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22~ゼロ視点~
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祖父は躊躇ったが、じっと見る俺に耐えきれなかったのか、少し間はあったものの応じてくれた。
そして、家の中へ招き入れた先には、ぶつぶつと言って俺たちが家に入ってきたことさえ気づいていない母。
いつもなら怒られるので声をかけないが、俺は祖父母が緊張して母に目がいっている隙に、ある物を手にしてポケットに入れて、母に声をかけた。
「母さん!母さん!」
「うるさい!黙………っえ?」
母のもとで叫ぶように呼ぶ俺に気づいた母が俺に怒鳴ろうとしたとたん、母はようやく祖父母の存在に気づいた。
「キャロエさん……急に来た非礼申し訳ない………」
絞り出すような声で祖父がまずは家に来たことへの謝罪をする。勝手に連れてきたのは俺なのに。
「なんで………ここに?」
「ぼくが連れてきたの!」
「メイリーン、が?」
「うん!母さんにね、喜んでもらいたくて!」
「私が……喜ぶ?」
母はこの時点では理解できなかっただろう。仇の相手だと理解していることがわかるくらいに目が憎しみと怒りに染まっていたから。
でも、俺もまたこの時点では喜ばせる用意をしただけに過ぎなかった。
「母さんがぼくを嫌いな理由わかったからね、ぼくが母さんの嫌いな人なくしてあげる!そしたら母さんぼくのこと好きになってくれるよね!」
「何を……」
「ゼロくん?」
この家にいる誰もが俺の言っている意味を理解できていなかった。それに、俺が子供だったからこそ誰もが油断していた。
俺はその言葉と同時に何をするつもりかわかっていない祖父に向かい合い先程ポケットに忍ばせていた果物ナイフで思い切り祖父のお腹辺りを刺した。
「うぐぅ……!ぜ、ろ……くん……」
「あ、あなた!」
「メイリーン!?」
俺以外の大人三人は信じられないといった表情で驚きを見せる。だけど、俺にとっては母に好かれるためにしたことだった。母の嫌いな人がいなくなれば、自分が似ているからと母に嫌われることもないんじゃないかと。
父が教えてくれたから。俺は祖父母に似ているから母がたまにおかしくなると。でも俺を嫌ってるわけじゃないって。ただ母と俺の祖父母の仲が悪いだけなのかなって簡単に考えていた。
でも祖父から話を聞いて、全部全部この人たちが悪いんだってわかって、なら母の前でなくなればきっともういない人ってなって母に愛されるんじゃないかなんてバカなことを本気で考えた結果が祖父を殺すことだった。
「じいさんに聞いたんだ。母さんの父さん、母さんを、じいさんが殺したんだって。ぼく、処刑が何か知ってるよ。人が死ぬんだよね?」
「ぜろ、くん……やめ……ぐああっ」
祖父が死なないから果物ナイフを抜いて太股を刺せば膝をつく祖父。
「もう、もうやめてゼロく……」
「じゃま、しないで」
「………っ」
祖母が止めようとしたけれど、睨んで邪魔しないように言えば、祖父に駆け寄ることすらもせず立ち尽くした。
「家族に危害を加えるかもしれないって思ったら殺していいんでしょ?同じことをぼくもするだけだよ。だってそうだよね?母さんがじいさん、ばあさんに奪われるかもしれないでしょ?母さんが平民だからって理由だけで」
「ぁ………」
祖父は反省していたつもりだったのだろう。だけど、俺の言葉に自分が今同じ理由で同じように殺されると知り、自分が本当の意味でなんて理不尽なことをしたのか悟ったように思えた。とはいえ、もう逃がす気などあるはずもない。
最後に心臓を躊躇いなく突き刺して………祖父は絶命した。
そして、家の中へ招き入れた先には、ぶつぶつと言って俺たちが家に入ってきたことさえ気づいていない母。
いつもなら怒られるので声をかけないが、俺は祖父母が緊張して母に目がいっている隙に、ある物を手にしてポケットに入れて、母に声をかけた。
「母さん!母さん!」
「うるさい!黙………っえ?」
母のもとで叫ぶように呼ぶ俺に気づいた母が俺に怒鳴ろうとしたとたん、母はようやく祖父母の存在に気づいた。
「キャロエさん……急に来た非礼申し訳ない………」
絞り出すような声で祖父がまずは家に来たことへの謝罪をする。勝手に連れてきたのは俺なのに。
「なんで………ここに?」
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母はこの時点では理解できなかっただろう。仇の相手だと理解していることがわかるくらいに目が憎しみと怒りに染まっていたから。
でも、俺もまたこの時点では喜ばせる用意をしただけに過ぎなかった。
「母さんがぼくを嫌いな理由わかったからね、ぼくが母さんの嫌いな人なくしてあげる!そしたら母さんぼくのこと好きになってくれるよね!」
「何を……」
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この家にいる誰もが俺の言っている意味を理解できていなかった。それに、俺が子供だったからこそ誰もが油断していた。
俺はその言葉と同時に何をするつもりかわかっていない祖父に向かい合い先程ポケットに忍ばせていた果物ナイフで思い切り祖父のお腹辺りを刺した。
「うぐぅ……!ぜ、ろ……くん……」
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俺以外の大人三人は信じられないといった表情で驚きを見せる。だけど、俺にとっては母に好かれるためにしたことだった。母の嫌いな人がいなくなれば、自分が似ているからと母に嫌われることもないんじゃないかと。
父が教えてくれたから。俺は祖父母に似ているから母がたまにおかしくなると。でも俺を嫌ってるわけじゃないって。ただ母と俺の祖父母の仲が悪いだけなのかなって簡単に考えていた。
でも祖父から話を聞いて、全部全部この人たちが悪いんだってわかって、なら母の前でなくなればきっともういない人ってなって母に愛されるんじゃないかなんてバカなことを本気で考えた結果が祖父を殺すことだった。
「じいさんに聞いたんだ。母さんの父さん、母さんを、じいさんが殺したんだって。ぼく、処刑が何か知ってるよ。人が死ぬんだよね?」
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祖父が死なないから果物ナイフを抜いて太股を刺せば膝をつく祖父。
「もう、もうやめてゼロく……」
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「………っ」
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「ぁ………」
祖父は反省していたつもりだったのだろう。だけど、俺の言葉に自分が今同じ理由で同じように殺されると知り、自分が本当の意味でなんて理不尽なことをしたのか悟ったように思えた。とはいえ、もう逃がす気などあるはずもない。
最後に心臓を躊躇いなく突き刺して………祖父は絶命した。
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