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第七章 いざ、最終決戦
夢で見た天使
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「ジュリエッタ、今日は少しつきあってくれるかしら?」
「……もちろんですわ、ハナコ様」
うをっ、ニッコリしてるくせにちっとも目が笑ってねぇ。
山田とのことを報告したかったから声をかけたんだけど。
未希ってば最近忙しいらしくって、誘ってもパジャマパーティーに来てくれないんだよね。なんでも冬休みに貴腐人の祭典があって、薄い本を作るのに忙しいんだとか。
全員が仮面をつけて参加する会員制の仮面マーケット。通称カメケでは知り合いに会っても、お互いそ知らぬふりをするって話。身分差を越えた熱きたぎりが、その空間にはあるらしい。
それはさておき、放課後になって学園の貸し出しサロンに移動して。
備え付けの茶器でハーブティーを用意しながら、未希が遠慮がちに声をかけてきた。
「ハナコ様、申し訳ないのですが今日はあまり時間がありませんの。手短にお願いできますでしょうか?」
「どうしたの、未希? もう誰も見てないよ?」
なんでまだジュリエッタ仕様?
このサロンは鍵もかかるから、貴族モードはオフにしても大丈夫なのに。
「ですが胸のリボンが……」
「ああ、これね」
すぐに気づくなんて、さすがは未希だな。実は今つけてる制服のリボン、あの日リュシアン様から返されたGPS付きのやつなんだ。
ただ、以前はカメラ機能もあったけど、今回は位置情報だけにしてあるって説明されて。
最近、関係者を装って学園内に紛れ込む人間が増えてるらしくって、身分の高いわたしは念のためつけておいてほしいって言われてさ。
いつだか馬車降りてヨボじいを助けたことあったじゃない? そのときに健太に捕まった男子生徒も、取り調べで部外者だって判明したって話。
そんな状況でわたしが図書館とか独りで出歩くもんだから、山田が気が気じゃなくて落ち着かないらしい。だから「せめてどこにいるかだけは把握させてくれんかのぅ」って泣き落としされちゃった。
山田に位置情報が筒抜けになるけど、学園内だけならまぁいいかって今こうして身に着けているってワケ。
理事長に呼ばれた件からそのことまでを、未希にかいつまんで説明した。初めは面倒くさそうに聞いてた未希も、最後の方は興味津々って感じになって。
「なるほどね。華子が納得したなら、ま、それでいいんじゃない?」
「うん、卒業してからも変につきまとわれるよりはいいかと思ってさ」
「にしてもシュン王子の想いがそこまでとはね。女は愛されてなんぼって言うし、そのまま受け入れたっていいとわたしは思うケド」
「また他人事だと思って。未希だって好みじゃない男なんて無理なクセに」
「わたしの条件はオタ活を自由にやらせてくれるかどうかだけだから。華子みたいに外見にこだわってる方が意味不明」
うっ、そんなふうに鼻で笑わないでよ。
「譲れない条件なんて人それぞれじゃん。わたしはイケメンじゃないと絶対にヤなの!」
「あーはいはい、ノーイケメン・ノーライフね」
「そうよ、分かってるじゃない。理想は中性的なさわやか系なんだよね。あーあ、夢で見た天使がこの世界にもいたらいいのになぁ……」
「夢で見た天使?」
「うん、日本でゆいなともみ合って、階段を転げ落ちたあとなんか夢見てさ。そこにすっごく好みのイケメン天使が出てきたの」
わたしの名前を呼びながら、ボロボロと涙をこぼしてたっけ。
今思い出しても胸がときめいちゃうし。
「ずっと見ていたいって思うくらい綺麗な顔してたなぁ。まぁ、その直後に目を覚ましたら、この世界で王子の山田にひざ枕されてたんだけど」
今思えばあのときこそが、ゲームの令嬢ハナコとわたしが入れ替わった瞬間だったんだよね。
はぁ、ここまで来るのにホントいろいろあったって感じ。
「とにかく卒業まであともう少しだし。ギロチンエンドとも、山田とも、禍根を残さないようにきっちり片をつけるつもり」
「ギロチンの世界線はもう大丈夫でしょ。王子の件は、ま、頑張って」
もう、未希ってばほんと薄情者っ!
