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第1話 聖剣の乙女
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「君が聖剣の乙女か……」
「なんと言うか、こんなんですみません」
真面目で知られるイケメン勇者は、面倒くさそうな表情を隠そうともせず重いため息をついた。
アメリ自身、望んで選ばれたわけではない。だが冴えないソバカス女を差し出された勇者様の困惑も、分からないでもなかった。
「いや君の年齢がどうとかそういうことではない」
造作のことには触れずにうまく濁したつもりだろうか。
しかし乙女というにはとうのたちすぎたアメリには、十分すぎるくらいの威力があった。
「そんなことより本当にいいのか?」
「いいのかと言うと?」
「だから聖剣の乙女になるということだ」
勇者――ロランの苛立ちに、アメリは何を今さらと首をかしげた。
「いいも何も、わたしに選択権はないんでしょう? だったら考えるだけ無駄なんじゃ」
「それはそうだが……」
「はいはい、初めましての挨拶はそのくらいにして、さっそく聖剣を確かめさせてもらえるかな?」
脇にいた魔導士が急かすように言った。勇者とはまた違ったタイプだが、この魔導士もかなりのイケメンだ。
それどころか魔王討伐に選ばれたメンバーは、誰も彼も美男美女ばかりだ。そんなに中に自分が混ざったことが、アメリは未だに信じられないでいる。
「もし間違いだったりしたら、わたしは村に追い返されるんですか?」
「それは絶対にないよ。この僕、大魔導士ヴィルジール様の魔術探査に間違いなんてあり得ないさ」
「だったらわざわざ今確かめる必要はないんじゃないか?」
「駄目だよ。どうやって聖剣が現れるか、ちゃんと確認しとかないと」
戦闘中にあたふたはしたくない。
ヴィルジールにそう言われ、ロランは渋々といった感じでアメリに向き直った。
「本当にいいんだな?」
大きな手を肩に乗せられて顔を覗き込まれる。
その近さに驚きつつも、アメリは素直に頷いた。
「自分が本当に聖剣の乙女なのか、わたしもちゃんと確かめたいです」
「分かった」
難しい表情のまま、ロランはぐっと顔を近づけてくる。
「目をつぶってくれないか?」
「目を? どうして?」
「どうしてって……やりづらいだろう」
ロランは怖いくらい真剣な顔をしている。何をするつもりか知らないが、言われた通りにまぶたを閉じた。
聖剣を取り出すには、何か儀式が必要らしい。
薄目を開けるとロランの顔がすぐそこにまで迫っていた。今にも触れそうな唇に、アメリはとっさに頭を大きくのけぞらせた。
「なぜ逃げるんだ?」
「なぜって近すぎます」
「近づかないとできないだろう」
「できないって、何を?」
「聖剣を呼び出す儀式に決まっているじゃないか」
にらみ合ったまま沈黙が訪れる。
根負けしたのはロランの方だった。
「もしかしてやり方を聞いていないのか?」
「何も」
その途端、ロランはヴィルジールに怒りの顔を向けた。
「話が違うぞ」
「だって怖気づかれても困るじゃない」
不穏なやり取りを前にして、アメリの胸に不信感が湧き上がる。
「ああ、大丈夫大丈夫、痛いとかは絶対にないからさ。あるとすればちょっと恥ずかしいくらい?」
「恥ずかしい?」
目が合うとロランに視線を逸らされた。
頬が赤く見えるのはアメリの気のせいだろうか。
「慣れればなんてことないって。ほら、ロラン。最初だからやさしくしてやって。やさしく、やさし~く」
「うるさい、ヴィルは黙ってろ」
「あの、一体何をするんですか?」
「接吻だ」
「せっ!?」
いきなり唇を塞がれる。
頭突きのような口づけはやさしさには程遠かった。
「あああ……!」
厚い胸板を押し返そうとしていた両手が熱い。
いきなり生じた灼熱に、アメリはロランに縋りついた。
「手を」
両手をロランに引き剥がされて、アメリの掌が眩く光り輝いた。
「やだ熱い!」
「そのまま耐えてくれ」
「いたぁいっ、やぁむりぃいっ」
せり出す熱源が手の中でどんどん膨れ上がっていく。
光を強く握り込んだかと思うと、ロランは一気にそれを引き抜いた。
「やぁああっ」
内側から何かを引っ張り出される感覚に身を震わせる。
アメリの掌から現れたのは、ひと振りの立派な剣だった。
「……これが俺の勇者の聖剣」
掲げる長剣を前に、ロランが放心したようにつぶやいた。
「痛くないって言ったくせにぃ」
涙目で睨みあげるとロランは困った顔になる。
