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第三章 イベントは危険な香り
ケンタよ、お前もか1
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「ほう? それで生徒会室に連れて行かれたと?」
「そうなの! わたしから飛び込んでったわけじゃないからね!」
昨日の顛末を話しつつ、ご機嫌取りの茶菓子をそっと未希の近くへ移動させた。
本日のお品書きは、朝早くから並ばないと買えない数量限定の超レアスイーツ。並んだのは家の使用人だけど。
「わたしが行く前に王子とユイナには会わなかったわけ? ん、これ旨い」
「山田は理事長に呼ばれてるとかであの場にはずっといなかったよ。ユイナも最後まで顔出さなかったし。あ、紅茶もっと飲む?」
そういやダンジュウロウもマサトもケンタも、三人ともユイナのことを気にかける様子もなかったな。生徒会として、みんなちゃんと仕事してるのか?
でも山田のいない生徒会にユイナが現れなかったってことは、さ。
「やっぱりユイナ、王子ルートに入ったってことなのかな……?」
「その線は濃厚かも。流れ的にはかえって良かったんじゃない? それならそれで対策が立てやすくなるし」
「攻略対象たちとフラグ立てまくった甲斐があったってこと? おお、やるじゃんわたし」
「調子乗んな、ボケ」
「はひ、モウシワケゴザァマセン……」
未希ってばお人形みたいにおとなしそうな顔してるけど、ブチ切れたらホント怖いんだ。
幼いころからの刷り込みで、条件反射で頭下げちゃうんだな、コレが。
「でもさ、華子の話聞いてると、ケンタの反応だけは不可解なのよね」
「と言うと?」
「あんたたち姉弟、そこまでべったりって感じじゃなかったでしょ? この前の通学途中のスリ未遂事件だって、ケンタって言うより保健医とのイベントだし」
「確かに。ケンタとはこれまで通り、普通に姉弟として接してるしなぁ。急に溺愛されるなんて奇妙な話だよね……」
「王子が見舞いに来たりして、シスコンに火がついたとか?」
あのケンタが?
ハナコの記憶をたどっても、そこまで姉弟愛が深いとも思えない。
「うーん、シスコンの気なんて、ケンタから今まで感じたことなかったけどなぁ」
「じゃあなんかほかに思い当たることはないの?」
「さっぱり」
なに未希ちゃん、その疑いのまなざしは。
「まぁいいわ。とにかく華子がこなしてるイベントって、ユイナが取りこぼしたやつっぽいから。ケンタは未消化イベント多いから特に注意して」
「りょーかい」
ってか、実の弟とフラグ立てたって、別にどうにもならないんじゃ?
「言っとくけどケンタルートのバッドエンドって、ヒロイン監禁ヤンデレコースだかんね?」
ふぉっ、姉ちゃんまで監禁されるんかっ。
「華子相手にそこまでなるかは不明だけど、ゲームの強制力がいつ発動するか分からないし」
「分かった、本気で気をつける。でもユイナのヤツ、もっとヒロインの仕事しろって感じなんだけど」
「選んだルートによっては、発生しないイベントもあるからね。そこはどうしようもないのかも」
だったらなんで起きないはずのイベントが、悪役令嬢ポジのわたしに起こるんだ?
マジ勘弁してほしい。
「それにしてもさ、未希はどうして昨日わたしが生徒会室にいるって分かったの?」
「ああ、それは目撃情報もあったんだけど……」
「あったんだけど?」
変な場所で言葉を切ったかと思うと、未希がぐっと顔を近づけてきた。
「ところで今、制服ってどこにある?」
「へ? 制服? 制服ならクローゼットにしまってあるけど……」
「そう」
なんでいきなりその質問? てか、なんで小声?
「やっぱ気づいてなかったんだ。制服の学年リボン、あるでしょ?」
学年リボンってのは制服の襟元にあるリボンのことだ。
真ん中にブローチが付いていて、その色が学年ごとに違ってる。だから学年リボンって呼ばれてるんだけど。
「それがどうかしたの?」
「アレについてるあんたのブローチ、魔力でGPSになってるから」
「は? GPS?」
「それ付けたの多分、シュン王子。ここだけの話ね」
「山田がっ!?」
どうりで隠れても見つけ出されるワケだ。山田のヤツ、今度問い詰めてシメてやるっ。
「ちなみに隠しカメラ機能もついてるから。さすがに盗聴はしてないみたいだけど」
ぬぁんですとっ!?
山田め、マジコロすっ。
「でもあのリボン、絶対に外しちゃだめだからね?」
「ええっなんでっ」
「今回だってあの機能拝借してあんたを追跡できたんだから。こんな便利なモノなくしたらモッタイナイでしょう?」
「そんなっ、プライバシーの侵害だよっ」
「着替えの時だけ気をつければいいだけの話でしょ? 休日は制服着てるわけでもないんだし」
そりゃそうかもしんないけど。
「これはもう決定事項。とにかくそのままつけておくこと!」
うわーん、未希の鬼軍曹っ。
「どのみちユイナの動向を見張らないと。それ次第で、こっちもどう動くか考えないとならないし。引き続き華子は攻略対象と接触禁止ってことで」
「アイアイサー!」
ってな感じで週末報告会議は無事に終了。
思いのほか未希のカミナリ、大きいのが落ちなくってほんとヨカッタ。
今回は激レアスイーツ様サマってことで。
なんてことをノンキに考えつつ、週明け学園に登校したんだけれど……。
「そうなの! わたしから飛び込んでったわけじゃないからね!」
昨日の顛末を話しつつ、ご機嫌取りの茶菓子をそっと未希の近くへ移動させた。
本日のお品書きは、朝早くから並ばないと買えない数量限定の超レアスイーツ。並んだのは家の使用人だけど。
「わたしが行く前に王子とユイナには会わなかったわけ? ん、これ旨い」
「山田は理事長に呼ばれてるとかであの場にはずっといなかったよ。ユイナも最後まで顔出さなかったし。あ、紅茶もっと飲む?」
そういやダンジュウロウもマサトもケンタも、三人ともユイナのことを気にかける様子もなかったな。生徒会として、みんなちゃんと仕事してるのか?
