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君が好きだというために
最終話 ずっと好きだというために
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「先輩手紙呼んでくれたんですね。それで返事の方は……」
呼び出されたとおりの屋上で香菜ちゃんが聞いてくる。
申し訳ないけど、答えは一つだ。
「ごめん、香菜ちゃん。君の気持ちに応えることはできない。ごめん」
「……何となくそんな気がしてましたよ。先輩は誰にでも傘を貸す人ですもんね」
「え?」
「ふふ、独り言です……先輩、手紙呼んでくれてありがとうございました」
「うん、ごめんね」
「もう、先輩謝らないでください……」
そう言って香菜ちゃんはにっこり微笑むがすぐに申し訳なさそうな顔に変わる。
「あの、先輩一つお願いいですか?」
「……どうしたの?」
「あの、その、お付き合いはダメでも……その、友達では、仲のいい先輩後輩の友達としてこれからも一緒にいてくれますか?」
「……もちろん、それくらいなら」
その言葉に香菜ちゃんの顔が明るくなる。
「約束、約束ですよ、先輩! 後、カマクラに会いに絶対に家に来てください! それでは!」
そう言って足早に屋上から出ていく香菜ちゃん。
その背中をボーっと見つめる。
「……私は家に行ったりしてほしくないけどなー」
「え!? あ、星月さん、いつからいたの……?」
突然聞きなれた声がしたので振り返ると貯水タンクの上から星月さんが逆さまにこっちを見ていた。なんかホラーみたい。
「ずっといて、全部聞いてたよ。もし告白受けようもんならぶっ飛ばしてやろうと思ってね」
「受けるわけないじゃん」
「ふふふ、どうだか前みたいに……それよりお昼にしよう! 昨日言った通りお弁当、作ってきたよ!」
「ありがとう! あかりちゃん愛してる!」
「もう、調子いいんだから……とう!」
両手にお弁当を持った星月さんが貯水タンクから飛び降りる。
「そんなとこから飛び降りたら危ないよ」
「平気平気! それより、そっち行くね、日当たり良さそうだから!」
僕の方まで走ってきてお弁当を手渡してくれる。
「おー……すごい!」
お弁当箱を開けるとご飯に卵焼き、ウインナーにから揚げにポテトサラダに……とお弁当のおかずをこれでもか! ってくらい詰め込んだお弁当が出てきた。
「へへへ、今日朝早く起きて作ったんだ! ほら、たんとお食べ!」
「うん! いただきまーす!」
いただきますをしてまずは卵焼きを一口。これは……!
「……どう?」
「バッチグーだよ! 僕卵焼きは辛めのが好きなんだ!」
「あー、良かった! お口に合わなかったらどうしようかと思った……」
胸を撫でおろす星月さん。
こんな弁当を作ってもらえるなんて幸せだ!
「……それでさ伊織君、さっきの話なんだけど」
「ごめん、何の話だっけ?」
「あ、そのさっきの後輩ちゃんの話なんだけど……本当に家行くの? 一人で?」
心配そうにこっちを見る星月さん。
「多分一人だけど……大丈夫だよ、そんな変なことしないし」
「そうだけど、ちょっと心配って言うか……だってこの前夜に抱き合ってたし」
その言葉に口に含んでいた卵焼きを思わず吹き出す。え、あれ、え?
