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ー4月25日修正と追加文ー父がんばる
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「なるほど………俺の妻はよい両親に恵まれているようだ」
父の覚悟に陛下は逆に気をよくしたとばかりににやりと笑みを浮かべる。その姿はまるで物語の魔王にもなれそうな凶悪さ。私と母はその笑みを見た瞬間、二人で手を取り合ってがくがくと身体が怯えるが、必死に足だけをがくがくがくがくと高速がくがくで震わせながら頑張るそんな父を見捨てて、私たちだけが陛下から距離をとって逃げるような真似をする気はない。
「わ、私が聞きたいのはそんなことではありません!ごご誤魔化しても無駄ですよ!?」
さっきの威勢はどこへやら、魔王の笑み(コリー命名)に父はかなり怯えを見せていた。とはいえ、娘の私のためとはいえ繰り返し伺う父を私は変わらず誇りに思う。どれだけ小さくてバカにされようと心は誰よりも強くありたいと父は昔から言っていた。それの見せ場がまさに今なのだろう。
誰もが逆らおうとしない陛下相手に立ち向かう父を見ていると人付き合いがうまくできず逃げてばかりだった私が恥ずかしくなる。優しい父も母もそう言えばそんなことはないと否定してくれるだろうがそれでも、どんなに怯えようと家族のために必死な父は誰がなんと言おうとかっこいいと私は思うから。
「誤魔化しなどせん。とりあえずちゃんと話しはするから首が疲れるだろう。そこのソファに座れ」
「え、あ、はい」
そう言うと陛下が気遣ってかソファに座るように言ったため、びくりとする父が返事をして私たちも後に続いて私が先程いたベッドの傍にあるソファに腰かけた。陛下は本来医師の人が診察の合間に使う椅子だろうものに腰かける。うん、ようやく首が随分楽になったものだ。
そう言えば私が起きたときに陛下と共に傍にいたはずの医師がいつの間にか部屋の隅にいた。色々必死で気づかなかったけれど随分と逃げ足が早い。
「俺は別に幼児愛好家ではない。それなら、適齢期の女ばかりを集めた舞踏会など無駄だとやりもしなかっただろう。元々女は面倒だと思っていたし、一目惚れなど馬鹿馬鹿しいと思っていたが、今はそう思わない。いや、面倒と感じないのはコルトリアに限っては、か。一目惚れはまあ、コルトリアに俺自身が一目惚れしたと自信を持って言えるからな。目があった瞬間、運命だとすら感じたし、他人が気絶して心配したのも初めてのことだ。だからこそコルトリアに生涯不自由はさせんし、どんな我が儘も聞いてやるが、離縁は許さん……他の男にくれてやるつもりもない。まあそれは俺に生意気な口を利ける義父殿が許さぬだろうから安心だな……」
随分勝手な言い分だが、それでも私を悪く扱う気がないのがわかり、ソファに座っても震えていた父の足の震えは少しばかり治まってほっとした父の様子が横目から伺える。
「な、生意気………ですか。すみません……娘のことになるとどうしても………しかし、そういうことでしたら少し安心いたしました」
こうして言葉にする辺り父は本当に安堵したようだ。私の陛下への気持ちはともかく、まず私に対して変態思考がなく、私のことを考えてくれている様子に安堵したのだろう。元々、私の婚姻は恋愛結婚なら上々、よくて変態思考のない最低限の生活を生涯保障してくれ、夫として最低限の義務を守ってくれる人が理想だった。最終的にそれが当てはまるのが親戚筋になるのだけど。親戚はみんないい人だけど結婚となると近い年の人たちは兄妹感が強く微妙でもあった。変な人に嫁ぐよりかは安全安心ではあったけれど。
そんなわけで私の気持ちは後回しは元々。それが陛下相手になるのは驚きでしかないし、怖くはあるけど。本当に愛されるなら生活は安定しすぎるぐらいだろう。あえて言うなら皇妃として勤まるか、陛下狙いだった人たちによって容姿以外にも益々他に色々言われそうなのが今から考えただけでも憂鬱ではある。
「いや、寧ろ愉快だ。媚びを売る鬱陶しい奴らより信用に置ける。さすがは我が妻の父君であらせられるな。さて、そんな義父殿にお願いができた。もちろん礼はしよう」
「お、お願い、ですか?」