でも山田のいない生徒会にユイナが現れなかったってことは、さ。
「やっぱりユイナ、王子ルートに入ったってことなのかな……?」
「その線は濃厚かも。流れ的にはかえって良かったんじゃない? それならそれで対策が立てやすくなるし」
「攻略対象たちとフラグ立てまくった甲斐があったってこと? おお、やるじゃんわたし」
「調子乗んな、ボケ」
「はひ、モウシワケゴザァマセン……」
未希ってばお人形みたいにおとなしそうな顔してるけど、ブチ切れたらホント怖いんだ。
幼いころからの刷り込みで、条件反射で頭下げちゃうんだな、コレが。
「でもさ、華子の話聞いてると、ケンタの反応だけは不可解なのよね」
「と言うと?」
「あんたたち姉弟、そこまでべったりって感じじゃなかったでしょ? この前の通学途中のスリ未遂事件だって、ケンタって言うより保健医とのイベントだし」
「確かに。ケンタとはこれまで通り、普通に姉弟として接してるしなぁ。急に溺愛されるなんて奇妙な話だよね……」
「王子が見舞いに来たりして、シスコンに火がついたとか?」
あのケンタが?
ハナコの記憶をたどっても、そこまで姉弟愛が深いとも思えない。
「うーん、シスコンの気なんて、ケンタから今まで感じたことなかったけどなぁ」
「じゃあなんかほかに思い当たることはないの?」
「さっぱり」
なに未希ちゃん、その疑いのまなざしは。
「まぁいいわ。とにかく華子がこなしてるイベントって、ユイナが取りこぼしたやつっぽいから。ケンタは未消化イベント多いから特に注意して」
「りょーかい」
ってか、実の弟とフラグ立てたって、別にどうにもならないんじゃ?
「言っとくけどケンタルートのバッドエンドって、ヒロイン監禁ヤンデレコースだかんね?」
ふぉっ、姉ちゃんまで監禁されるんかっ。
「華子相手にそこまでなるかは不明だけど、ゲームの強制力がいつ発動するか分からないし」
「分かった、本気で気をつける。でもユイナのヤツ、もっとヒロインの仕事しろって感じなんだけど」
「選んだルートによっては、発生しないイベントもあるからね。そこはどうしようもないのかも」
だったらなんで起きないはずのイベントが、悪役令嬢ポジのわたしに起こるんだ?
マジ勘弁してほしい。
「それにしてもさ、未希はどうして昨日わたしが生徒会室にいるって分かったの?」
「ああ、それは目撃情報もあったんだけど……」
「あったんだけど?」
変な場所で言葉を切ったかと思うと、未希がぐっと顔を近づけてきた。
「ところで今、制服ってどこにある?」
「へ? 制服? 制服ならクローゼットにしまってあるけど……」
「そう」
なんでいきなりその質問? てか、なんで小声?
「やっぱ気づいてなかったんだ。制服の学年リボン、あるでしょ?」
学年リボンってのは制服の襟元にあるリボンのことだ。
真ん中にブローチが付いていて、その色が学年ごとに違ってる。だから学年リボンって呼ばれてるんだけど。
「それがどうかしたの?」
「アレについてるあんたのブローチ、魔力でGPSになってるから」
「は? GPS?」
「それ付けたの多分、シュン王子。ここだけの話ね」
「山田がっ!?」
どうりで隠れても見つけ出されるワケだ。山田のヤツ、今度問い詰めてシメてやるっ。
「ちなみに隠しカメラ機能もついてるから。さすがに盗聴はしてないみたいだけど」
ぬぁんですとっ!?
山田め、マジコロすっ。
「でもあのリボン、絶対に外しちゃだめだからね?」
「ええっなんでっ」
「今回だってあの機能拝借してあんたを追跡できたんだから。こんな便利なモノなくしたらモッタイナイでしょう?」
「そんなっ、プライバシーの侵害だよっ」
「着替えの時だけ気をつければいいだけの話でしょ? 休日は制服着てるわけでもないんだし」
そりゃそうかもしんないけど。
「これはもう決定事項。とにかくそのままつけておくこと!」
うわーん、未希の鬼軍曹っ。
「どのみちユイナの動向を見張らないと。それ次第で、こっちもどう動くか考えないとならないし。引き続き華子は攻略対象と接触禁止ってことで」
「アイアイサー!」
ってな感じで週末報告会議は無事に終了。
思いのほか未希のカミナリ、大きいのが落ちなくってほんとヨカッタ。
今回は激レアスイーツ様サマってことで。
なんてことをノンキに考えつつ、週明け学園に登校したんだけれど……。
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