みんなもやってるから浮気ですか?なら、みんながやってるので婚約破棄いたしますね

荷居人(にいと)

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「………ハワードさんと叔父クリスさんはキャロエの犯行と思い、キャロエを庇うために祖父母のことは事故で片付けようとした」

犯行を隠そうとするなんて………でもハワードはキャロエにずっと罪を感じていたなら、そう行動してしまうのも仕方、ないんだろうか?

大切な人が犯罪を犯した時……私ならどうするだろう……?

「それだけ刺されたなら事故で片付けるのは難しいんじゃ……」

「死体を隠した上で、痕跡だけを残して事故に見せかけたんだそうです」

「死体を隠す……?」

人ひとりでも大変だろうに、二人の死体を隠せる場所なんてあるのだろうか?すぐ見つかる気がするけれど………。

「海に投げ入れたと聞きました」

「海に……!?」

確かに海ならどこかに行き着かない限り見つかる可能性はないかもしれないけれど……それでもよく海まで二人を運べたものね……。秘密裏にゼロの叔父クリスが馬車を用意したのかしら。

それだけ刺されたなら祖母はともかく、祖父に関しては馬車に血痕をつけずにはいられないだろうし、血痕を残さないようにするのは難しいんじゃ………

「海に近づいたら馬に興奮剤を打ち、馬の暴走で馬車ごと……そうすることで二人の死因を偽装したのです」

「なんてこと……もしかしてお二人の埋葬は………」

「されております。やはり罪を隠すなんてことは許されないのでしょうね………しばらくして二人の遺体は岸に流れ着いたようで、事故ではなかったことが知られました。遺体を見れば明らかですから……ですがその時には犯人と思われる人キャロエ犯人を隠した共犯者ハワードとクリスすらも亡くなっていたので、事件にすることもなく終わりました……」

「亡くなっていた……というのがゼロさんの記憶に関わるお話、ですか?」

「ああ、ここからは俺が話す。俺が自ら行った犯行により、終わりを告げた歪んだ家族の最後を……な」

「ゼロさん……」

止まらない涙を堪えることもなく、ゼロは話し始める。ゼロが幼い時に記憶を改竄するほどのショックな出来事を。

「それは俺が七歳の誕生日を向かえたときだった。まだ祖父母を殺してから1か月も経ってないときだ。あれから母は俺に怒鳴ることはなくなったし、ずっと何かを考え込んでいる様子だった。でも突然、七歳の誕生日で初めて母さんにゼロ、誕生日おめでとうと言われたんだ。俺は幼いながらに、初めて自分の存在を認識されたような気がして、その言葉が宝物のようにただただ嬉しかった……あんなことがなければその言葉だけで生きていけたと思う」

誕生日おめでとう………そのひとつの言葉がゼロにとって本当に嬉しかったんだというのが伝わってくる。メイリーンとしてじゃなく、ゼロとして見た上で、生まれたことを一番認めてほしい人に祝ってもらえたのだから。

その瞬間がゼロにとって唯一母親キャロエが自分の存在を肯定してくれた唯一の時間だったのだろう。

もっと早くその瞬間があったなら……この家族の未来は少しでも幸せに向かっていただろうか?不幸の連鎖を………止められただろうか?考えても仕方ないと思いながらもそんなことがふと頭に浮かんだ。
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