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第8話 乙女の癒し
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「本っ当にすまなかった」
直に座った床で深々と頭を下げ続けるロランのつむじを、アメリはベッドの上から見下ろしていた。
この状態になってしばらく経つが、一向にロランは顔を上げようとしない。
顔面を蹴られたロランは背中から転がり落ちて、頭を打ちつけた拍子に正気を取り戻した。
半裸のアメリと目が合って、次の瞬間目にも止まらぬ速さでアメリの体をシーツでぐるぐる巻きにした。
次いで床でひれ伏しかと思うと、この土下座タイムが始まった。
「わたし相手にそこまで謝らなくても……」
勇者と言えば国民憧れの英雄だ。
それに比べたらアメリなど、虫にも等しい存在だろう。
「勇者は寝ぼけてたんですよね? 好きでやったわけじゃないのはわたしも分かってますから」
「いや、君のその姿を見れば、俺が何をしたのかは容易に想像できる。寝ぼけていたからと言って許されていいことじゃない」
下におでこがくっついているロランは、まるで床に話しかけている勢いだ。
包帯が巻かれた背中にも血がにじんでいるのが見える。ベッドを降りたアメリはロランの横で膝をついた。
「とにかく顔を上げてください。怪我してるんですよね? 傷がいっぱいあるってヴィルジールさんに聞きました」
「ヴィルの奴、余計なことを……」
苦々しい声とともにロランはようやく顔を上げた。
眉間が赤く腫れあがっている。初めは床の跡かと思ったが、アメリの蹴りのせいであるのは間違いない。
「なんだ? 傷が……」
「ご、ごめんなさいっ、わたしが思いっきり蹴ったから」
「いや、違う。体の傷が治っているんだ」
言いながらロランは腹の包帯を解いていく。血がこびりついていた部分の皮膚は、傷があったとは思えないほどつるんとした肌だった。
腕を上げたり背中を覗き込んだりして、ロランは体のあちこちを確かめるように見回した。
「やはり傷がすべて消えている。何をしても絶対に治らなかったのに」
「一体どうして?」
「乙女の力だ……」
「オトメノチカラ?」
「ああ、聖剣の乙女、君が俺の傷を癒したんだ」
じっと見つめられ、アメリはぽかんと口を開けた。
「え? でも、だって、わたし何もしてな……」
言いかけてヴィルジールの言葉が頭をよぎる。
――アメリが性的快楽を得れば、ロランの怪我は綺麗さっぱり治るから
「へ……え、わ、わたし……」
先ほどロランにされたことを思い出し、アメリの顔が真っ赤になった。
つられるように頬を染め、ロランはすっと目を逸らした。
「まぁ、そういうわけだ」
「そういうわけって、そんな……!」
顔どころか今やアメリは全身真っ赤っかだ。
勇者の傷が癒えたということは、乙女が気持ちよくなった証明でもある。こんな恥ずかしいことがあって許されるのか。
「も、もしかして、勇者が傷を負うたびにこれをしないとダメなんですか!?」
「できる限り怪我をしないよう心掛ける」
「そんな……」
呆然と胸元のシーツを握りしめる。
「すまないがそれで納得してくれ」
不本意そうに言ったロランは、小さく苛立ち混じりのため息をついた。
直に座った床で深々と頭を下げ続けるロランのつむじを、アメリはベッドの上から見下ろしていた。
この状態になってしばらく経つが、一向にロランは顔を上げようとしない。
顔面を蹴られたロランは背中から転がり落ちて、頭を打ちつけた拍子に正気を取り戻した。
半裸のアメリと目が合って、次の瞬間目にも止まらぬ速さでアメリの体をシーツでぐるぐる巻きにした。
次いで床でひれ伏しかと思うと、この土下座タイムが始まった。
「わたし相手にそこまで謝らなくても……」
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「いや、君のその姿を見れば、俺が何をしたのかは容易に想像できる。寝ぼけていたからと言って許されていいことじゃない」
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包帯が巻かれた背中にも血がにじんでいるのが見える。ベッドを降りたアメリはロランの横で膝をついた。
「とにかく顔を上げてください。怪我してるんですよね? 傷がいっぱいあるってヴィルジールさんに聞きました」
「ヴィルの奴、余計なことを……」
苦々しい声とともにロランはようやく顔を上げた。
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「なんだ? 傷が……」
「ご、ごめんなさいっ、わたしが思いっきり蹴ったから」
「いや、違う。体の傷が治っているんだ」
言いながらロランは腹の包帯を解いていく。血がこびりついていた部分の皮膚は、傷があったとは思えないほどつるんとした肌だった。
腕を上げたり背中を覗き込んだりして、ロランは体のあちこちを確かめるように見回した。
「やはり傷がすべて消えている。何をしても絶対に治らなかったのに」
「一体どうして?」
「乙女の力だ……」
「オトメノチカラ?」
「ああ、聖剣の乙女、君が俺の傷を癒したんだ」
じっと見つめられ、アメリはぽかんと口を開けた。
「え? でも、だって、わたし何もしてな……」
言いかけてヴィルジールの言葉が頭をよぎる。
――アメリが性的快楽を得れば、ロランの怪我は綺麗さっぱり治るから
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「できる限り怪我をしないよう心掛ける」
「そんな……」
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不本意そうに言ったロランは、小さく苛立ち混じりのため息をついた。
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