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14 手族ーマニュアラー2
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1時間ほど歩き続けただろうか。不思議なことに、他種族にまったく遭わなかった俺たちは、順当に目的地に着いた。
「ここが、オレたち手族の集落だ」
「どうだ? 見たこともないだろう」
集落を囲う石壁がずらりと広がる。
彫刻の類が施された荘厳な正門が構え、その奥に見える巨大な家々。
そのいくつかには煙突がついており、煙が立ち上っている。
驚くべきは、その建築材料だろう。俺の目が確かならば、あれはそう、コンクリートだ。
「凄い. . . . .」
隣でクレアが目をぱちくりさせて呟いた。
「じゃおれ、族長に話してくらぁ。ちょっとだけいい子で待っててくれな!」
「オレはこの子たちと待ってるからな」
颯爽と一人が駆け込んでいった。
残ったオッさんがひげを弄る。
「オレたち手族は優れた技術で発展してきたんだ。昔っから他種族と交易を重ねて暮らしはそれなりに豊かだったんだが、少し前に人族と交渉に行った奴らが帰ってこなくてな。みんな心配してんだ、何かあったのかってな。おっと、これは子どもに話していい話じゃなかったかもしれんな」
苦笑して頭をかいている。なかなか興味深い話ではないか。
「もっとおしえてよー!」
目を潤ませ、語尾を伸ばし、 全力でおねだりをする。前世で俺が培ったスキルのひとつだ。
「お、おういいともさ。 えー、どこまで話したっけな、それで、族長のジイさんが怒ってよ、攫われたんじゃないかってな。 近隣族長会議でも、人族の長がだんまりを決め込んだらしいな。 おかげで今、ぴりぴりしてんのよ」
なんかすまんな、と頭をかく。
なるほど?これでだいたいの状況は把握できた。
たったった、と走る音が聞こえて目を向けると、先程走っていったオッさんが満面の笑みで戻ってくるところだった。
「ジイさんとの面会を条件に、村に泊めてもいいってよ! 良かったなぁ!」
「ほんとですか! ありがとうございます!」
「ジイさんはおっかないからな、気をつけろよ」
少し心配ではあったが、俺たちは素直にオッさんの案内に従うことにした。
草、皮類で編まれた靴が、どこかひんやりとするコンクリートを撫でる。
俺たち一行は、ときどきほかの手族にちらと見られながら建物の中を進み、ひとつの扉の前で立ち止まった。
コンコン。
「失礼します。人族の子、二人をお連れいたしました」
「はいれ」
「はっ」
オッさんのひとりが、俺に先に入るよう促す。俺は頷いて一歩を踏み入れた。
がたんっ!!
「!?」
「おい、おぬし. . . . . . まさか!」
ひとりでぶつぶつと呟く、六本腕の筋肉爺。それが、手族の長の第一印象だ。
座っていたらしいイスは後ろに蹴飛ばされたようで、無残に転がっている。
爺は俺の顔をジロジロと見る。
何か顔についているのだろうか? 朝食べた昆虫の触覚とか?まずいな。
ーーあれはホントに不味かった。
「儂はコレと大切な話がある。おなごはここに居なさい。そして二人ともご苦労だった。下がって良いぞ」
「「 はっ 」」
バタンと扉が閉まる。
「さて. . . . . . 」
爺は六本の腕を組み、その双眸をぎらりと光らせて俺に問うた。
「おぬし、神龍の血を引いておるな?」
「ここが、オレたち手族の集落だ」
「どうだ? 見たこともないだろう」
集落を囲う石壁がずらりと広がる。
彫刻の類が施された荘厳な正門が構え、その奥に見える巨大な家々。
そのいくつかには煙突がついており、煙が立ち上っている。
驚くべきは、その建築材料だろう。俺の目が確かならば、あれはそう、コンクリートだ。
「凄い. . . . .」
隣でクレアが目をぱちくりさせて呟いた。
「じゃおれ、族長に話してくらぁ。ちょっとだけいい子で待っててくれな!」
「オレはこの子たちと待ってるからな」
颯爽と一人が駆け込んでいった。
残ったオッさんがひげを弄る。
「オレたち手族は優れた技術で発展してきたんだ。昔っから他種族と交易を重ねて暮らしはそれなりに豊かだったんだが、少し前に人族と交渉に行った奴らが帰ってこなくてな。みんな心配してんだ、何かあったのかってな。おっと、これは子どもに話していい話じゃなかったかもしれんな」
苦笑して頭をかいている。なかなか興味深い話ではないか。
「もっとおしえてよー!」
目を潤ませ、語尾を伸ばし、 全力でおねだりをする。前世で俺が培ったスキルのひとつだ。
「お、おういいともさ。 えー、どこまで話したっけな、それで、族長のジイさんが怒ってよ、攫われたんじゃないかってな。 近隣族長会議でも、人族の長がだんまりを決め込んだらしいな。 おかげで今、ぴりぴりしてんのよ」
なんかすまんな、と頭をかく。
なるほど?これでだいたいの状況は把握できた。
たったった、と走る音が聞こえて目を向けると、先程走っていったオッさんが満面の笑みで戻ってくるところだった。
「ジイさんとの面会を条件に、村に泊めてもいいってよ! 良かったなぁ!」
「ほんとですか! ありがとうございます!」
「ジイさんはおっかないからな、気をつけろよ」
少し心配ではあったが、俺たちは素直にオッさんの案内に従うことにした。
草、皮類で編まれた靴が、どこかひんやりとするコンクリートを撫でる。
俺たち一行は、ときどきほかの手族にちらと見られながら建物の中を進み、ひとつの扉の前で立ち止まった。
コンコン。
「失礼します。人族の子、二人をお連れいたしました」
「はいれ」
「はっ」
オッさんのひとりが、俺に先に入るよう促す。俺は頷いて一歩を踏み入れた。
がたんっ!!
「!?」
「おい、おぬし. . . . . . まさか!」
ひとりでぶつぶつと呟く、六本腕の筋肉爺。それが、手族の長の第一印象だ。
座っていたらしいイスは後ろに蹴飛ばされたようで、無残に転がっている。
爺は俺の顔をジロジロと見る。
何か顔についているのだろうか? 朝食べた昆虫の触覚とか?まずいな。
ーーあれはホントに不味かった。
「儂はコレと大切な話がある。おなごはここに居なさい。そして二人ともご苦労だった。下がって良いぞ」
「「 はっ 」」
バタンと扉が閉まる。
「さて. . . . . . 」
爺は六本の腕を組み、その双眸をぎらりと光らせて俺に問うた。
「おぬし、神龍の血を引いておるな?」
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