断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~

古堂 素央

文字の大きさ
21 / 78
第四章 その王子、瓶底眼鏡につき

その宣戦布告、受けて立ちましょう

しおりを挟む
 「最悪……」

 わたしの祈りをあざ笑うかのように、ユイナは真っ先に山田のカップに紅茶を注いだ。
 王子ルート確定だ。
 それは確実にギロチンエンドに近づいたってことで。

「問題ありませんわ、ハナコ様」

 泣きそうなわたしとは対照的に、未希が余裕の表情でニヤっと笑った。

「これで今後の対策が立てやすくなったと言うもの。どうぞこのジュリエッタにお任せください。王子ルートはいちばん頭に入っていますから」

 そうだ、わたしはひとりじゃない。
 未希と、それから健太っていう、心強い味方がふたりもいるんだ。

「そうね。ここで諦めるなんて、わたくしらしくないものね」
「それでこそハナコ様ですわ」

 よし、俄然勇気が湧いてきた。
 落ち込むのは性に合わないし、これから本気出してデッドエンドを切り抜けてやる!

 景気づけに冷めかけの紅茶を飲みほした。
 結果が出た今、ユイナたちをのぞき見する理由はもうないし。

「あとはティータイムをたのしみましょう? ジュリエッタ」
「はい、ハナコ様。今日はとことんお付き合いいたしますわ」

 うなずいて、自分と未希の分、手ずからおかわりの紅茶を注いだ。いつもは誰かにやってもらう立場だけど、たまにはこんな日もあっていいんじゃない?

 心機一転の旅立ちに、改めて乾杯といきますか。
 意気揚々とカップの取っ手に指をかけ……ようとして。
 その寸前、後ろから伸びてきた手にソーサーごと紅茶をさらわれた。

 令嬢の所作も忘れてぽかんと大口を開けてしまった。
 だって斜め後ろに山田が立ってるんだもの。

 人間ってあんまりにも驚くと逆にリアクションが薄くなるんだね。未希ですら目を真ん丸にして何もできずに固まってるし。

 山田、イベント中だったよね? なんでわたしんとこに来てるんだ?

「あの……シュン様?」

 アナタが手にしてるその紅茶、わたしが飲んでるやつなんデスが。
 っていうか、匂いをかぐな、フチについた口紅の位置を確認するな、あまつさえそこに口をつけるな。
 そして何しれっと飲もうとしてるんだ、それはわたしのティーカップだと言っておろうがっ。

 頭ん中でまくし立てるも山田はくいっとカップを傾けた。
 瓶底眼鏡を湯気で曇らせながら、こくこくとノドが動いて完全にカップがひっくり返る。

「ハナコの入れた紅茶はまた格別だな」

 こいつ、本気で飲み切ったよ。満足げにカップ戻してくんな。ってか、よくそんな熱いもん一気飲みできたな。それに山田のために入れた覚えはこれっぽっちもないっ。

 言いたいことは山ほどあるのに、王子だからって言葉にできないのが口惜しすぎる。
 とにかく今すぐ追い返すなり、自分が退散するなりしないとマズいんじゃ。

「シュン王子ぃ? そっちで何やってるんですかぁ?」

 げ、言ってるそばからまためんどくさいのが。

「せっかくユイナが王子のために入れたのにぃ。一口も飲まずに席を立つなんて、もぉヒドイじゃないですかぁ」

 本人的には可愛らしくぷんぷんしてたんだろうな。
 でもわたしの姿を見た途端、ユイナのヤツ悪鬼のごとくの顔になってるし。

「……なんでハナコ様がここにいるのよ?」
「なんでと言われても。わたくしはティータイムをたのしんでいただけよ。ね、ジュリエッタ」
「ええ、今日はお天気もいいですし、外でお茶をするにはもってこいですわ」

 うふふと微笑み合った未希が、満面の笑みでわたしのカップに紅茶をつぎ足した。ってか、それ山田が口付けたヤツだから勘弁してっ。

「そんなこと言って、ユイナのこと見張ってたんでしょう?」
「わたくしが? あなたを? なぜ?」
「隠さなくったっていいんです。ユイナがシュン王子に気に入られてるから、ハナコ様、それがおもしろくないんでしょう?」

