【完結】断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~

古堂 素央

文字の大きさ
上 下
44 / 78
第六章 初恋は時空を超えて

ポンコツ王子

しおりを挟む
「……っていうことがあってね」
「へぇ、王子がねぇ。ま、なんにせよ、試験合格オメデト」

 未希ちゃん、ココロのこもらないお言葉アリガトウ。
 ギロチンエンドの可能性が無くなってきて、最近あんま親身に話を聞いてくれないんですけど。

 いいわよ。今夜は久々のパジャマパーティーだから、思いっきり愚痴吐きまくったる。

 大きなベッドの上で、トレーに乗せたお菓子をつまむ。眠れなくなるといけないから、飲み物はハーブティーを用意して。

「にしてもさ、山田のヤツあきらめ悪すぎない? 男らしくないって言うか優柔不断っていうか。王子なんだから、キッパリすっぱり切り替えろって感じ」
「華子、あんた知らないの? シュン王子ってかなりの切れ者だし冷徹で有名よ?」
「は? よそ見して壁にぶつかるような男が?」

 呆れたように言うと、目の前にいきなり手をつないだ健太と長谷川が現れた。
 ふたり分の重みでベッドが揺れる。こぼれそうなカップはとっさに未希が魔法で浮かせてくれた。

「うわ、びっくりしたっ。あんたたち、来るなとは言わないからせめて扉から入ってきてよ」
「華子先輩、ゆいなまだ自宅謹慎中なんですよ? 出かけてるのバレたら怒られちゃうじゃないですかぁ」
「そうだよ、姉ちゃん。ゆいながまたつかまったりしたら可哀そうだろ?」

 健太はすっかりゆいなにメロメロで。お前誰だよってくらいの変貌へんぼうぶり。
 転移魔法使って、毎日互いの部屋を行き来してるみたい。

「ゆいな、そのうち俺の婚約者として、大腕を振って玄関から来れるようにしてあげるから」
「ありがとう、けんたん。わたし早く公爵夫人になりたいな♡」

 ったく、長谷川を妹って呼ぶことになるなんて。
 健太、考え直すなら今のうちだよ?

「健太も長谷川も。いちゃつくなら余所よそでやって」
「もう、華子先輩ってば。もうすぐ家族になるんですよぉ? 長谷川とか他人行儀じゃなくって、ゆいなって呼んでくださいよぉ」
「はいはい、ゆいなね」

 ゆいなもゲームの記憶ある同盟に加わったから、気に食わないとか言ってらんないし。
 健太のためにも姉ちゃん黙って耐え忍ぶよ。

「そうだ、姉ちゃん。そろそろシュン王子許してあげてくんない?」
「は? なんでよ? イヤに決まってるでしょ」
「そんなこと言わないでさ。シュン王子、あれ以来まったく使いものにならなくって。生徒会の執務が滞って、俺たち本当に困ってるんだ」

 ああ、取り巻き令嬢たちもそんなこと言ってたっけ。
 でもわたしには関係ないし。

「頼むよ、姉ちゃん。マサト先輩は力仕事以外あてにならないし、俺とダンジュウロウ先輩でなんとか回してるって状態なんだ」
「そぉですよぉ。健太くんが忙しいと、ゆいなとの時間が短くなっちゃうじゃないですかぁ」
「それをわたしのせいにしないでよ。直接山田に物申せばいいじゃない」
「そんなことならとっくにやってるよ。まったく効果がないからこうして姉ちゃんに頼んでるんだろ」

 なにその言い方。まるでわたしが悪者みたいじゃんか。

「もう、毎日抜け殻みたいでさ。あんなポンコツな王子、今までなら絶対にあり得ないし」
「あり得ないだなんて大げさな。山田は普段からポンコツでしょ」
「なぁ、姉ちゃん。姉ちゃんの目にどう映ってるかは知らないけどさ、シュン王子って多分姉ちゃんが思ってるような人間じゃないよ」

 じゃあどういう人間だって言うのよ。
 山田なんか、わたしの手を握るか、匂い嗅ぐか、鼻血出すくらいしかできない変態じゃない。

「シュン王子は即決即断即行動ってタイプだよ。周りへの指示も的確だし、絶対に妥協しない。非のある人間には容赦ないところもあるし、尊敬できるけどそばで見ていて怖い人だって俺は思ってる」
「そうそう、ゆいなも一回シュン王子怒らせちゃってぇ。泣き落としもきかなくって本当に怖かったですよ?」
「あの山田が?」
「ほら言ったでしょ? 王子は切れ者で冷徹な人間だって」
「未希までそんな……」

 だからってみんなして責めるように言わなくったって。
 山田がどんな人間だろうとわたしには関係ないんだし。

「そういった意味では、シュン王子って山田先輩と同じなんだよな。日本での記憶がないだけで、もしかたらふたりは本質的には同じ人間なんじゃないのかな?」
「ああ、だから王子ってやたらと華子に執着するのかもね」
「山田先輩って姉ちゃんのこと溺愛してたからなぁ」
「ちょっとやめてよ、ふたりとも! 未希だって昔は昔、今は今って言ってたじゃない」
「あー、ハイハイ。そうだったね」

 なんか投げやりっ。

「ごめん、姉ちゃん。でも俺さ、別にシュン王子を好きになってくれって言ってるわけじゃないんだ。ただ前みたいにさ、普通に会話できる仲に戻って欲しいってだけなんだけど」
「健太の言いたいことは分かるけど……」

 山田って、一許すと十まで踏み込んでくるからヤなんだよね。
 一回でもいい顔すると、なし崩しにどうにかなっちゃいそうで。

「とりあえず考えてみてもいいけど。でも今すぐは無理だからね?」
「ありがとう、姉ちゃん。俺もなんだけど、ダンジュウロウ先輩が過労で死にそうでさ。前向きに検討お願いしますっ」

 ぱんって手を合わせて拝まれたって、こっちも困るんですけど。
 前みたいに普通に接しろって言われてもさ、どうやってきっかけ作ればいいんだか。

 ま、もうすぐ冬休みに入るし?
 適当に考えてるフリでもしとけば、ウヤムヤにできるっしょ。

 そんなふうに楽観的に思ってたら、きっかけは向こうの方からやってきて。

 はぁ、なんて言うか、運命を呪うしかない!?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...