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君がいないと
君がいないと
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暗闇の空間には気まずい空気が流れていた。
星月さんは1言も話さなくなったし、僕も紙袋かぶった人と対面するのは初めてなので脳が受け付けない。
3日も会わないなんて久しぶりだし、会えた喜びとかそういうのもあるけど……やっぱり、しんどい。
「……あの、このペンどこに行くか予想してね。それポン」
「……地面落ちてるよ。無理してそんなことしなくていいから」
再び沈黙の時間が流れる。どんよりとした重い、そんな空気。
……やっぱり僕から話そう。怖いけど僕から話を切り出そう。
「ねえ、星月さん、なんで木金土と3日間も学校休んじゃったの? 連絡もつかないし、僕も黒田さんもめっちゃ心配してたよ」
作ったような言葉で変な感じになって。
星月さんは相変わらず無反応で。
でももう、ここは畳みかけるしかないと思って。
「謝りたいことって言うのはね、いろいろあるんだ……正直僕、女心とか全くわからないから色々失礼なことしてて……本当にごめん! あかりちゃんの事あんまりわかってあげられなくてごめんなさい! だからさ、お互い知るためにもっといっぱいお話、しよ?」
なんかよくわからない言葉になって。
しっかり言葉が出なくて、星月さんの反応も全然わからなくて。
……そうだ、あの紙袋のせいだよ。
あの紙袋のせいで話し合いになっていないし、あれが表情も感情も言葉をも封じる絶対的なシールドになっている。
そうだよ、あれさえなければ……!
「ちょっと!? 何するの!?」
「何もかにもそのふざけた被り物をとるんだよ! こんなの被ってるから全然話し合いができないよ、ゲームマスターみたいな恰好しやがって!」
力を込めて強引に紙袋を剥ぎ取りに出る。
でも意外と力が強く、押し倒すような形になってしまう。
怒りのこもった声で星月さんが叫ぶ。
「バカバカバカバカバカバカバカバカ! バカ! もう私に興味なんてないくせに! どうせ私じゃないくせに! みんなみんな私を放ってどっかに行くくせに!」
「何言ってるの! この4日間僕がどれだけ心配したか、どれだけもやもやしてたか! 君に嫌われたんじゃないかって……僕は君の、彼氏なんだから本当に心配で!」
「嘘つき! 彼氏なんて思ってないくせに! 私に興味なんてないくせに! 私を全然見てくれないし、それに、それに……!」
「それは……ごめんなさい! 僕、全然星月さんのことわかってなかった。星月さんの事ちゃんと見てなかった。だからこれから……これから理解したい! これから星月さんのことを理解したい……それじゃあダメ?」
「……どうせ嘘っぱちのくせに! みーちゃんに頼まれたから仕方なく言ってるんでしょ! だって、だって! 君はあの子の事が、あの子の方が……」
「違う! 嘘なんかじゃない! 僕は君が心配で、心配で……本当に僕は君が……君のことが……!」
自然に出かけたもやもやが喉に突っかかって止まってしまう。
止まってしまった言葉では思いは届かなくて。
「……どうせそんなこと言って今日もあの子と遊ぶんでしょ? みんなで私の事笑って、騙され続けたバカな女って笑って……そうやって私を一人にして……!」
「違うって! そんなことしない、だって僕は、僕は……君がいないとダメだから! 君とずっと……」
肩を掴んでまっすぐ紙袋の奥の瞳を見つめる。
見つめた瞳はすこしうるんでいて、すぐにそっぽを向かれる。
「……そんなこと言われても信用できないし。私なんかよりあの子と一緒にいる方が楽しいんでしょ? 私なんかに構ってないで、もっと明るい方に行ったらいいし……」
「なんでそんなこと言うの! 僕はずっと君に会いたかったんだよ、君と一緒に居たかった! だって、君といる時が楽しいって言うか、安心するって言うか……君がいないと寂しくてあんまり楽しくないって言うか。君と話していると、過ごしているとずっと楽しいって言うか……みんなと一緒にいても絶対に気になるって言うか、隣にいるのがあたりまえっていうか……君がいないと僕はずっと暗いままだよ……」
ぽつぽつと振り絞るように言葉が少しづつ出てくる。
建前じゃない絶対の本音がぽつりぽつり。
掴んでいた肩から手が床に落ちる。
「……本当にそう思ってる? 本当に私の事……」
「思ってるよ……君がいないと僕本当に……」
言葉が出てぽつぽつ地面に落ちる。
「……バカ。バカ……本当にバカなんだから……でもやっぱり伊織君だ」
でも、その手が、その言葉がずっと冷たい床に落ちることはなく暖かい体温が包んでくれた。
「信じてあげる……君の事だもん。君が言ったことだから……嘘じゃないって……」
そういう星月さんの声はいつも通りで。
でも、やっぱりどこか寂しそうで。
紙袋はずっと被ったまんまで。
星月さんの本当の表情も感情も気持ちも……ちゃんとわからなくて。
星月さんは1言も話さなくなったし、僕も紙袋かぶった人と対面するのは初めてなので脳が受け付けない。
3日も会わないなんて久しぶりだし、会えた喜びとかそういうのもあるけど……やっぱり、しんどい。
「……あの、このペンどこに行くか予想してね。それポン」
「……地面落ちてるよ。無理してそんなことしなくていいから」
再び沈黙の時間が流れる。どんよりとした重い、そんな空気。
……やっぱり僕から話そう。怖いけど僕から話を切り出そう。
「ねえ、星月さん、なんで木金土と3日間も学校休んじゃったの? 連絡もつかないし、僕も黒田さんもめっちゃ心配してたよ」
作ったような言葉で変な感じになって。
星月さんは相変わらず無反応で。
でももう、ここは畳みかけるしかないと思って。
「謝りたいことって言うのはね、いろいろあるんだ……正直僕、女心とか全くわからないから色々失礼なことしてて……本当にごめん! あかりちゃんの事あんまりわかってあげられなくてごめんなさい! だからさ、お互い知るためにもっといっぱいお話、しよ?」
なんかよくわからない言葉になって。
しっかり言葉が出なくて、星月さんの反応も全然わからなくて。
……そうだ、あの紙袋のせいだよ。
あの紙袋のせいで話し合いになっていないし、あれが表情も感情も言葉をも封じる絶対的なシールドになっている。
そうだよ、あれさえなければ……!