その横でヴィルジールが、口笛を吹きながら顔を逸らした。
「なんと言うか、こんなんですみません」
真面目で知られるイケメン勇者は、面倒くさそうな表情を隠そうともせず重いため息をついた。
アメリ自身、望んで選ばれたわけではない。だが冴えないソバカス女を差し出された勇者様の困惑も、分からないでもなかった。
「いや君の年齢がどうとかそういうことではない」
造作のことには触れずにうまく濁したつもりだろうか。
しかし乙女というにはとうのたちすぎたアメリには、十分すぎるくらいの威力があった。
「そんなことより本当にいいのか?」
「いいのかと言うと?」
「だから聖剣の乙女になるということだ」
勇者――ロランの苛立ちに、アメリは何を今さらと首をかしげた。
「いいも何も、わたしに選択権はないんでしょう? だったら考えるだけ無駄なんじゃ」
「それはそうだが……」
「はいはい、初めましての挨拶はそのくらいにして、さっそく聖剣を確かめさせてもらえるかな?」
脇にいた魔導士が急かすように言った。勇者とはまた違ったタイプだが、この魔導士もかなりのイケメンだ。
それどころか魔王討伐に選ばれたメンバーは、誰も彼も美男美女ばかりだ。そんなに中に自分が混ざったことが、アメリは未だに信じられないでいる。
「もし間違いだったりしたら、わたしは村に追い返されるんですか?」
「それは絶対にないよ。この僕、大魔導士ヴィルジール様の魔術探査に間違いなんてあり得ないさ」
「だったらわざわざ今確かめる必要はないんじゃないか?」
「駄目だよ。どうやって聖剣が現れるか、ちゃんと確認しとかないと」
戦闘中にあたふたはしたくない。
ヴィルジールにそう言われ、ロランは渋々といった感じでアメリに向き直った。
「本当にいいんだな?」
大きな手を肩に乗せられて顔を覗き込まれる。
その近さに驚きつつも、アメリは素直に頷いた。
「自分が本当に聖剣の乙女なのか、わたしもちゃんと確かめたいです」
「分かった」
難しい表情のまま、ロランはぐっと顔を近づけてくる。
「目をつぶってくれないか?」
「目を? どうして?」
「どうしてって……やりづらいだろう」
ロランは怖いくらい真剣な顔をしている。何をするつもりか知らないが、言われた通りにまぶたを閉じた。
聖剣を取り出すには、何か儀式が必要らしい。
薄目を開けるとロランの顔がすぐそこにまで迫っていた。今にも触れそうな唇に、アメリはとっさに頭を大きくのけぞらせた。
「なぜ逃げるんだ?」
「なぜって近すぎます」
「近づかないとできないだろう」
「できないって、何を?」
「聖剣を呼び出す儀式に決まっているじゃないか」
にらみ合ったまま沈黙が訪れる。
根負けしたのはロランの方だった。
「もしかしてやり方を聞いていないのか?」
「何も」
その途端、ロランはヴィルジールに怒りの顔を向けた。
「話が違うぞ」
「だって怖気づかれても困るじゃない」
不穏なやり取りを前にして、アメリの胸に不信感が湧き上がる。
「ああ、大丈夫大丈夫、痛いとかは絶対にないからさ。あるとすればちょっと恥ずかしいくらい?」
「恥ずかしい?」
目が合うとロランに視線を逸らされた。
頬が赤く見えるのはアメリの気のせいだろうか。
「慣れればなんてことないって。ほら、ロラン。最初だからやさしくしてやって。やさしく、やさし~く」
「うるさい、ヴィルは黙ってろ」
「あの、一体何をするんですか?」
「接吻だ」
「せっ!?」
いきなり唇を塞がれる。
頭突きのような口づけはやさしさには程遠かった。
「あああ……!」
厚い胸板を押し返そうとしていた両手が熱い。
いきなり生じた灼熱に、アメリはロランに縋りついた。
「手を」
両手をロランに引き剥がされて、アメリの掌が眩く光り輝いた。
「やだ熱い!」
「そのまま耐えてくれ」
「いたぁいっ、やぁむりぃいっ」
せり出す熱源が手の中でどんどん膨れ上がっていく。
光を強く握り込んだかと思うと、ロランは一気にそれを引き抜いた。
「やぁああっ」
内側から何かを引っ張り出される感覚に身を震わせる。
アメリの掌から現れたのは、ひと振りの立派な剣だった。
「……これが俺の勇者の聖剣」
掲げる長剣を前に、ロランが放心したようにつぶやいた。
「痛くないって言ったくせにぃ」
涙目で睨みあげるとロランは困った顔になる。
その横でヴィルジールが、口笛を吹きながら顔を逸らした。
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