悪役令嬢が望んだ処刑の日【本編完結+エンド後ストーリー複数完結】

荷居人(にいと)

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エンド後ストーリー~廃人エンド~【完結】

無知なる罪~元婚約者視点~

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まるで物語のように語られた僕の知らないマリア少女の話。

命を奪っていく治療法のない病?ならば処刑などなくてもマリアは死ぬ運命にあったということ。それを悟られないために処刑されるようマリアは周りを誘導………したのだろうか?

周りに押されるままどこかでマリアを改心さえするならば周りを押し切って助けよう!なんてあまりに甘い考えだったと知った。

もっともっとしつこいくらいにマリアに問いただすべきだっただろうか?何故自分に何も話さない?なんて甘えた考えは捨て、注意深くマリアを見るようにしていたら?

少しの異変にも気づいてマリアの死を待つ苦しみを和らげることができただろうか?考えても考えてもマリアに死を与えてしまったのは僕だ。もういいと最後の言葉を聞きたくないと決断を下した僕だ。病気でもマリア自身でもない。マリアを信じきれなかった自分のせい。

未遂犯罪で出た数多くの証拠や証言に本当におかしなところはなかっただろうか?後悔ばかりが押し寄せて、ふと死ぬ前に聞こえなかったマリアの最後の呟きが記憶から呼び起こされる。

『どうか、お幸せに』

最後の最後昔のマリアを見た気がしていた。自分の願望かもしれないと忘れようとした。口の動きがそう見えただけだと。

でも今ならわかる。あれは最後の最後で塗り固めた仮面を脱いだ本当のマリアだったのだと。僕が救いたかったマリアなのだと。

「マリア……すまない……マリア、愛しているんだ、昔も今も」

実は一目惚れだったとマリアは知っているだろうか?知らないかもしれない。言えばよかった。どんなに悪さをして突き放されようとどんな君も愛していると。

今の婚約者は互いに友人以上に想うことのない別の人を想う片想いの同士なのだと。マリアが王妃になりたくないのかもしれない、僕を嫌いになってしまったのかもしれないと考えたんだ。

ならばマリアを自由にもできる。君を諦めるから、罪をもう犯す必要はない。しっかり改心して君の本当の幸せを思い出してほしいと思っていた。最後まで意地を張るように見える君を見ることがたまらなく辛かった。

けど、本当に辛かったのはマリアだ。マリアの隠す本心を知りたいなんて意地になっていたのは僕じゃないか。

「酷なことを言います。これは王太子殿下が選んだ道です。これは私が見た私の真実。マリア様の思う真実は違うところがあるかもしれません。しかし、マリア様を想うならその想いは消してください。それがマリア様の願いです。自分が死んだ後に誰も悲しんでほしくないがために、国の代表悪のように自分を捨ててまで貫き通したマリア様の願いです。処刑を決断した貴方まで悲しんでしまえば、マリア様は何のために苦しんだまま死なれたのですか?」

ああ、悲しむことすら許されないとはなんて辛いことなんだろう。これが甘い僕への罰なら、マリアのための涙ひとつ許されない罰ならば………それは、何よりも辛い罰だ。

君を想うことも君の死を悲しむことも、後悔することすら許されない。許されない罪を僕はした。

でも何も思わないことで、君の人生が無駄ではなかったと、願いが叶うと言うのなら、僕は何も………何も感じない、考えないようになろう。

そう……何も。

「マリア………君の願いを……せめて」

「王太子殿下?」

暗い暗い海の底へ沈んでいく意識。それくらいしないと僕は君を忘れ、何も思わないなんてできないから………。

それくらいに本当は君が…………

あれ、君とは一体………誰だっけ

ああ、世界は今日も灰色だ。

END










あとがき
これは廃人………エンドになるのだろうか?まあ深くは考えないでください。

皆さん色々なエンドを考えてくださるのでいっそ終わりを分岐させてみることにしました。書けそうなものに限りますが。

まずは全てを忘れ、世界の輝きすらもわからなくなる廃人?エンドです。

好みのエンディングが見つかれば幸いです。
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