【R18】恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。

古堂 素央

文字の大きさ
6 / 65

第6話 勇者の部屋

しおりを挟む
 薄暗い部屋でロランは眠っていた。
 シャツがはだけた腹部には包帯が巻かれ、ところどころ血がにじみ出している。

「あの、勇者寝てるみたいだし、勝手に入ったりしちゃまずいんじゃ?」
「大丈夫大丈夫」

 戸惑うアメリを、ヴィルジールは半ば無理やり奥へと引き入れた。
 かと思うと、自分はすぐに部屋を出ていこうとする。

「じゃあアメリ、ロランのことしっかり癒してあげて」
「え? 癒すってどうやって?」

 慌ててヴィルジールを引き留めた。
 アメリは医者でもなければ、サラのように治癒魔法も使えない。

「官能だよ」
「カン……ノウ?」

 うまく言葉を変換できなくて、アメリは頭を傾ける。

「だから官能だってば。なぁに、簡単だよ。アメリが女性として性的快楽を得れば、ロランの怪我は綺麗さっぱり治るから」
「はぁ!?」
「そんな訳で、頑張って気持ちよくなって」

 そう言い残すと、その場からパッとヴィルジールの姿がかき消えた。

「頑張って気持ちよくなる……?」

 呆然と残された部屋の中、ロランのうめき声が小さく漏れた。

「勇者……?」

 恐る恐る覗き込むと、ロランは苦しげに目を閉じていた。
 額に浮かぶ玉のような汗にその辛さが伺える。
 ヴィルジールの言うことなど、まるで意味が分からなかった。
 何しろアメリに男性経験はない。恋人すらできたことはなくて、何をどうしたらいいのかさっぱりだ。
 とりあえず看病といえばと思い、枕元にあった布で汗を拭ってみた。

「熱い……」

 その熱さに驚いて、自分の冷えた手をおでこに添える。
 アメリのてのひらが気持ちよかったのか、ロランの表情がいく分か和らいだ。
 端正な顔を覗きこむ。そんな場合ではないというのに、アメリは思わずロランに見惚れてしまった。

「ほりが深くて鼻筋も通ってて……まつ毛もすごい長い……」

 勇者でなくとも女たちが群がるのがよく分かる。
 恋をしたことがないアメリでも、見ているだけでドキドキしてきてしまった。

 身じろいだロランに驚いて、乗せた手を思わず離す。それを制するように、ロランの大きな手がつかみ取ってきた。
 握ったままのアメリの掌を自分の頬に当て、ロランはひとつ息をついた。続けてすぅと穏やかな寝息が聞こえてくる。

「ちょっと楽になったみたい……?」

 冷たい手で楽になったのだろうか。ベッドのふちに腰掛け、アメリは両手でロランの頬を包み込んだ。
 しばらくそのままでいたが、ロランはずっと眠ったままだ。

 苦しそうだった表情が和らいでいるように思えても、体はまだまだ熱かった。
 傷が癒える様子もなくて、これ以上何をすればいいのかとアメリは途方に暮れてしまった。

「やっぱりサラさんを呼んでこよう」

 このまま自分がこうしていても、ロランが回復するようには思えない。
 頬から手を離して立ちあがろうとした瞬間、手首をつかまれアメリは強く引き寄せられた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

処理中です...