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第七章 いざ、最終決戦
あなたが落とした王子はどちらですか?
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それからというもの、山田とロレンツォがかわるがわるにやって来るように。
バッティングしないのは助かってるけど、登校時、お昼休みに、移動教室のときまで現れるんだもの。
放課後取り巻き令嬢たちとお茶してても来るもんだから、みんなが委縮しちゃってさ。仕方ないから最近はゆいなだけを連れ歩いてる。
そのせいかユイナ・ハセガー男爵令嬢が、ハナコの弟ケンタ・モッリと婚約寸前って噂になってるみたい。
ゆいなにしてみればシメシメだよね。ま、わたしもゆいなを魔除け代わりにしてるから、最近はいがみ合うこともなく上手くやってるって感じ。
「あ、シュン王子だ。王子ぃこっちこっちぃ」
迎えの馬車の待ち時間に教室でゆいなとおしゃべりしていたら、案の定山田がやってきた。
ってかゆいな、当たり前みたく招き入れるんじゃないっての。
「ハナコ、今日もユイナと一緒なのだな」
「ほほほ、話をしてみるとなかなか良い子ですのよ」
攻略対象とふたりきりになるとロクないことないからね。
ゆいなは空気読まずにぐいぐい会話に入って来るから、それでずいぶん助けられてたり。
「お邪魔だったら、ユイナどっかに行ってますけど?」
「いや、邪魔するのはわたしのほうだ。よければ仲間に入れてくれ」
こっちに椅子を引き寄せることもなく、山田はわたしから離れた席に座った。
うんうん、距離感、適切でいい感じ。やればちゃんとできるじゃないの。
「冬休みの間、ハナコは何か予定はあるのか?」
「いえ、特には。わたくし寒いのは苦手ですから、家でのんびり過ごすつもりですわ」
「ユイナはケンタ様とデートいっぱいするんです。今らかどこ行くかふたりで計画立てて」
「あら、たのしそう。でもユイナ、自分のことわたくしと言わなくてはね?」
「はぁい、ハナコお姉様。わたくし気をつけまぁす」
いいぞ、ゆいな。
その調子で話題をどんどん自分中心に持ってって。
「シュン王子は何して過ごすんですかぁ?」
「年末にイタリーノ国から大使が来る予定でな。その件でスケジュールはほぼ埋まってしまっている」
王子ともなると休みも公務でつぶれて大変そうだね。
冬休みの間は顔合わさずに済みそうだから、わたし的にはラッキーだけど。
「そういったわけで、ハナコを城に招くのはしばらく無理そうだ」
「お気遣いなさらずですわ。きっとビスキュイも分かってくれます」
お城に行く目的は、あくまでビスキュイ目当てってことにしておかないと。
っていうか、行くと約束した覚えはひとつもないんデスが?
「ユイナもその犬に会ってみたいです」
「とっても可愛いのよ? きっとあなたも好きになるわ」
ビスキュイの件って、本来ならヒロインイベントだったもんね。
山田に呼ばれたとき、ごり押ししてゆいなも一緒に連れてっちゃおうっと。
そのあとも取りとめのないおしゃべりが続いた。
会話するのはもっぱらゆいなとわたし。その間、山田はずっと黙って聞いていた。
そうこうしているうちに、教室に校内放送鳩が飛んできて。
またリュシアン様かな。今日は何のお呼び出し?
『ぴんっぽんっぱんっぽんっ。シュン・ヤーマダさんに連絡シマスっ。至急、生徒会室にお戻りくだサイっ。繰り返しマス、至急、生徒会室に……』
同じ言葉をさえずりながら、鳩は山田の周りをグルグル飛び回った。戻ってこない山田にしびれを切らして、ダンジュウロウあたりが呼び出しで使ったのかも。
「時間だな」
静かに言って山田はすっと立ち上がった。
「ハナコ、気をつけて帰ってくれ」
「はい。お気遣いありがとうございます」
わたしがうなずいたのを確認すると、山田はすぐに転移魔法で姿を消した。
よしっ、なに事もなくやり過ごせたぞ!
