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狂ってる………読み進めれば進めるほどに字が乱雑になっていた。まるで自分はおかしくないと言い聞かせているかのように。
ちらりとミリーナ様を見れば何故か微笑んでいて、それでありながら目は虚ろだったため、背筋がぞっとした。もはや狂っているという次元ですらないのかもしれない。
「そしてゼロの7歳の誕生日、喜劇は起きた」
喜劇………殺人現場をこの人は悲劇ではなく、喜劇としっかりとした字で書いている。ここだけは丁寧に、まるで思い出して書くことすらも楽しむかのように。
「キャロエは心中を果たそうとした。ハワードは刺され、ゼロを守ろうとしたクリスまでもがその餌食に。だから、私は正当防衛になると踏んで初めて自分の手で死を飾った。何故と目を見開くキャロエは愉快で堪らなかった。最後は自分の息子であるゼロに、絶望を与える言葉を残して亡くなるのだから本当に最後の最後、より最高の観察対象となってくれたように思う。本人にとっては愛せないせいでゼロに罪を犯させたことを謝りたかったのだと思うけど、それがわかるのは私くらい。ゼロは生かそう。次なる観察対象を自らなくすなんてもったいないから。復讐劇は終わらせない」
「母さん……やっぱり、俺の、せいで」
元はミリーナ様が影でそそのかしていたかもしれないけれど、日記を読んだ後からしても、最終的にキャロエさんを追い詰めたのはゼロ……という見方になる。
母に愛されたいが故の無邪気でありながら恐ろしい犯行。その事件がなければ、ゼロの誕生日に一家心中なんてキャロエさんは考えなかったかもしれない。
たらればの話をしても仕方ないことはわかっている。わかってはいるけれど……どこまでも報われない人生であるゼロがなんだかあまりにも見ていられない。
ステイの浮気相手だったことが霞んでしまうくらいに。ああ、もう、浮気相手として責めるだけだったならどんなに楽だったことだろう?そんなことを考えてしまうくらいに私はもう何をどうするべきかわからない。
真実を知れば知るほどに残酷なこの話に救いが見出だせないし、そもそもこれに関して関係のない私がでしゃばることでもない。こんなことがなければ人の婚約者と浮気なんてことしなかったかもしれないけれど、ステイの三回の浮気の様子から考えれば、ゼロじゃなくても誰かしらとしていた可能性が高い。
その場合は是非とも重い話のないろくでもない浮気相手でお願いしたい。まあ、もう婚約すらする気もなければ会いたくもないけどね?
「とりあえず……自分の息子に薬を使用した虐待とも言える罪は償わせることができるでしょう。日記という証拠があれば正当防衛は嘘であり、殺意の証拠にもなりえる。他にも探せば色々出そうだけれど………野放しにするには貴女は危険すぎるわ」
なんていう現実逃避?はすぐ終わりを告げた。母の言葉によって。まあ、母の言う通りミリーナ様は捕まるべきだろう。イチ様は恐らく今も薬によってずっとぼーっとしているのだろうし………ってふと思ったけど明らかにおかしいイチ様に対してイチ様の婚約者一家は何も思わなかったのだろうか?
初対面時の私でもおかしいと感じたのに?
いくら男性が苦手だからって……関わりはあったようだし、何かしら………感じとる何かはあったはず、よね?
ちらりとミリーナ様を見れば何故か微笑んでいて、それでありながら目は虚ろだったため、背筋がぞっとした。もはや狂っているという次元ですらないのかもしれない。
「そしてゼロの7歳の誕生日、喜劇は起きた」
喜劇………殺人現場をこの人は悲劇ではなく、喜劇としっかりとした字で書いている。ここだけは丁寧に、まるで思い出して書くことすらも楽しむかのように。
「キャロエは心中を果たそうとした。ハワードは刺され、ゼロを守ろうとしたクリスまでもがその餌食に。だから、私は正当防衛になると踏んで初めて自分の手で死を飾った。何故と目を見開くキャロエは愉快で堪らなかった。最後は自分の息子であるゼロに、絶望を与える言葉を残して亡くなるのだから本当に最後の最後、より最高の観察対象となってくれたように思う。本人にとっては愛せないせいでゼロに罪を犯させたことを謝りたかったのだと思うけど、それがわかるのは私くらい。ゼロは生かそう。次なる観察対象を自らなくすなんてもったいないから。復讐劇は終わらせない」
「母さん……やっぱり、俺の、せいで」
元はミリーナ様が影でそそのかしていたかもしれないけれど、日記を読んだ後からしても、最終的にキャロエさんを追い詰めたのはゼロ……という見方になる。
母に愛されたいが故の無邪気でありながら恐ろしい犯行。その事件がなければ、ゼロの誕生日に一家心中なんてキャロエさんは考えなかったかもしれない。
たらればの話をしても仕方ないことはわかっている。わかってはいるけれど……どこまでも報われない人生であるゼロがなんだかあまりにも見ていられない。
ステイの浮気相手だったことが霞んでしまうくらいに。ああ、もう、浮気相手として責めるだけだったならどんなに楽だったことだろう?そんなことを考えてしまうくらいに私はもう何をどうするべきかわからない。
真実を知れば知るほどに残酷なこの話に救いが見出だせないし、そもそもこれに関して関係のない私がでしゃばることでもない。こんなことがなければ人の婚約者と浮気なんてことしなかったかもしれないけれど、ステイの三回の浮気の様子から考えれば、ゼロじゃなくても誰かしらとしていた可能性が高い。
その場合は是非とも重い話のないろくでもない浮気相手でお願いしたい。まあ、もう婚約すらする気もなければ会いたくもないけどね?
「とりあえず……自分の息子に薬を使用した虐待とも言える罪は償わせることができるでしょう。日記という証拠があれば正当防衛は嘘であり、殺意の証拠にもなりえる。他にも探せば色々出そうだけれど………野放しにするには貴女は危険すぎるわ」
なんていう現実逃避?はすぐ終わりを告げた。母の言葉によって。まあ、母の言う通りミリーナ様は捕まるべきだろう。イチ様は恐らく今も薬によってずっとぼーっとしているのだろうし………ってふと思ったけど明らかにおかしいイチ様に対してイチ様の婚約者一家は何も思わなかったのだろうか?
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