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13 手族ーマニュアラー1
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鬱蒼と茂った森の中を、痕跡を辿りながらひたすらに進む。
そうして10分ほど経ったころ。
(あれ、痕跡が無いな)
冷や汗が背中をつつ、と流れる。
叫んだら来てくれるだろうか?
しかし、大声でも出せば獣などに襲われる危険もある。
だが今は一刻を争う。まだ明るいうちはいいが、夜の森は危険な夜行性のケダモノたちで溢れかえるのだ。
俺は意を決してすぅっと息を思い切り吸い込む。
「しーっ、静かに」
「むぐ!?」
突然足元から白い腕が伸び、俺の口を塞いできた。
「いいからしゃがんで」
「む、むぐ」
誰かと思ったらやっぱりクレアだった。クレアは前方を注視したまま動かない。
草木のあいだから何かをのぞいているようだ。
顔を動かすが、この位置からは何も見えないので耳を澄ませる。
「......これ、......じゃ......かの」
「いや......だ弱い......」
人か!? 珍しい。この辺りで人間を見たことがないので驚いた。
すると、隣からちょんちょんと指で突かれた。クレアを見ると、手招きしている。そこから見えるのだろうか?
なるべく音を立てずに体を移動させる。そして俺が見たのはーーー
四つの手を生やした巨躯のオッさん×2
だった。
思わず上体を起こしてしまう。
ガサガサッ
しまった! 四つの眼がギロリと此方を睨んでくる。気づかれた。
俺とクレアは両手をあげてゆっくり立ち上がる。ちなみにこれは俺がクレアに教えた所作である。
オッさんが口を開く。
「人族の子か。迷子かい?」
にっこりと微笑んでいる。そうか、まだ俺たちの容姿は子どものそれ。必要以上に警戒しては逆に怪しまれる。
「そうなんです。ぼくたち、迷っちゃったんです」
上目遣い。高い声。幼げかつ不安げな表情。完璧だ。
「そうかそうか。もう安心だよ。ところで、大人たちとは何処ではぐれたんだい?」
一瞬だが殺気を感じた。それに感づいたことを気づかれないように答える。
「えっと、おとーさんたちがいないときに、村のそとの森で遊んでたら迷ったんです」
すぐにオッさんの目が柔らかくなった。状況が把握できていないが、危機は脱したようだ。
「そっか、じゃあいったんおじさん達の家に行こっか。そのあと君たちの家が見えるとこまで送ってあげるからね」
見えるとこまで、か。これは何かありそうだな。
「うん! おじさん、ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
クレアが追従する。
時折、隣で肩をぴくぴくと震わせているのは無視だ。どうせ笑いを堪えているのだろうがな。
そういえば、この世界で人族以外の暮らしを見たことがないな。この巨体が住むのはどんな家だろうか。
四つの手で器用に草木を掻き分けながら進むオッさん二人についていく。
そうして10分ほど経ったころ。
(あれ、痕跡が無いな)
冷や汗が背中をつつ、と流れる。
叫んだら来てくれるだろうか?
しかし、大声でも出せば獣などに襲われる危険もある。
だが今は一刻を争う。まだ明るいうちはいいが、夜の森は危険な夜行性のケダモノたちで溢れかえるのだ。
俺は意を決してすぅっと息を思い切り吸い込む。
「しーっ、静かに」
「むぐ!?」
突然足元から白い腕が伸び、俺の口を塞いできた。
「いいからしゃがんで」
「む、むぐ」
誰かと思ったらやっぱりクレアだった。クレアは前方を注視したまま動かない。
草木のあいだから何かをのぞいているようだ。
顔を動かすが、この位置からは何も見えないので耳を澄ませる。
「......これ、......じゃ......かの」
「いや......だ弱い......」
人か!? 珍しい。この辺りで人間を見たことがないので驚いた。
すると、隣からちょんちょんと指で突かれた。クレアを見ると、手招きしている。そこから見えるのだろうか?
なるべく音を立てずに体を移動させる。そして俺が見たのはーーー
四つの手を生やした巨躯のオッさん×2
だった。
思わず上体を起こしてしまう。
ガサガサッ
しまった! 四つの眼がギロリと此方を睨んでくる。気づかれた。
俺とクレアは両手をあげてゆっくり立ち上がる。ちなみにこれは俺がクレアに教えた所作である。
オッさんが口を開く。
「人族の子か。迷子かい?」
にっこりと微笑んでいる。そうか、まだ俺たちの容姿は子どものそれ。必要以上に警戒しては逆に怪しまれる。
「そうなんです。ぼくたち、迷っちゃったんです」
上目遣い。高い声。幼げかつ不安げな表情。完璧だ。
「そうかそうか。もう安心だよ。ところで、大人たちとは何処ではぐれたんだい?」
一瞬だが殺気を感じた。それに感づいたことを気づかれないように答える。
「えっと、おとーさんたちがいないときに、村のそとの森で遊んでたら迷ったんです」
すぐにオッさんの目が柔らかくなった。状況が把握できていないが、危機は脱したようだ。
「そっか、じゃあいったんおじさん達の家に行こっか。そのあと君たちの家が見えるとこまで送ってあげるからね」
見えるとこまで、か。これは何かありそうだな。
「うん! おじさん、ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
クレアが追従する。
時折、隣で肩をぴくぴくと震わせているのは無視だ。どうせ笑いを堪えているのだろうがな。
そういえば、この世界で人族以外の暮らしを見たことがないな。この巨体が住むのはどんな家だろうか。
四つの手で器用に草木を掻き分けながら進むオッさん二人についていく。
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