を迎えようとしていた。十五歳と言えば、ブラオエルシュタインで成人とみなされる年だ。早い者で結婚する者も出始める。
そんな年にもなって、毎日城の中を、子供抱きにされ、行き帰りを輸送されるのだ。そう、輸送だ。これは完全に荷物の運搬業務だ。
(うう、恥ずかしすぎる。恥ずかしぬってこういうことを言うんだわ)
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※小説家になろうグループムーンライトノベルズにて【R18】ふたつ名の令嬢と龍の託宣 不定期投稿中☆
第6章 嘘つきな騎士と破られた託宣 スタートました♡
※アルファポリス版は第1部令嬢編として一度完結としましたが、ムーンでは第6章を継続投稿中です。
こちらはR18ですので、18歳以上(高校生不可)の方のみ閲覧できます。
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