【R18】恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。

古堂 素央

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第8話 乙女の癒し

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「本っ当にすまなかった」

 じかに座った床で深々と頭を下げ続けるロランのつむじを、アメリはベッドの上から見下ろしていた。
 この状態になってしばらく経つが、一向にロランは顔を上げようとしない。

 顔面を蹴られたロランは背中から転がり落ちて、頭を打ちつけた拍子に正気を取り戻した。
 半裸のアメリと目が合って、次の瞬間目にも止まらぬ速さでアメリの体をシーツでぐるぐる巻きにした。
 次いで床でひれ伏しかと思うと、この土下座タイムが始まった。

「わたし相手にそこまで謝らなくても……」

 勇者と言えば国民憧れの英雄だ。
 それに比べたらアメリなど、虫にも等しい存在だろう。

「勇者は寝ぼけてたんですよね? 好きでやったわけじゃないのはわたしも分かってますから」
「いや、君のその姿を見れば、俺が何をしたのかは容易に想像できる。寝ぼけていたからと言って許されていいことじゃない」

 下におでこがくっついているロランは、まるで床に話しかけている勢いだ。
 包帯が巻かれた背中にも血がにじんでいるのが見える。ベッドを降りたアメリはロランの横で膝をついた。

「とにかく顔を上げてください。怪我してるんですよね? 傷がいっぱいあるってヴィルジールさんに聞きました」
「ヴィルの奴、余計なことを……」

 苦々しい声とともにロランはようやく顔を上げた。
 眉間が赤く腫れあがっている。初めは床の跡かと思ったが、アメリの蹴りのせいであるのは間違いない。

「なんだ? 傷が……」
「ご、ごめんなさいっ、わたしが思いっきり蹴ったから」
「いや、違う。体の傷が治っているんだ」

 言いながらロランは腹の包帯を解いていく。血がこびりついていた部分の皮膚は、傷があったとは思えないほどつるんとした肌だった。
 腕を上げたり背中を覗き込んだりして、ロランは体のあちこちを確かめるように見回した。

「やはり傷がすべて消えている。何をしても絶対に治らなかったのに」
「一体どうして?」
「乙女の力だ……」
「オトメノチカラ?」
「ああ、聖剣の乙女、君が俺の傷を癒したんだ」

 じっと見つめられ、アメリはぽかんと口を開けた。

「え? でも、だって、わたし何もしてな……」

 言いかけてヴィルジールの言葉が頭をよぎる。

 ――アメリが性的快楽を得れば、ロランの怪我は綺麗さっぱり治るから

「へ……え、わ、わたし……」

 先ほどロランにされたことを思い出し、アメリの顔が真っ赤になった。
 つられるように頬を染め、ロランはすっと目を逸らした。

「まぁ、そういうわけだ」
「そういうわけって、そんな……!」

 顔どころか今やアメリは全身真っ赤っかだ。
 勇者ロランの傷が癒えたということは、乙女アメリが気持ちよくなった証明でもある。こんな恥ずかしいことがあって許されるのか。

「も、もしかして、勇者が傷を負うたびにこれをしないとダメなんですか!?」
「できる限り怪我をしないよう心掛ける」
「そんな……」

 呆然と胸元のシーツを握りしめる。

「すまないがそれで納得してくれ」

 不本意そうに言ったロランは、小さく苛立ち混じりのため息をついた。

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