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そんなサシャ・ラントールである私には昔から前世の記憶があった。でも全部の記憶があるわけではなくて、この世界の真実に気づくまではと楽しく過ごしていた。

『にしてもへんなかんじよね、ぜんせではわたしがあねだったのに』

そう同じく前世の記憶があった前世では私のだった双子の妹と。

『いまはわたしがおねぇちゃんだからわたしがおねぇちゃんまもるんだ!』

『ふふ、すうじかんしかかわらないでしょ』

『でもでもまもるの!』

前世でも仲がよかった私たち姉妹の前世の死因は交通事故。でも、前世の姉は私を庇おうとしなければ一緒に死ぬことはなかったからこそ生まれ変わった世界では私がお姉ちゃんを守るんだと意気込んでいた。

だけど王子と婚約することにより、ある記憶が蘇ったことによって、前世の姉は今の世界では妹なのに姉として私の幸せを願うために死んだ。

『ここはゲームの世界だった。私はヒロインであなたは悪役令嬢………逆ならよかったのに』

『でもお姉ちゃん、ここはゲームの世界じゃないから………』

『そうね………そうよね』

最初こそ私たちが今まで通り仲良くしてればあのゲームのようにいかないと私たちは信じて行動していた。なのに、なにもしなくても何故か双子の姉である私だけが悪い話ばかりされるようになって、ゲームの強制力だと呟いたお姉ちゃんの顔は真っ青になっていくばかり。

そしてついに………

『ヒロインがいなくなれば、悪役なんて生まれないわよね』

『お姉ちゃん………!?』

私のために前世の姉は、今の双子の妹は自殺した。幸せになってねと笑顔を最後に。

私はお姉ちゃんといられたらそれだけで幸せだったのに。その日からこの世界 ゲームが許せなかった。こんな世界にいたくないと私はすぐ後を追おうとしたけど悉く失敗して、婚約者が必ず助けるようになり、ならば婚約を破棄してもらえれば助けられずに死ねるのだと思い立つもそれも難しくて………。

そんな中生まれたのがレーリィ・ラントール。これが姉の生まれ変わりならと期待はしてもやはり違うと生まれた瞬間から何故かそう感じて、成長していくごとに学園に行く前から攻略対象と仲良くしていくレーリィ。それを見て私は姉に成り代わったヒロインがレーリィなのだと認識した。

ヒロインは消えない。サシャの妹として同じ物語を紡ぐために生まれ落ち続けるのだと思うともはや姉に存在価値がなかった、代わりはいくらでもいると世界から言われているようでレーリィ共々世界を憎まずにはいられなかった。

だから決めた。どうせ逃げられない運命なら自ら悪役令嬢となろうと。そして命を落とすとわかりながら進む人生を姉に見せつけることで、あなたのいない世界に意味はないと、死の人生を笑って歩けるほどに私は姉を愛しているのだと行動で伝えようと決めたのだ。

『お姉様っ!なぜ、なぜですか?私が何かしましたか?』

だからレーリィを殺す前にレーリィに言われた言葉に私はこう答えた。

『あなたが生まれたことで私のお姉ちゃんが世界に不要なものとされたの。だから私が愛する姉のために死んで?』

本当のヒロインを知るのは私だけ。ヒロインは二人も要らない。姉に成り代わったヒロインなど私は認めない。

レーリィを殺したとき私は確かにようやくこの地獄の世界から抜け出せるのだと久々に心の底から笑った。
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