「ちょっと!? 何するの!?」
「何もかにもそのふざけた被り物をとるんだよ! こんなの被ってるから全然話し合いができないよ、ゲームマスターみたいな恰好しやがって!」
力を込めて強引に紙袋を剥ぎ取りに出る。
でも意外と力が強く、押し倒すような形になってしまう。
怒りのこもった声で星月さんが叫ぶ。
「バカバカバカバカバカバカバカバカ! バカ! もう私に興味なんてないくせに! どうせ私じゃないくせに! みんなみんな私を放ってどっかに行くくせに!」
「何言ってるの! この4日間僕がどれだけ心配したか、どれだけもやもやしてたか! 君に嫌われたんじゃないかって……僕は君の、彼氏なんだから本当に心配で!」
「嘘つき! 彼氏なんて思ってないくせに! 私に興味なんてないくせに! 私を全然見てくれないし、それに、それに……!」
「それは……ごめんなさい! 僕、全然星月さんのことわかってなかった。星月さんの事ちゃんと見てなかった。だからこれから……これから理解したい! これから星月さんのことを理解したい……それじゃあダメ?」
「……どうせ嘘っぱちのくせに! みーちゃんに頼まれたから仕方なく言ってるんでしょ! だって、だって! 君はあの子の事が、あの子の方が……」
「違う! 嘘なんかじゃない! 僕は君が心配で、心配で……本当に僕は君が……君のことが……!」
自然に出かけたもやもやが喉に突っかかって止まってしまう。
止まってしまった言葉では思いは届かなくて。
「……どうせそんなこと言って今日もあの子と遊ぶんでしょ? みんなで私の事笑って、騙され続けたバカな女って笑って……そうやって私を一人にして……!」
「違うって! そんなことしない、だって僕は、僕は……君がいないとダメだから! 君とずっと……」
肩を掴んでまっすぐ紙袋の奥の瞳を見つめる。
見つめた瞳はすこしうるんでいて、すぐにそっぽを向かれる。
「……そんなこと言われても信用できないし。私なんかよりあの子と一緒にいる方が楽しいんでしょ? 私なんかに構ってないで、もっと明るい方に行ったらいいし……」
「なんでそんなこと言うの! 僕はずっと君に会いたかったんだよ、君と一緒に居たかった! だって、君といる時が楽しいって言うか、安心するって言うか……君がいないと寂しくてあんまり楽しくないって言うか。君と話していると、過ごしているとずっと楽しいって言うか……みんなと一緒にいても絶対に気になるって言うか、隣にいるのがあたりまえっていうか……君がいないと僕はずっと暗いままだよ……」
ぽつぽつと振り絞るように言葉が少しづつ出てくる。
建前じゃない絶対の本音がぽつりぽつり。
掴んでいた肩から手が床に落ちる。
「……本当にそう思ってる? 本当に私の事……」
「思ってるよ……君がいないと僕本当に……」
言葉が出てぽつぽつ地面に落ちる。
「……バカ。バカ……本当にバカなんだから……でもやっぱり伊織君だ」
でも、その手が、その言葉がずっと冷たい床に落ちることはなく暖かい体温が包んでくれた。
「信じてあげる……君の事だもん。君が言ったことだから……嘘じゃないって……」
そういう星月さんの声はいつも通りで。
でも、やっぱりどこか寂しそうで。
紙袋はずっと被ったまんまで。
星月さんの本当の表情も感情も気持ちも……ちゃんとわからなくて。
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