ゆいなとイチャコラしっぱなしの健太よりかは、何万倍もましだけどさ。
「ごめんだけど、わたし冬カメ終わるまで忙しんだわ。それまでは何かあったら健太にでも相談しといて」
「了解。年に二回の祭典だもんね。目一杯たのしんできてよ」
「ありがと。んじゃあ、もう帰るわ」
「忙しいのに時間取らせてごめんね。話聞いてくれてありがとう」
「……ねぇ、華子」
出て行こうとした未希がふいに動きを止めて。
「なに?」
「ん、いやさ。健太とあの子のこと……あのまま受け入れちゃって、華子は本当にあれでよかったの?」
健太とゆいなのこと?
そりゃわたしだって、ゆいなにされたことも健太の裏切りも、初めは許せないって思ってたけど。
「昔のことアレコレ言ったって、もうどうにもならないじゃん。それよか今は、山田をかわす方に集中したいってなってるし」
「そ。華子がいいなら別にいいんだけどさ。わたしがもし華子だったら、どんな手使ってもふたりを地の果てまで追い詰めてやるけどね」
うっわ、未希ならマジで空恐ろしい逆転ざまぁをやってのけそうっ。
健太もゆいなも、寛大なわたしに感謝してって感じだよ。
「ではハナコ様、お先に失礼させていただきますわ」
「ええジュリエッタ、気をつけてね」
清楚な令嬢モードに戻った未希を見送って。
さて、わたしも帰りますか。
そう思ってサロンを一歩出ようとしたら。
「ハナコ!」
「しゅ、シュン様!?」
ふぉっ、びっくりしたっ。
っていうか、見計らったように転移魔法で現れてくんなっつうの!
「……もちろんですわ、ハナコ様」
うをっ、ニッコリしてるくせにちっとも目が笑ってねぇ。
山田とのことを報告したかったから声をかけたんだけど。
未希ってば最近忙しいらしくって、誘ってもパジャマパーティーに来てくれないんだよね。なんでも冬休みに貴腐人の祭典があって、薄い本を作るのに忙しいんだとか。
全員が仮面をつけて参加する会員制の仮面マーケット。通称カメケでは知り合いに会っても、お互いそ知らぬふりをするって話。身分差を越えた熱きたぎりが、その空間にはあるらしい。
それはさておき、放課後になって学園の貸し出しサロンに移動して。
備え付けの茶器でハーブティーを用意しながら、未希が遠慮がちに声をかけてきた。
「ハナコ様、申し訳ないのですが今日はあまり時間がありませんの。手短にお願いできますでしょうか?」
「どうしたの、未希? もう誰も見てないよ?」
なんでまだジュリエッタ仕様?
