1 / 1
謎のドッグスツール
しおりを挟む
蓮、中学生、3月
部活の午後練に向かうときに妹の葵の部屋から話し声が聞こえた。葵とみかちゃんが、おもちちゃんかわいいね、と繰り返している。おもちちゃんか、きっと人外の何かだろう。
みかちゃんはちゃんと人間の、葵の友達だ。最近葵の部屋には連日のようにみかちゃんが遊びに来ているらしい。小学6年生は部活もないから、春休みは暇だろうと思ったこともあったが、楽しそうに毎日みかちゃんの話を食卓でしているから、充実しているのだと思う。
蓮、中学生、6月
葵の部屋にドッグスツールが置いてあった。ドッグスツールとは、俺がドッグスツールと呼んでいるだけだが、つまり、筒形のスツールで小型犬が入れるように足元がくり抜いてあるものだ。
うちには犬はいないのに、いつのまにか葵はそれを自分の部屋に持ち込んでいた。理由を聞けば、ただ、そのスツールが一番リサイクル屋で安かったんだと。
そんなものだろうか。
蓮、中学生、7月
母さんがチワワでも飼おうかといいだした。妹は犬が大好きだし、部屋のドッグスツールはいつか犬を飼いたいという主張にも見えなくもないから、最近元気のない葵のために母さんはそう提案したのだろう。元気がないというのは、例えば食卓でみかちゃんの話をしなくなったこととか、夏休みなのに友達とも合わず家にいがちなこととか、そういうことだ。
犬の話に戻ると、普段自分の意見を言わない葵がこのときばかりはいらないといいきった。母さんがでも、と何か言いたそうにしていてもいらないと言い続ける。
蓮、高校生、7月
葵が彼女のゆかちゃんを家に連れてきている。最近はよくあることだ。
そういえばゆかちゃん、何処となく雰囲気がみかちゃんに似ている。
蓮、高校生、8月
我が家は今、引越しの作業中だ。とは言え暑い。冷蔵庫から2本コーラをだして、葵の部屋へ、一緒に涼もうと足を向ける。
葵はいつかのドッグスツールを運びだしているところだった。
それ、まだあったんだな、とコーラを渡しながらいうと葵はコーラを受け取りながら、スツールに座り、話し始めた。
「これはもう捨てるの。小学生のころ、好きだったみかちゃんに関わる思い出の品だったけど。
そういえばね、みかちゃんにはね、振られちゃったの。それからは遊ばなくなっちゃった。みかちゃんと一緒に考えた想像上のヨークシャーテリアのおもちちゃん、おもちちゃんまで忘れることが悲しくて、わざわざドッグスツールまで買っていたけど、もうゆかちゃんがいるからいらないね。」
葵は一息にそう言って笑った。
部活の午後練に向かうときに妹の葵の部屋から話し声が聞こえた。葵とみかちゃんが、おもちちゃんかわいいね、と繰り返している。おもちちゃんか、きっと人外の何かだろう。
みかちゃんはちゃんと人間の、葵の友達だ。最近葵の部屋には連日のようにみかちゃんが遊びに来ているらしい。小学6年生は部活もないから、春休みは暇だろうと思ったこともあったが、楽しそうに毎日みかちゃんの話を食卓でしているから、充実しているのだと思う。
蓮、中学生、6月
葵の部屋にドッグスツールが置いてあった。ドッグスツールとは、俺がドッグスツールと呼んでいるだけだが、つまり、筒形のスツールで小型犬が入れるように足元がくり抜いてあるものだ。
うちには犬はいないのに、いつのまにか葵はそれを自分の部屋に持ち込んでいた。理由を聞けば、ただ、そのスツールが一番リサイクル屋で安かったんだと。
そんなものだろうか。
蓮、中学生、7月
母さんがチワワでも飼おうかといいだした。妹は犬が大好きだし、部屋のドッグスツールはいつか犬を飼いたいという主張にも見えなくもないから、最近元気のない葵のために母さんはそう提案したのだろう。元気がないというのは、例えば食卓でみかちゃんの話をしなくなったこととか、夏休みなのに友達とも合わず家にいがちなこととか、そういうことだ。
犬の話に戻ると、普段自分の意見を言わない葵がこのときばかりはいらないといいきった。母さんがでも、と何か言いたそうにしていてもいらないと言い続ける。
蓮、高校生、7月
葵が彼女のゆかちゃんを家に連れてきている。最近はよくあることだ。
そういえばゆかちゃん、何処となく雰囲気がみかちゃんに似ている。
蓮、高校生、8月
我が家は今、引越しの作業中だ。とは言え暑い。冷蔵庫から2本コーラをだして、葵の部屋へ、一緒に涼もうと足を向ける。
葵はいつかのドッグスツールを運びだしているところだった。
それ、まだあったんだな、とコーラを渡しながらいうと葵はコーラを受け取りながら、スツールに座り、話し始めた。
「これはもう捨てるの。小学生のころ、好きだったみかちゃんに関わる思い出の品だったけど。
そういえばね、みかちゃんにはね、振られちゃったの。それからは遊ばなくなっちゃった。みかちゃんと一緒に考えた想像上のヨークシャーテリアのおもちちゃん、おもちちゃんまで忘れることが悲しくて、わざわざドッグスツールまで買っていたけど、もうゆかちゃんがいるからいらないね。」
葵は一息にそう言って笑った。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。
千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。
風月学園女子寮。
私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…!
R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。
おすすめする人
・百合/GL/ガールズラブが好きな人
・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人
・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人
※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。
※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる