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女性の正体

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結果として爆走する女性を止めることは叶わず伯爵は屋根から………は流石に無理と感じたのか、三階の部屋の窓から投げ捨てられてしまった。それも軽々と。伯爵にはしっかり反省してもらうつもりで来たのにまさか来た瞬間からこうなるとは思いもしなかったわけで、誰もが唖然としてしまう。

しかし、投げ捨てた張本人はそれでもまだ怒りを抑えられないとばかりに窓から………飛び降りた。

「「「「え」」」」

まさかのご乱心の上の自殺!?

慌てて私たちは窓の下を見たが、女性はそれはそれは綺麗に着地して落ちた伯爵を蹴り飛ばすのが見えた。窓から飛び降りて無事な様子に驚けばいいのか、伯爵が生きてるかも確認せず蹴り飛ばす淑女とは思えない行動に慌てればいいのかもう目の前の出来事についていけない。

「あれは……人間か?」

「そう言えばゲースゲスゲス伯爵家には当主が逆らえない怪力持ちの妹がいたんでしたね」

思い出したかのように言う宰相様。姉じゃなくて妹なのか………と驚きを隠せない。しかし、陛下はそちらよりも気になることがあったようだ。

「その家名本当なのか?」

「はい。ゲースゲスゲスだそうです。元は違う家名でしたが、一度罪を犯したものの爵位返上、降格とまではいかず、処罰とは別にろくでもない貴族と知らしめるための家名変えがあったようで」

「そうか………まあ似合いだな。あの女性はともかく」

私も最初知ったときは随分と変わった家名があるものだとは思ったけれど、理由があったとは思わなかった。家名が嫌がらせに思えるのもそもそもが罰だったからか。

それにしては単純すぎる家名な気もするが、わかりやすくしただけならまあいいのかもしれない。

「そろそろ止めないとさすがにあれ死ぬんじゃないですか?死んでるかもしれませんが」

なんて呑気に話していればトールが冷静に忠告してくれた。

「あの伯爵を片手で持ち上げて走れるほどの力ですからね、私たちで果たして止められるか………」

「俺自ら鉄槌できなかったのは残念だが、死人なら治まるまで待てばいいだろう。俺も後で一度ぐらい蹴るか」

宰相様が悩む中、陛下は既に伯爵を死んだものとして特に気にしている様子はないようだ。まあ確かにあれだけボロボロな上に三階から落とされたのでは無事ではすまないとは思うけれど………。

「だず、でてぇ…………っ」

なんて思っていれば外から聞こえた声。

「生きてないですか?あれ」

「虫の鳴き声じゃないか?」

「生命力半端ないですね」

トール、陛下、宰相様と順にその声に反応した。

陛下、虫の鳴き声ではないと思います。まあ、わかっていて言っているように思うけれど。

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