「もう、ばっちいなぁ。ほらティッシュ」
「あ、ありがとう……それよりあれ見てたの?」
「うん、見てたよ。あれのせいで私君を避けちゃって」
……うん、まああれは言い訳できないか。
「いや、でもあれは香菜ちゃんが怖がっちゃったからで、そういうのは……」
「ウソウソ、もう大丈夫。ちょっとその時は勘違いしちゃったけどやっぱりもう何も思ってないよ。だって伊織君だもん」
「……ありがとうございます」
星月さんのクスクスという笑い声が聞こえる。
その顔を見て、そろそろ言わなくちゃいけないと思っていたことを僕も話すことにした。
「あのさ、そろそろ付き合ってること周りに言わない?」
「……言っていいの?」
「うん。もう正式に付き合ったんだし、それにちゃんと周りに付き合ってるって言っておかないとなんかめんどくさい目に合うかもしれないし……君が告白されるの僕は嫌だし。それに言わないって言いだしたの君だよ」
「ははは、私の事を好きになるもの好きなんていないよ……別に言ってもいいけど、伊織君は迷惑しない?」
「……なんで?」
「だって、私ってさ、地味だしみーちゃん以外友達いないし、君とみーちゃん以外うまく話せないし……こんな彼女がいるってなったら迷惑しない? 君の足かせになったりしない?」
「迷惑なんてしないよ!」
うつむき加減の星月さんの手を取る。
「君は自分が思っているより魅力的だよ。顔もかわいいし、スタイルもいいし、友達は今からでも作れるし! 全然迷惑なんかじゃない!」
「……可愛いって、もう! ……その、伊織君私今から友達、作れるかな?」
「うん、作れる。だってあかりちゃん話してると面白いし、元気だし、可愛いし!みんな君のことわかってないだけですぐに人気者になれるよ!……それはそれで寂しいけど」
「本当に? 本当に私にできるかな? その、もし失敗したら……」」
「大丈夫、君ならできるよ。それに君には黒田さんもいるし……僕もいるから。約束したでしょ?」
「……うん、そうだね! 私頑張るよ、君の隣にずっといるために……!」
「……頑張らなくてもいいよ、君はもう十分頑張ってる。それに……でもその意気だ、頑張ろう!」
そう励ますとなぜか星月さんはまたクスクスと笑い出した。
あれ、なんか変なことしたっけ?
「ふふふ、伊織君、ほぺったにご飯粒ついてるよ」
「え、嘘、どっち?」
「ふふふ、逆側。ほら、取ってあげるからじっとしてて」
手を伸ばして僕の頬からご飯粒をとって、口に入れる。
「ありがとう、星月さん」
「どういたしまして」
そう言ってにっこり笑った。
「ふー、食べた、食べた、美味しかった! ごちそうさまでした!」
「ふふふ、お粗末様でした」
ごちそうさまを言った僕はゴロンと屋上に寝転がる。
「食べてすぐに寝ると牛になるよー」って言う声が聞こえるけど、食べた後に横になって雲を眺めるのって本当に幸せなんだよ。
そうやってのんびり雲を見ると変わった形の雲を見つける。
「ねえねえ、あの雲見て。すっごいウサギに似てる!」
「え、どれ……本当だ! ていうか伊織君昔も同じこと言ってたよね」
「え、そんなこと言ってた?」
「うん、言ってた。忘れないもん」
そう言って笑う星月さん。多分言ったんだろう。
「……ねえねえ、伊織君。その付き合ってること言うんだったらさ、その……私にちゃんとした告白してくれない?」
「……え?」
のんびり雲を眺めていると星月さんに頭をつんつんされ、そんなことを言われる。
いや、でもそれは……恥ずかしい。
「だってさ、私の方からはしたけど、まだ伊織君にはしてもらってないなー、って」
「……やらなきゃダメ? 昨日好きって言ったけど……」
「だーめ! ちゃんとした告白してほしいな」
上目遣いでそう聞いてくる星月さん。
本当、その顔はずるいよ。
「わかったよ……ちょっと待ってね」
発声練習をして、息を整えて……よし!