それはそれとして陛下から反感を受けずに済んだ様子の父に私も母もほっとしながら急に言い出した皇帝様のお願いに父はびくりとする。皇帝様が男爵家にするお願いなど叶えられるとは思えないからだろう。
父の覚悟に陛下は逆に気をよくしたとばかりににやりと笑みを浮かべる。その姿はまるで物語の魔王にもなれそうな凶悪さ。私と母はその笑みを見た瞬間、二人で手を取り合ってがくがくと身体が怯えるが、必死に足だけをがくがくがくがくと高速がくがくで震わせながら頑張るそんな父を見捨てて、私たちだけが陛下から距離をとって逃げるような真似をする気はない。
「わ、私が聞きたいのはそんなことではありません!ごご誤魔化しても無駄ですよ!?」
さっきの威勢はどこへやら、魔王の笑み(コリー命名)に父はかなり怯えを見せていた。とはいえ、娘の私のためとはいえ繰り返し伺う父を私は変わらず誇りに思う。どれだけ小さくてバカにされようと心は誰よりも強くありたいと父は昔から言っていた。それの見せ場がまさに今なのだろう。
誰もが逆らおうとしない陛下相手に立ち向かう父を見ていると人付き合いがうまくできず逃げてばかりだった私が恥ずかしくなる。優しい父も母もそう言えばそんなことはないと否定してくれるだろうがそれでも、どんなに怯えようと家族のために必死な父は誰がなんと言おうとかっこいいと私は思うから。
「誤魔化しなどせん。とりあえずちゃんと話しはするから首が疲れるだろう。そこのソファに座れ」
「え、あ、はい」
そう言うと陛下が気遣ってかソファに座るように言ったため、びくりとする父が返事をして私たちも後に続いて私が先程いたベッドの傍にあるソファに腰かけた。陛下は本来医師の人が診察の合間に使う椅子だろうものに腰かける。うん、ようやく首が随分楽になったものだ。
そう言えば私が起きたときに陛下と共に傍にいたはずの医師がいつの間にか部屋の隅にいた。色々必死で気づかなかったけれど随分と逃げ足が早い。
「俺は別に幼児愛好家ではない。それなら、適齢期の女ばかりを集めた舞踏会など無駄だとやりもしなかっただろう。元々女は面倒だと思っていたし、一目惚れなど馬鹿馬鹿しいと思っていたが、今はそう思わない。いや、面倒と感じないのはコルトリアに限っては、か。一目惚れはまあ、コルトリアに俺自身が一目惚れしたと自信を持って言えるからな。目があった瞬間、運命だとすら感じたし、他人が気絶して心配したのも初めてのことだ。だからこそコルトリアに生涯不自由はさせんし、どんな我が儘も聞いてやるが、離縁は許さん……他の男にくれてやるつもりもない。まあそれは俺に生意気な口を利ける義父殿が許さぬだろうから安心だな……」
随分勝手な言い分だが、それでも私を悪く扱う気がないのがわかり、ソファに座っても震えていた父の足の震えは少しばかり治まってほっとした父の様子が横目から伺える。
「な、生意気………ですか。すみません……娘のことになるとどうしても………しかし、そういうことでしたら少し安心いたしました」
こうして言葉にする辺り父は本当に安堵したようだ。私の陛下への気持ちはともかく、まず私に対して変態思考がなく、私のことを考えてくれている様子に安堵したのだろう。元々、私の婚姻は恋愛結婚なら上々、よくて変態思考のない最低限の生活を生涯保障してくれ、夫として最低限の義務を守ってくれる人が理想だった。最終的にそれが当てはまるのが親戚筋になるのだけど。親戚はみんないい人だけど結婚となると近い年の人たちは兄妹感が強く微妙でもあった。変な人に嫁ぐよりかは安全安心ではあったけれど。
そんなわけで私の気持ちは後回しは元々。それが陛下相手になるのは驚きでしかないし、怖くはあるけど。本当に愛されるなら生活は安定しすぎるぐらいだろう。あえて言うなら皇妃として勤まるか、陛下狙いだった人たちによって容姿以外にも益々他に色々言われそうなのが今から考えただけでも憂鬱ではある。
「いや、寧ろ愉快だ。媚びを売る鬱陶しい奴らより信用に置ける。さすがは我が妻の父君であらせられるな。さて、そんな義父殿にお願いができた。もちろん礼はしよう」
「お、お願い、ですか?」
それはそれとして陛下から反感を受けずに済んだ様子の父に私も母もほっとしながら急に言い出した皇帝様のお願いに父はびくりとする。皇帝様が男爵家にするお願いなど叶えられるとは思えないからだろう。
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