 ふふんと得意げになりながら、山田の腕にしがみつく。
 それを黙ってやらせてる山田も、ユイナに対して悪い気はしてないんだろうな。

「何を勘違いしているのか知らないけれど、あなたとシュン様はとてもお似合……」
「そろそろ時間だな。すまないハナコ。寂しいだろうがわたしはもう行かねばならない」

 遮るように山田が口をはさんできた。やんわりとユイナの手をほどくと、元いた方へ戻っていく。
 ってか、寂しいってなんだ? 初めっからお前はお呼びでないんじゃ。

「まぁいいわ。もう王子ルートに入ったんだし……」

 ぼそっと言うと、残されたユイナがふてぶてしくわたしを見下ろしてきた。

「のぞき見してた件は水に流してあげます。その代わりハナコ様、雪山イベントには絶対に参加してくださいね?」

 雪山イベント? っていうか今夏前よ?

 鼻息荒く去るユイナを見送ってから、解説プリーズ的に未希の顔を見た。

「ハナコ様、ここではアレですから、またパジャマパーティーの時にでも……」

 これは詳しく分かってるって顔だな。おお、心強い。やっぱ未希がいてくれてホントよかった。

(にしても、ユイナのヤツ、わざとこっちを怒らせようとしてるんじゃ……)

 まるで宣戦布告?
 安い挑発に乗るのもシャクだけど、今回はあえて受けて立とうじゃないの。

 ってなわけで、本日のお茶会はお開きってことで。
 山田が飲まなきゃもっと続きがたのしめたんだけどねっ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

あーもんど
恋愛
ある日、悪役令嬢に憑依してしまった主人公。 困惑するものの、わりとすんなり状況を受け入れ、『必ず幸せになる!』と決意。 さあ、第二の人生の幕開けよ!────と意気込むものの、人生そう上手くいかず…… ────えっ?悪役令嬢って、家族と不仲だったの? ────ヒロインに『悪役になりきれ』って言われたけど、どうすれば……? などと悩みながらも、真っ向から人と向き合い、自分なりの道を模索していく。 そんな主人公に惹かれたのか、皆だんだん優しくなっていき……? ついには、主人公を溺愛するように! ────これは孤独だった悪役令嬢が家族に、攻略対象者に、ヒロインに愛されまくるお語。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆

【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした

Rohdea
恋愛
公爵令嬢であるスフィアは、8歳の時に王子兄弟と会った事で前世を思い出した。 同時に、今、生きているこの世界は前世で読んだ小説の世界なのだと気付く。 さらに自分はヒーロー(第二王子)とヒロインが結ばれる為に、 婚約破棄されて国外追放となる運命の悪役令嬢だった…… とりあえず、王家と距離を置きヒーロー(第二王子)との婚約から逃げる事にしたスフィア。 それから数年後、そろそろ逃げるのに限界を迎えつつあったスフィアの前に現れたのは、 婚約者となるはずのヒーロー(第二王子)ではなく…… ※ 『記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました』 に出てくる主人公の友人の話です。 そちらを読んでいなくても問題ありません。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

モブ令嬢アレハンドリナの謀略

青杜六九
恋愛
転生モブ令嬢アレハンドリナは、王子セレドニオの婚約者ビビアナと、彼女をひそかに思う侯爵令息ルカのじれじれな恋を観察するのが日課だった。いつまで経っても決定打にかける二人に業を煮やし、セレドニオが男色家だと噂を流すべく、幼馴染の美少年イルデフォンソをけしかけたのだが……。 令嬢らしからぬ主人公が、乙女ゲームの傍観者を気取っていたところ、なぜか巻き込まれていくお話です。主人公の独白が主です。「悪役令嬢ビビアナの恋」と同じキャラクターが出てきますが、読んでいなくても全く問題はありません。あらすじはアレですが、BL要素はありません。 アレハンドリナ編のヤンデレの病み具合は弱めです。 イルデフォンソ編は腹黒です。病んでます。 2018.3.26 一旦完結しました。 2019.8.15 その後の話を執筆中ですが、別タイトルとするため、こちらは完結処理しました。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...