ゆいなってば、健太なんかよりもずっと役に立つじゃない。
「前から思ってましたけど、シュン王子、ハナコ様の前だとすんごくやさしい顔しますよね~」
「なに言ってるの? シュン様はいつもああでしょう?」
瓶底眼鏡だし、やさしい顔もへったくれもないっつうの。
「そんなことないですよぉ? 見ててホントにハナコ様が好きなんだなって、いつも思いますもん」
は? やめてよ、そんなこと言うの。
「ユイナがハナコ様だったらシュン王子とゴールインするけどなぁ」
「だったら今から頑張りなさいよ。この世界のヒロインはあなたなんだから」
「イヤですよぅ。ユイナはもうケンタ様だけですもん♡」
はいはい、それがずっと続くといいけどね。
疑わしい視線を向けると、ゆいなはあざと可愛く唇を尖らせた。
「心配しなくっても裏切ったりしませんってば。ケンタ様はこの世界でユイナのコト、いちばん分かってくれる大事なひとですなんですよ?」
ループ地獄にハマって、ようやくそこから抜け出そうなんだもんね。
ゆいなも少しは学習したってことか。
「ハナコ様も真実の愛に出逢えるように、ユイナ全力で応援しますね♡」
んなコトあんたの口から言われると、無性に腹が立つんですけどっ。
「ユイナ、お待たせ。あ、姉上も」
お姉様をついでのように扱うんじゃありませんっ。
最近の健太はゆいな最優先で、姉ちゃんちょっぴりさびしいよ。
「じゃあ、帰ろうか。ユイナ、今日はうちに泊ってくだろ?」
モッリ公爵家でふたりはすっかり公認に仲になってたり。両親もあっという間に陥落しちゃってさ。
ゆいなのヤツ取り入るのが上手いんだから。そう言うトコロはホント感心するよ。
「あ、姉上、ちょっと遠回りしよう。昇降口でロレンツォ王子を見かけたから」
「ありがとう、ケンタ」
「いや、ユイナまで目をつけられたら困るしさ」
ぐぬっ、腹立つ理由だけど、ロレンツォにもてあそばれた令嬢ってかなり多いって話だからね。
口開かなきゃゆいなも可憐な令嬢に見えるし、健太の心配も仕方ないか。
何事もなく馬車に乗り込んで、ロレンツォに会わずに済んでよかった。
山田は待てのできるおりこう犬になったけど、ロレンツォの方は相変わらずでさ。
まるで手の付けられない野犬みたいな感じ。こっちの言うことはまるで聞かないし、自分勝手で好き放題にしてくるから対応にホトホト困ってる。
「はぁ、卒業までこれが続くのね……」
「姉上、ずいぶんと大きなため息だね。そこまで深刻にならなくても」
「深刻にもなるわよ。下手に不敬を働いて罰せられても困るし……」
「でもさ、冷静に考えてすごいことじゃない? 王子ふたりに言い寄られるなんてさ」
「うふっ、ハナコ様、やっぱりもてもて♡」
ったく、うれしそうに言うんじゃないわよ。
こっちは迷惑してるってのに。
「わたくしの理想の殿方は別にいるの。何もシュン様とロレンツォ様のどちらかを選ばなくっても許されるでしょう?」
「それって、なんかアレだよね。泉に落とした斧の話」
あなたが落とした斧は金の斧? それとも銀の斧? って女神様か誰かに聞かれるヤツ?
で、男は落としたのは錆びた鉄の斧ですって正直に答えるんだよね。そしたら金銀の斧ももらえちゃうって内容。
いや、正直に答えて山田とロレンツォ両方もらっても困るし。
ってか、わたしは泉に王子を落とした覚えはひとつもないっ。
ったく、ふたりとも他人事だと思って言いたい放題だよ。
あと少しで冬休みだし、もうひと踏ん張り、頑張って耐えるんだ華子……!
