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第一章 乙女ゲームな世界

とりあえず現状把握2

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「ほかにも攻略対象はいるけど、今んとこハナコに接点はなさそうだから割愛かつあいするね」
「おっけ。あんま情報詰め込まれても、わたしも対処しきれそうにないし」

 とりあえず今後の方針が決まったので、大分気持ちが楽になった。
 ホント未希がいてよかったって思う。

「ところでさ、わたしも山田もユイナもほぼ日本名なのに、どうして未希はジュリエッタなの?」

 ハナコ・モッリなんて、ぜんぜん西洋の公爵令嬢っぽくないし。
 対して未希はジュリエッタ・プティだなんて、やけにコジャレた名前だ。

「ああ、それはゲーム内で主要人物だけは、名前を好きにカスタマイズできる仕様だったからじゃない?」
「なるほど。ジュリエッタはモブ令嬢ポジションだもんね」
「そういうこと。国名もヤーマダ国じゃなくて、初期設定デフォルトではフランク王国だったし。悪役令嬢はドロテアだかドロリスだか、確かそんな名前だったはずよ」
「はずって、ずいぶんと情報が曖昧アイマイだね」
「当時わたしがどれだけの数、乙女ゲームやってたと思ってんのよ」

 やばっ、未希の顔がすんってなってる。

「それにわたし日本では、ひ孫までこの腕に抱いたのよ? あんたのためにこうやって遠い昔の記憶を思い起こしてあげてるんだから、もっと感謝してよね」
「ひ孫まで……」

 未希ばぁちゃん……とつぶやきかけて、冷ややかな視線に凍りついた。嘘です、未希様は大和なでしこ、遠永の日本人形ですっ!

 そのときコンコンと、ドアがノックされた。
 誰だか知らんがナイスタイミング!

 よろこび勇んでドアを開けると、やってきたのは弟のケンタだった。
 ケンタはモッリ公爵家の跡取り息子。その上、前世で華子の弟だった健太にそっくりだったりする。

 ていうか、両親も元の両親と同じ顔してるし、何なら今通ってる学園のクラスメイトも、みんな前世の顔見知りばかりだ。

 この世界、一体どうなってるんだろ。
 考えれば考えるほど、訳が分からなくなってくる。

「ただいま、姉上」
「ケンタ、おかえりなさい」
「今日もシュン王子から」

 差し出された花束に、今度はわたしの顔がすんっとなった。

 ケンタは生徒会で執行部員をやっているので、生徒会長のシュン王子とも親しい間柄だ。

 花束ってね、大きいやつだと重量スゴいんだわ。コレで山田を殴る想像だけして、おとなしく受け取った。

「それで姉上。明日は休日だし、シュン王子がぜひ見舞いに来たいってさ」
「まぁ、それは光栄ね」

 ちっ、山田め余計なことを。城にこもったまま出張ってくんな。

「ああ、ごめん来客中だった? よかったら紹介してもらってもいい?」

 未希に気づいたケンタはやけに興味津々だ。これはケンタも学園で未来の伴侶を探してるからなんだと思う。
 てか、前世で未希と健太も幼馴染だったんだけど。それを紹介するってのも奇妙な気分だ。

「ジュリエッタ・プティと申します、ケンタ様」
「はじめまして、ジュリエッタ嬢。プティというと伯爵家?」
「ええ。以後お見知りおきを」

 未希は令嬢としか見えない動きで礼を取った。

 ケンタの方が身分は上だから、当たり前っちゃあ当たり前なんだけど。
 以前の力関係を知っている身としては、噴き出すのをこらえるのに苦労してしまった。

 ケンタが出て行って、ようやく笑いを解禁した。
 ハジメマシテ、だなんて気取ちゃって。我が弟ながら、いいネタ提供してくれる。

「あ、華子。言っとくけどケンタも攻略対象だから」

 な、なんですと!?
 言葉を失ってると、未希はやけに思案顔をした。

「生徒会って攻略対象の吹き溜まりなんだよね」

 吹き溜まりって、攻略対象は汚物ですかい。

「なら絶対に近づかないようにする」
「それが賢明ね。とりあえず明日王子が来るなら、今はそっちの対処に専念しないと」

 未希の言葉にうなずいた。
 とにかく今は、山田の目をヒロインに向けさせることが先決だ。

 全力で後押しするから、ユイナ、死ぬ気で頑張って!
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