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2章

スライムに平和が訪れると世界を乱すようです

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「うわぁ……」

街は落ち着いているというより悲惨な空気と騒がしい雰囲気とで街は今だ混乱しているみたいだ。毛布で身体を隠して泣く女性と、大事な部分を隠して隠すものをくれと叫ぶ男性。

どうやら女性には優先的に身体を隠すものを警備兵によって配られているみたいだ。被害が尋常じゃない様子で、祭りで溢れかえる人混みから帰るに帰れないのか、宿をまだとれてない故に行く場所がないものもいるだろう。なんなら祭りだから宿なんて埋まっててもおかしくない。

男性はまだ救いはありげだが、女性はこんな人混みでは公開処刑、もしくは見世物にされた気分に違いない。

「僕を見世物にしてたやつらに同情はしないよ」

同情はしなくていいと思うけど、見世物レベルが違うような………。

「こんなのもう、お嫁にいけない……っ」

「こんな、人前で………ううっ」

「誰かー!腰に巻けるものだけでもー!」

「きゃあぁ!変態よ!」

女性と男性でえらい違いだ。

「ユージンの教育にも悪いから宿に戻ろうか」

「うん」

帰ることには賛成だけど、教育にも悪いって神様から見たら俺はどんだけ幼い子に見えるんだ?別に童顔とかではないはずなんだけど。

結局この混乱は一日中続き、祭りは中止。この日の出来事を『最弱スライムの復讐事件』として世に広まったようだ。

最弱と言われ続け、倒された仲間たちの復讐が男女問わず、人の目が普段以上にある祭りで全裸の刑に処されたと。

さすがにスライムばかりに目がいって、神様を取り囲んでいた人数も多すぎただけに、スライムが敵と認識した者だけにそうしたとは思われず、あくまで無差別にとなった事件。

女性の大半はスライムがトラウマになり、見世物になったと大きな心の傷はケアを必要とし、男性は変態のレッテル挽回に、服着てますという意味不明なアピールをする変人が後を立たない。

スライムの復讐は命はとらないものの、大事なものをとっていった恐ろしい魔物として、スライムを見つけたら逃げるべしとスライム討伐禁止令が作られた。

「まあ、あんなにいいスライムたちが死なずに済むならいいか」

「構わないけど、スライムは分裂して増殖していくし、倒されなくなったらそれこそスライムで世界が溢れると思うんだけど」

「そうなの」

「僕は特殊だからともかく、スライムは本来分裂したら一個体として別スライムとなるから別行動していき、分裂増殖するのが常なんだよ。合体もできるけど、それはひっついてるだけに過ぎないしね」

「なんとかできないかな?」

「スライムは僕からの命令なしに個人的に生きる分には、結構流れのままに生きる魔物だから……まあとにかく、ユージンが気になるなら必要一定数は狩るようにするよ」

「あんなに神様に従ってくれてるのに?」

罪悪感とかないんだろうか?

「スライムは自らの分裂が一個体残ってれば実際は死なないよ」

「え?」

「一匹倒せば、個別行動していた分裂が分裂前に再生しようと動き、分裂前の一個体に戻るんだ。合体と違って核も融合するからきちんとした一匹だよ。その一個体を殺られてしまえばそれまでだけど。それさえなければ、また時間をかけて分裂する。で、また殺されて戻って、また分裂。それがスライムの生態性なんだ」

「つまりは分裂前に戻す作業でしかないってこと?」

「そういうこと。殺されない限り分裂していくだけなのがスライム。スライムで溢れさせないよう調整した結果が最弱スライムなはずなんだけどね。最弱でもスライム討伐禁止にされたら意味がない」

「なんとかしないと神様も大変だよな・・・」

「スライム討伐禁止令をなんとかしないと、僕がいなくなった時点でいつかの時に世界がスライムに支配されてもおかしくないね。スライムは数さえいれば命もとれるわけだし」

「さすがに増えてきたら倒さないかな?」

「わからない。このままスライム討伐禁止令が広まって、いつしか、何百年の時を、もしかするともっと短くともスライムを最弱じゃなく、恐ろしい魔物と勘違いを起こすようなことがあれば難しいかもしれない。何せ、増えきったスライムは一匹、二匹、三匹と団体行動するスライムが増える可能性も意味するしね。どこまで増えてからどれくらいの人数で討伐するかにもよるかな」

「そんな……」

スライムが最弱だと知る人がいなくなればありえなくもない、のか。しかもスライムが団体行動をし出し、人の命をとれば、それを助長させてもおかしくはない。

神様は気にしてなさそうだけど、さすがにそれを聞くとスライム討伐禁止令なんとかしないといけない気がしてきた……。

何よりスライム討伐禁止令までできた頃、俺をスライムの人型だと知る人は(嘘だけど)、謝罪しながら逃げていく。俺人間だからほぼ知らない人でも、全く知らない人でも、普通に傷つくんです。本当になんとかしないと。
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