暴君皇帝は幼妻にご執心

荷居人(にいと)

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とりあえず帰宅が許された

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「あ、あ、あの、陛下に穴をあけないよう帰宅をしてもいいですか?」

思いきって陛下に尋ねたのは父。帰れるなら目を隠す必要もなくなるし、これ以上怖い思いはしないで済む。スモール家代表として言ってくれる父は偉大だ。

「………まあ、結婚式について話し合うためにも一度落ち着く必要があるだろう。体調面に問題もなさそうだしな、帰宅を許す。詳細は追って伝える。後、一応俺の護衛を数人連れていけ、馬車も用意する。念のためな」

結婚式についてと聞いてびくりと肩が震える。本当に私は陛下の妻になるんだと改めて実感して。にしても陛下との結婚式だからとても豪勢に違いない。私その豪勢さについていけるかな………なんていらぬ想像が浮かび、はっとした。

「お父様!私たちでは持参金が足りないのでは………!?」

「ほわっ!?」

そう、持参金。寧ろ相手は皇帝。借金しても足りないのではと思われる。目を閉じているため顔は見えないが父の驚きの声からすっかり頭になかったと言える。

「くく………っ心配するな、結婚前に持参金名目で財産を贈与したことにして用意するから心配はいらん。コルトリアは俺に嫁ぐことだけを考えればいい。なんなら結婚後、義両親の城の出入りは自由にしてやる」

まさに至れり尽くせり。陛下相手に私の身ひとつで本当によいのだろうか?なんて思い始めるが、これは陛下に命じられたことだからどちらにしろ逆らえない。どう言っても決して貧乏とまではいかないものの持参金で両親に苦労はかけたくないので、負担してくださるなら甘えてもいいのかもしれない。

「む、娘のためにありがとうございます……」

「………礼はいらん。それより誰にも穴はあかんからもう手で顔隠さなくてもいいぞ?」

「「「え、そうなんですか」」」

目を隠して帰宅も大変だと思っていたから帰宅前にしれてよかったと思う。人に穴をあけるなんて怖いし、それで死なれたらどうしていいかわからないから。

「貴様らは貴族にしては珍しく素直だな……下の位だとそんなものなのか?まあいい。こちらもやることができたし、今日は帰ってゆっくり休め」

「「「は、はいっ」」」

帰れることで安心しきったのか最後はそれなりに陛下と会話ができた気がする………父を通して。私が陛下の妻になることが逃げられないならせめて陛下とまともに殺されない程度にはほどほどに会話ができるようになることから頑張らないとなと思う。

だってどうしても身体が陛下から逃げようとするから。なんか、こう猛獣に見られてるようなそんな感じがしてしまうせいで。

私はこれからの先行きに不安になりながら陛下に用意された馬車に家族と乗ってスモール家に帰宅したのだった。城からの護衛つきで。
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