【R18】恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。

古堂 素央

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第1話 聖剣の乙女

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「君が聖剣の乙女か……」
「なんと言うか、こんなんですみません」

 真面目で知られるイケメン勇者は、面倒くさそうな表情を隠そうともせず重いため息をついた。
 アメリ自身、望んで選ばれたわけではない。だが冴えないソバカス女を差し出された勇者様の困惑も、分からないでもなかった。

「いや君の年齢がどうとかそういうことではない」

 造作のことには触れずにうまく濁したつもりだろうか。
 しかし乙女というにはとうのたちすぎたアメリには、十分すぎるくらいの威力があった。

「そんなことより本当にいいのか?」
「いいのかと言うと?」
「だから聖剣の乙女になるということだ」

 勇者――ロランの苛立ちに、アメリは何を今さらと首をかしげた。

「いいも何も、わたしに選択権はないんでしょう? だったら考えるだけ無駄なんじゃ」
「それはそうだが……」
「はいはい、初めましての挨拶はそのくらいにして、さっそく聖剣を確かめさせてもらえるかな?」

 脇にいた魔導士が急かすように言った。勇者とはまた違ったタイプだが、この魔導士もかなりのイケメンだ。
 それどころか魔王討伐に選ばれたメンバーは、誰も彼も美男美女ばかりだ。そんなに中に自分が混ざったことが、アメリは未だに信じられないでいる。

「もし間違いだったりしたら、わたしは村に追い返されるんですか?」
「それは絶対にないよ。この僕、大魔導士ヴィルジール様の魔術探査に間違いなんてあり得ないさ」
「だったらわざわざ今確かめる必要はないんじゃないか?」
「駄目だよ。どうやって聖剣が現れるか、ちゃんと確認しとかないと」

 戦闘中にあたふたはしたくない。
 ヴィルジールにそう言われ、ロランは渋々といった感じでアメリに向き直った。

「本当にいいんだな?」

 大きな手を肩に乗せられて顔を覗き込まれる。
 その近さに驚きつつも、アメリは素直に頷いた。

「自分が本当に聖剣の乙女なのか、わたしもちゃんと確かめたいです」
「分かった」

 難しい表情のまま、ロランはぐっと顔を近づけてくる。

「目をつぶってくれないか?」
「目を? どうして?」
「どうしてって……やりづらいだろう」

 ロランは怖いくらい真剣な顔をしている。何をするつもりか知らないが、言われた通りにまぶたを閉じた。
 聖剣を取り出すには、何か儀式が必要らしい。
 薄目を開けるとロランの顔がすぐそこにまで迫っていた。今にも触れそうな唇に、アメリはとっさに頭を大きくのけぞらせた。

「なぜ逃げるんだ?」
「なぜって近すぎます」
「近づかないとできないだろう」
「できないって、何を?」
「聖剣を呼び出す儀式に決まっているじゃないか」

 にらみ合ったまま沈黙が訪れる。
 根負けしたのはロランの方だった。

「もしかしてやり方を聞いていないのか?」
「何も」

 その途端、ロランはヴィルジールに怒りの顔を向けた。

「話が違うぞ」
「だって怖気おじけづかれても困るじゃない」

 不穏なやり取りを前にして、アメリの胸に不信感が湧き上がる。

「ああ、大丈夫大丈夫、痛いとかは絶対にないからさ。あるとすればちょっと恥ずかしいくらい?」
「恥ずかしい?」

 目が合うとロランに視線を逸らされた。
 頬が赤く見えるのはアメリの気のせいだろうか。

「慣れればなんてことないって。ほら、ロラン。最初だからやさしくしてやって。やさしく、やさし~く」
「うるさい、ヴィルは黙ってろ」
「あの、一体何をするんですか?」
「接吻だ」
「せっ!?」

 いきなり唇を塞がれる。
 頭突きのような口づけはやさしさには程遠かった。

「あああ……!」

 厚い胸板を押し返そうとしていた両手が熱い。
 いきなり生じた灼熱に、アメリはロランに縋りついた。

「手を」

 両手をロランに引き剥がされて、アメリの掌が眩く光り輝いた。

「やだ熱い!」
「そのまま耐えてくれ」
「いたぁいっ、やぁむりぃいっ」

 せり出す熱源が手の中でどんどん膨れ上がっていく。
 光を強く握り込んだかと思うと、ロランは一気にそれを引き抜いた。

「やぁああっ」

 内側から何かを引っ張り出される感覚に身を震わせる。
 アメリの掌から現れたのは、ひと振りの立派な剣だった。

「……これが俺の勇者の聖剣」

 掲げる長剣を前に、ロランが放心したようにつぶやいた。

「痛くないって言ったくせにぃ」

 涙目で睨みあげるとロランは困った顔になる。
 その横でヴィルジールが、口笛を吹きながら顔を逸らした。
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