「星月さん!」
「はい!」
「君の明るい笑顔とか、好きなものに一直線なところとか、話してて楽しいところとか、頑張り屋さんなところとか……ちょっとめんどくさいところとか。全部全部含めて君のことが大好きです! 僕と付き合ってくれますか?」
「……はい! もちろん、喜んで!」
最高の笑顔で僕に飛び込んできた。
「……ねえ伊織君指切りしない? その、ずっと一緒にいれるように。ずっと好きだって言えるように」
「うん、いいよ。ちゃんと、しようね」
差し出された小指を僕の小指で包む。
『指切りげんまんウソついたらはりせんぼん飲―ます! 指切った!』
呼び出されたとおりの屋上で香菜ちゃんが聞いてくる。
申し訳ないけど、答えは一つだ。
「ごめん、香菜ちゃん。君の気持ちに応えることはできない。ごめん」
「……何となくそんな気がしてましたよ。先輩は誰にでも傘を貸す人ですもんね」
「え?」
「ふふ、独り言です……先輩、手紙呼んでくれてありがとうございました」
「うん、ごめんね」
「もう、先輩謝らないでください……」
そう言って香菜ちゃんはにっこり微笑むがすぐに申し訳なさそうな顔に変わる。
「あの、先輩一つお願いいですか?」
「……どうしたの?」
「あの、その、お付き合いはダメでも……その、友達では、仲のいい先輩後輩の友達としてこれからも一緒にいてくれますか?」
「……もちろん、それくらいなら」
その言葉に香菜ちゃんの顔が明るくなる。
「約束、約束ですよ、先輩! 後、カマクラに会いに絶対に家に来てください! それでは!」
そう言って足早に屋上から出ていく香菜ちゃん。
その背中をボーっと見つめる。
「……私は家に行ったりしてほしくないけどなー」
「え!? あ、星月さん、いつからいたの……?」
突然聞きなれた声がしたので振り返ると貯水タンクの上から星月さんが逆さまにこっちを見ていた。なんかホラーみたい。
「ずっといて、全部聞いてたよ。もし告白受けようもんならぶっ飛ばしてやろうと思ってね」
「受けるわけないじゃん」
「ふふふ、どうだか前みたいに……それよりお昼にしよう! 昨日言った通りお弁当、作ってきたよ!」
「ありがとう! あかりちゃん愛してる!」
「もう、調子いいんだから……とう!」
両手にお弁当を持った星月さんが貯水タンクから飛び降りる。
「そんなとこから飛び降りたら危ないよ」
「平気平気! それより、そっち行くね、日当たり良さそうだから!」
僕の方まで走ってきてお弁当を手渡してくれる。
「おー……すごい!」
お弁当箱を開けるとご飯に卵焼き、ウインナーにから揚げにポテトサラダに……とお弁当のおかずをこれでもか! ってくらい詰め込んだお弁当が出てきた。
「へへへ、今日朝早く起きて作ったんだ! ほら、たんとお食べ!」
「うん! いただきまーす!」
いただきますをしてまずは卵焼きを一口。これは……!
「……どう?」
「バッチグーだよ! 僕卵焼きは辛めのが好きなんだ!」
「あー、良かった! お口に合わなかったらどうしようかと思った……」
胸を撫でおろす星月さん。
こんな弁当を作ってもらえるなんて幸せだ!
「……それでさ伊織君、さっきの話なんだけど」
「ごめん、何の話だっけ?」
「あ、そのさっきの後輩ちゃんの話なんだけど……本当に家行くの? 一人で?」
心配そうにこっちを見る星月さん。
「多分一人だけど……大丈夫だよ、そんな変なことしないし」
「そうだけど、ちょっと心配って言うか……だってこの前夜に抱き合ってたし」
その言葉に口に含んでいた卵焼きを思わず吹き出す。え、あれ、え?