バッティングしないのは助かってるけど、登校時、お昼休みに、移動教室のときまで現れるんだもの。
放課後取り巻き令嬢たちとお茶してても来るもんだから、みんなが委縮しちゃってさ。仕方ないから最近はゆいなだけを連れ歩いてる。
そのせいかユイナ・ハセガー男爵令嬢が、ハナコの弟ケンタ・モッリと婚約寸前って噂になってるみたい。
ゆいなにしてみればシメシメだよね。ま、わたしもゆいなを魔除け代わりにしてるから、最近はいがみ合うこともなく上手くやってるって感じ。
「あ、シュン王子だ。王子ぃこっちこっちぃ」
迎えの馬車の待ち時間に教室でゆいなとおしゃべりしていたら、案の定山田がやってきた。
ってかゆいな、当たり前みたく招き入れるんじゃないっての。
「ハナコ、今日もユイナと一緒なのだな」
「ほほほ、話をしてみるとなかなか良い子ですのよ」
攻略対象とふたりきりになるとロクないことないからね。
ゆいなは空気読まずにぐいぐい会話に入って来るから、それでずいぶん助けられてたり。
「お邪魔だったら、ユイナどっかに行ってますけど?」
「いや、邪魔するのはわたしのほうだ。よければ仲間に入れてくれ」
こっちに椅子を引き寄せることもなく、山田はわたしから離れた席に座った。
うんうん、距離感、適切でいい感じ。やればちゃんとできるじゃないの。
「冬休みの間、ハナコは何か予定はあるのか?」
「いえ、特には。わたくし寒いのは苦手ですから、家でのんびり過ごすつもりですわ」
「ユイナはケンタ様とデートいっぱいするんです。今らかどこ行くかふたりで計画立てて」
「あら、たのしそう。でもユイナ、自分のことわたくしと言わなくてはね?」
「はぁい、ハナコお姉様。わたくし気をつけまぁす」
いいぞ、ゆいな。
その調子で話題をどんどん自分中心に持ってって。
「シュン王子は何して過ごすんですかぁ?」
「年末にイタリーノ国から大使が来る予定でな。その件でスケジュールはほぼ埋まってしまっている」
王子ともなると休みも公務でつぶれて大変そうだね。
冬休みの間は顔合わさずに済みそうだから、わたし的にはラッキーだけど。
「そういったわけで、ハナコを城に招くのはしばらく無理そうだ」
「お気遣いなさらずですわ。きっとビスキュイも分かってくれます」
お城に行く目的は、あくまでビスキュイ目当てってことにしておかないと。
っていうか、行くと約束した覚えはひとつもないんデスが?
「ユイナもその犬に会ってみたいです」
「とっても可愛いのよ? きっとあなたも好きになるわ」
ビスキュイの件って、本来ならヒロインイベントだったもんね。
山田に呼ばれたとき、ごり押ししてゆいなも一緒に連れてっちゃおうっと。
そのあとも取りとめのないおしゃべりが続いた。
会話するのはもっぱらゆいなとわたし。その間、山田はずっと黙って聞いていた。
そうこうしているうちに、教室に校内放送鳩が飛んできて。
またリュシアン様かな。今日は何のお呼び出し?
『ぴんっぽんっぱんっぽんっ。シュン・ヤーマダさんに連絡シマスっ。至急、生徒会室にお戻りくだサイっ。繰り返しマス、至急、生徒会室に……』
同じ言葉をさえずりながら、鳩は山田の周りをグルグル飛び回った。戻ってこない山田にしびれを切らして、ダンジュウロウあたりが呼び出しで使ったのかも。
「時間だな」
静かに言って山田はすっと立ち上がった。
「ハナコ、気をつけて帰ってくれ」
「はい。お気遣いありがとうございます」
わたしがうなずいたのを確認すると、山田はすぐに転移魔法で姿を消した。
よしっ、なに事もなくやり過ごせたぞ!
