暴君皇帝は幼妻にご執心

荷居人(にいと)

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仲良く気絶するもわざとじゃない

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「貴様を俺の妻にする!」

「………ほぇっ?」

「ぐぅ………っ愛らしい………!じゃなく………!断るのは許さん!明日………いや、今から貴様は俺の妻だ!」

それは突然のことだった。この国の皇帝たる陛下と遠くから目が合ったと思ったら急に陛下が近づいてきてあっという間に距離が縮まったかと思えばそんな宣言を目の前でされて………あまりの驚きに私の視界は真っ暗になった。













さて、そんな私が気絶する前の話に戻そう。今日は私にとっては憂鬱な、しかしながら陛下自ら開かれる特別な舞踏会だった。陛下は世界の頂点とも言える存在で威厳はもちろん、未来すら見えているのでは?と思うほどに地位に見合ったスペックの高いお方。容姿もそれこそ一度は男女共に必ず見惚れるほどにお綺麗で、欠点なんてあるのだろうか?あっても気にならないなんて思わせる何かがある。

しかし、この皇帝決して聖人君子ではない。見た目は天使、中身は魔王と言えるほどに容赦のない暴君。気に入らないものは女子供にすら容赦はなく、中には陛下に媚びを売ろうとした親子貴族に醜いのは顔だけにしろと言い放ち翌日その貴族は没落したとか。それでも死ななかっただけマシだと言われるのだから余程である。

そんなわけでそんなお人ではあるのだが、嫌なものは嫌とはっきり言えるお方のため、女など選り取り見取りでありながら未だ婚約者がいないどころかなんと婚約者候補すらいないとか。高貴で自分に自信があるお人は私が候補と言う人もいるらしいが、陛下に無視されてばかりでそう言ってるだけでは?と疑われた結果、実際は婚約候補すらいないと言われている………らしい。

そういうわけで陛下………はたまた国の未来のためにもお世継ぎを得るためお嫁さん探しとして婚約者のいない適齢期を迎える、もしくは真っ只中の令嬢は強制参加の舞踏会が開かれたのだ。

その中に私、コルトリア・スモールも含まれていた。いつまでも背が低く、子供みたいな姿をからかわれ続けて自己防衛のために理由をつけて社交界から逃げてきた私が選ばれるはずもないのにそれでも見た目にしても身分の低さにしてもそれ故にろくな相手からの縁談がないため、婚約者を早急に作れるはずもなくせめてと優しい両親たちが共に付き添って来た舞踏会はあまりにきらびやかで家族寄り添って壁に避難したほど。

気分は狼の群れに放り込まれたうさぎの家族。

「お、お父様、お母様!わ、わた、私たち場違いな気がします!」

「そそそそうね!でもあなたが皇帝に挨拶をしないと帰れないのよ………っ」

「う、うむむ……い、いっそ私が女装をしてコリーの代わりを………!」

「お………お父様…………っ!ぐず………っお気持ちは嬉しいですが、父が殺されるのを見たくはないですっ!」

「わ、私も娘の死は見たくない!」

「うう………っもし、もし陛下の機嫌を損ねた場合私たちは死ぬときも一緒ですわ!」

「お母様!」

「メリー!」

きらびやかな舞踏会で似合わない涙を流しながら私たちスモール家の絆が深まったその時は死ぬか生きるかのどちらかの考えしかなかった。それこそ皇帝様と話した記憶がなく噂だけを信じてより怖い想像をしていたから。

だからまさか挨拶までの心の準備前段階で目があって選ばれるなんてそれこそ予想外すぎて気絶しても仕方なかったというのは私の言い訳である。ちなみにその時気絶したのは私だけでなく、親の二人も。

似たもの家族の私たちはそれこそ見事にタイミングを揃えて気絶したのだと後に聞いた。
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