「もう、ばっちいなぁ。ほらティッシュ」
「あ、ありがとう……それよりあれ見てたの?」
「うん、見てたよ。あれのせいで私君を避けちゃって」
……うん、まああれは言い訳できないか。
「いや、でもあれは香菜ちゃんが怖がっちゃったからで、そういうのは……」
「ウソウソ、もう大丈夫。ちょっとその時は勘違いしちゃったけどやっぱりもう何も思ってないよ。だって伊織君だもん」
「……ありがとうございます」
星月さんのクスクスという笑い声が聞こえる。
その顔を見て、そろそろ言わなくちゃいけないと思っていたことを僕も話すことにした。
「あのさ、そろそろ付き合ってること周りに言わない?」
「……言っていいの?」
「うん。もう正式に付き合ったんだし、それにちゃんと周りに付き合ってるって言っておかないとなんかめんどくさい目に合うかもしれないし……君が告白されるの僕は嫌だし。それに言わないって言いだしたの君だよ」
「ははは、私の事を好きになるもの好きなんていないよ……別に言ってもいいけど、伊織君は迷惑しない?」
「……なんで?」
「だって、私ってさ、地味だしみーちゃん以外友達いないし、君とみーちゃん以外うまく話せないし……こんな彼女がいるってなったら迷惑しない? 君の足かせになったりしない?」
「迷惑なんてしないよ!」
うつむき加減の星月さんの手を取る。
「君は自分が思っているより魅力的だよ。顔もかわいいし、スタイルもいいし、友達は今からでも作れるし! 全然迷惑なんかじゃない!」
「……可愛いって、もう! ……その、伊織君私今から友達、作れるかな?」
「うん、作れる。だってあかりちゃん話してると面白いし、元気だし、可愛いし!みんな君のことわかってないだけですぐに人気者になれるよ!……それはそれで寂しいけど」
「本当に? 本当に私にできるかな? その、もし失敗したら……」」
「大丈夫、君ならできるよ。それに君には黒田さんもいるし……僕もいるから。約束したでしょ?」
「……うん、そうだね! 私頑張るよ、君の隣にずっといるために……!」
「……頑張らなくてもいいよ、君はもう十分頑張ってる。それに……でもその意気だ、頑張ろう!」
そう励ますとなぜか星月さんはまたクスクスと笑い出した。
あれ、なんか変なことしたっけ?
「ふふふ、伊織君、ほぺったにご飯粒ついてるよ」
「え、嘘、どっち?」
「ふふふ、逆側。ほら、取ってあげるからじっとしてて」
手を伸ばして僕の頬からご飯粒をとって、口に入れる。
「ありがとう、星月さん」
「どういたしまして」
そう言ってにっこり笑った。
「ふー、食べた、食べた、美味しかった! ごちそうさまでした!」
「ふふふ、お粗末様でした」
ごちそうさまを言った僕はゴロンと屋上に寝転がる。
「食べてすぐに寝ると牛になるよー」って言う声が聞こえるけど、食べた後に横になって雲を眺めるのって本当に幸せなんだよ。
そうやってのんびり雲を見ると変わった形の雲を見つける。
「ねえねえ、あの雲見て。すっごいウサギに似てる!」
「え、どれ……本当だ! ていうか伊織君昔も同じこと言ってたよね」
「え、そんなこと言ってた?」
「うん、言ってた。忘れないもん」
そう言って笑う星月さん。多分言ったんだろう。
「……ねえねえ、伊織君。その付き合ってること言うんだったらさ、その……私にちゃんとした告白してくれない?」
「……え?」
のんびり雲を眺めていると星月さんに頭をつんつんされ、そんなことを言われる。
いや、でもそれは……恥ずかしい。
「だってさ、私の方からはしたけど、まだ伊織君にはしてもらってないなー、って」
「……やらなきゃダメ? 昨日好きって言ったけど……」
「だーめ! ちゃんとした告白してほしいな」
上目遣いでそう聞いてくる星月さん。
本当、その顔はずるいよ。
「わかったよ……ちょっと待ってね」
発声練習をして、息を整えて……よし!
「星月さん!」
「はい!」
「君の明るい笑顔とか、好きなものに一直線なところとか、話してて楽しいところとか、頑張り屋さんなところとか……ちょっとめんどくさいところとか。全部全部含めて君のことが大好きです! 僕と付き合ってくれますか?」
「……はい! もちろん、喜んで!」
最高の笑顔で僕に飛び込んできた。
「……ねえ伊織君指切りしない? その、ずっと一緒にいれるように。ずっと好きだって言えるように」
「うん、いいよ。ちゃんと、しようね」
差し出された小指を僕の小指で包む。
『指切りげんまんウソついたらはりせんぼん飲―ます! 指切った!』
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