ゆいなってば、健太なんかよりもずっと役に立つじゃない。
「前から思ってましたけど、シュン王子、ハナコ様の前だとすんごくやさしい顔しますよね~」
「なに言ってるの? シュン様はいつもああでしょう?」
瓶底眼鏡だし、やさしい顔もへったくれもないっつうの。
「そんなことないですよぉ? 見ててホントにハナコ様が好きなんだなって、いつも思いますもん」
は? やめてよ、そんなこと言うの。
「ユイナがハナコ様だったらシュン王子とゴールインするけどなぁ」
「だったら今から頑張りなさいよ。この世界のヒロインはあなたなんだから」
「イヤですよぅ。ユイナはもうケンタ様だけですもん♡」
はいはい、それがずっと続くといいけどね。
疑わしい視線を向けると、ゆいなはあざと可愛く唇を尖らせた。
「心配しなくっても裏切ったりしませんってば。ケンタ様はこの世界でユイナのコト、いちばん分かってくれる大事なひとですなんですよ?」
ループ地獄にハマって、ようやくそこから抜け出そうなんだもんね。
ゆいなも少しは学習したってことか。
「ハナコ様も真実の愛に出逢えるように、ユイナ全力で応援しますね♡」
んなコトあんたの口から言われると、無性に腹が立つんですけどっ。
「ユイナ、お待たせ。あ、姉上も」
お姉様をついでのように扱うんじゃありませんっ。
最近の健太はゆいな最優先で、姉ちゃんちょっぴりさびしいよ。
「じゃあ、帰ろうか。ユイナ、今日はうちに泊ってくだろ?」
モッリ公爵家でふたりはすっかり公認に仲になってたり。両親もあっという間に陥落しちゃってさ。
ゆいなのヤツ取り入るのが上手いんだから。そう言うトコロはホント感心するよ。
「あ、姉上、ちょっと遠回りしよう。昇降口でロレンツォ王子を見かけたから」
「ありがとう、ケンタ」
「いや、ユイナまで目をつけられたら困るしさ」
ぐぬっ、腹立つ理由だけど、ロレンツォにもてあそばれた令嬢ってかなり多いって話だからね。
口開かなきゃゆいなも可憐な令嬢に見えるし、健太の心配も仕方ないか。
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山田は待てのできるおりこう犬になったけど、ロレンツォの方は相変わらずでさ。
まるで手の付けられない野犬みたいな感じ。こっちの言うことはまるで聞かないし、自分勝手で好き放題にしてくるから対応にホトホト困ってる。
「はぁ、卒業までこれが続くのね……」
「姉上、ずいぶんと大きなため息だね。そこまで深刻にならなくても」
「深刻にもなるわよ。下手に不敬を働いて罰せられても困るし……」
「でもさ、冷静に考えてすごいことじゃない? 王子ふたりに言い寄られるなんてさ」
「うふっ、ハナコ様、やっぱりもてもて♡」
ったく、うれしそうに言うんじゃないわよ。
こっちは迷惑してるってのに。
「わたくしの理想の殿方は別にいるの。何もシュン様とロレンツォ様のどちらかを選ばなくっても許されるでしょう?」
「それって、なんかアレだよね。泉に落とした斧の話」
あなたが落とした斧は金の斧? それとも銀の斧? って女神様か誰かに聞かれるヤツ?
で、男は落としたのは錆びた鉄の斧ですって正直に答えるんだよね。そしたら金銀の斧ももらえちゃうって内容。
いや、正直に答えて山田とロレンツォ両方もらっても困るし。
ってか、わたしは泉に王子を落とした覚えはひとつもないっ。
ったく、ふたりとも他人事だと思って言いたい放題だよ。
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