このサロンは鍵もかかるから、貴族モードはオフにしても大丈夫なのに。
「ですが胸のリボンが……」
「ああ、これね」
すぐに気づくなんて、さすがは未希だな。実は今つけてる制服のリボン、あの日リュシアン様から返されたGPS付きのやつなんだ。
ただ、以前はカメラ機能もあったけど、今回は位置情報だけにしてあるって説明されて。
最近、関係者を装って学園内に紛れ込む人間が増えてるらしくって、身分の高いわたしは念のためつけておいてほしいって言われてさ。
いつだか馬車降りてヨボじいを助けたことあったじゃない? そのときに健太に捕まった男子生徒も、取り調べで部外者だって判明したって話。
そんな状況でわたしが図書館とか独りで出歩くもんだから、山田が気が気じゃなくて落ち着かないらしい。だから「せめてどこにいるかだけは把握させてくれんかのぅ」って泣き落としされちゃった。
山田に位置情報が筒抜けになるけど、学園内だけならまぁいいかって今こうして身に着けているってワケ。
理事長に呼ばれた件からそのことまでを、未希にかいつまんで説明した。初めは面倒くさそうに聞いてた未希も、最後の方は興味津々って感じになって。
「なるほどね。華子が納得したなら、ま、それでいいんじゃない?」
「うん、卒業してからも変につきまとわれるよりはいいかと思ってさ」
「にしてもシュン王子の想いがそこまでとはね。女は愛されてなんぼって言うし、そのまま受け入れたっていいとわたしは思うケド」
「また他人事だと思って。未希だって好みじゃない男なんて無理なクセに」
「わたしの条件はオタ活を自由にやらせてくれるかどうかだけだから。華子みたいに外見にこだわってる方が意味不明」
うっ、そんなふうに鼻で笑わないでよ。
「譲れない条件なんて人それぞれじゃん。わたしはイケメンじゃないと絶対にヤなの!」
「あーはいはい、ノーイケメン・ノーライフね」
「そうよ、分かってるじゃない。理想は中性的なさわやか系なんだよね。あーあ、夢で見た天使がこの世界にもいたらいいのになぁ……」
「夢で見た天使?」
「うん、日本でゆいなともみ合って、階段を転げ落ちたあとなんか夢見てさ。そこにすっごく好みのイケメン天使が出てきたの」
わたしの名前を呼びながら、ボロボロと涙をこぼしてたっけ。
今思い出しても胸がときめいちゃうし。
「ずっと見ていたいって思うくらい綺麗な顔してたなぁ。まぁ、その直後に目を覚ましたら、この世界で王子の山田にひざ枕されてたんだけど」
今思えばあのときこそが、ゲームの令嬢ハナコとわたしが入れ替わった瞬間だったんだよね。
はぁ、ここまで来るのにホントいろいろあったって感じ。
「とにかく卒業まであともう少しだし。ギロチンエンドとも、山田とも、禍根を残さないようにきっちり片をつけるつもり」
「ギロチンの世界線はもう大丈夫でしょ。王子の件は、ま、頑張って」
もう、未希ってばほんと薄情者っ!
ゆいなとイチャコラしっぱなしの健太よりかは、何万倍もましだけどさ。
「ごめんだけど、わたし冬カメ終わるまで忙しんだわ。それまでは何かあったら健太にでも相談しといて」
「了解。年に二回の祭典だもんね。目一杯たのしんできてよ」
「ありがと。んじゃあ、もう帰るわ」
「忙しいのに時間取らせてごめんね。話聞いてくれてありがとう」
「……ねぇ、華子」
出て行こうとした未希がふいに動きを止めて。
「なに?」
「ん、いやさ。健太とあの子のこと……あのまま受け入れちゃって、華子は本当にあれでよかったの?」
健太とゆいなのこと?
そりゃわたしだって、ゆいなにされたことも健太の裏切りも、初めは許せないって思ってたけど。
「昔のことアレコレ言ったって、もうどうにもならないじゃん。それよか今は、山田をかわす方に集中したいってなってるし」
「そ。華子がいいなら別にいいんだけどさ。わたしがもし華子だったら、どんな手使ってもふたりを地の果てまで追い詰めてやるけどね」
うっわ、未希ならマジで空恐ろしい逆転ざまぁをやってのけそうっ。
健太もゆいなも、寛大なわたしに感謝してって感じだよ。
「ではハナコ様、お先に失礼させていただきますわ」
「ええジュリエッタ、気をつけてね」
清楚な令嬢モードに戻った未希を見送って。
さて、わたしも帰りますか。
そう思ってサロンを一歩出ようとしたら。
「ハナコ!」
「しゅ、シュン様!?」
ふぉっ、びっくりしたっ。
っていうか、見計らったように転移魔法で現れてくんなっつうの!
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