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20~ゼロ視点~
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最初から、二人が自分の祖父母だと知っていた訳じゃない。二人と会ったことは一度や二度ではなかった。
父さんも叔父さんも俺が女の子として過ごすようになってから女の子として戸籍にようやく俺を入れられたのもあり、母が落ち着いたと思っていたようだが、俺と二人の時、ときどき母はおかしくなっていた。
「まま!ままかいたよ!」
幼い頃の俺は、少しでも母に自分を見てもらおうと父が仕事に行っている間、幼いなりに頑張っていた。だけど……
「うるさい!喋るな!………ぁ………」
こんな風にときどき怒鳴ることがあったのだ。それと同時に手をあげられるが、いつも母は俺と目が合うと怯えた表情になり、静かに手をおろす。そんなことの繰り返しがときどきあった。
それでも残りは二人の時で、母が相手をしてくれた上に、稀に頭を撫でてもらえるのが、幼いながらに嬉しくて仕方なかったのは今でも強く覚えている。
そんな日々の中で祖父母は急に現れた。
母がぶつぶつと言い、周りが見えていない時に家の外で母のためにあげる花がないか探していたときのこと。
「君が……」
「女の子……でも、ハワードによく似てるわね……」
「? だれ?」
「私は……そうだな、ただの通りすがりの罪深きじいさんだ」
「じいさん?」
「私のことはばあさんとでも呼んでちょうだいな」
「ばあさん……」
二人は初対面のとき、俺のことを知っていた様子だが、しばらく自分達が祖父母であることを言うことはなかった。そして、母に会おうとすることもなく、時々俺がひとりでいる時に現れては遊び相手となってくれた。
「ばあさん、どろだんごすごいきれい!」
「ふふふ、昔綺麗に作るコツを教えてくれた子がいたのよ。メイリーンちゃんにも教えてあげるわ」
「ううん!ぼくはいい!じいさんがへただからおしえてあげて!」
「うぐ……っこういうのはしたことがないんだ……」
俺にとってのその時の祖父母は、時々遊びに来てくれる叔父さんと同じような感覚だった。器用なおばあちゃんと不器用なおじいちゃん。でも時々二人は変な顔をした。
「じいさん、ぼくもてつだってあげる!」
「おお、そうかそうか」
「よかったわねぇ……それとメイリーンちゃん、女の子なんだからぼくじゃなくてわたし、じゃないかしら?まるで男の子みたいよ?」
「そうだよ!ぼく、おとこだもん」
「え?」
「じいさん、ばあさんにはないしょのはなししてあげる!ぼく、ほんとうのなまえはゼロっていうんだよ!」
「戸籍では………メイリーンでは……」
「おとこのぼくはそんざいしちゃだめなんだって!ままが、おかしくなるから。だからおんなのこのぼくのなまえがメイリーンなんだよ」
二人はそんな俺の話に顔を歪めて辛そうな顔をする。でも何故二人がそんな顔をするのか、俺にとってはその事実が当たり前のこと過ぎてわからなかった。
「私のせいだ……全て……私が盲目的すぎたせいだ……」
「あなた……止められなかった私にも責任はあります」
「じいさん、ばあさん……どうしたの?かなしいの?」
何かを悔やむようにじいさんとばあさんが泣き出すのはこれだけじゃなかった。俺と母について、時に父について何かを話す度に二人は涙を流していた。
まるでそれは自分達のせいだと悔やむかのように。
父さんも叔父さんも俺が女の子として過ごすようになってから女の子として戸籍にようやく俺を入れられたのもあり、母が落ち着いたと思っていたようだが、俺と二人の時、ときどき母はおかしくなっていた。
「まま!ままかいたよ!」
幼い頃の俺は、少しでも母に自分を見てもらおうと父が仕事に行っている間、幼いなりに頑張っていた。だけど……
「うるさい!喋るな!………ぁ………」
こんな風にときどき怒鳴ることがあったのだ。それと同時に手をあげられるが、いつも母は俺と目が合うと怯えた表情になり、静かに手をおろす。そんなことの繰り返しがときどきあった。
それでも残りは二人の時で、母が相手をしてくれた上に、稀に頭を撫でてもらえるのが、幼いながらに嬉しくて仕方なかったのは今でも強く覚えている。
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「? だれ?」
「私は……そうだな、ただの通りすがりの罪深きじいさんだ」
「じいさん?」
「私のことはばあさんとでも呼んでちょうだいな」
「ばあさん……」
二人は初対面のとき、俺のことを知っていた様子だが、しばらく自分達が祖父母であることを言うことはなかった。そして、母に会おうとすることもなく、時々俺がひとりでいる時に現れては遊び相手となってくれた。
「ばあさん、どろだんごすごいきれい!」
「ふふふ、昔綺麗に作るコツを教えてくれた子がいたのよ。メイリーンちゃんにも教えてあげるわ」
「ううん!ぼくはいい!じいさんがへただからおしえてあげて!」
「うぐ……っこういうのはしたことがないんだ……」
俺にとってのその時の祖父母は、時々遊びに来てくれる叔父さんと同じような感覚だった。器用なおばあちゃんと不器用なおじいちゃん。でも時々二人は変な顔をした。
「じいさん、ぼくもてつだってあげる!」
「おお、そうかそうか」
「よかったわねぇ……それとメイリーンちゃん、女の子なんだからぼくじゃなくてわたし、じゃないかしら?まるで男の子みたいよ?」
「そうだよ!ぼく、おとこだもん」
「え?」
「じいさん、ばあさんにはないしょのはなししてあげる!ぼく、ほんとうのなまえはゼロっていうんだよ!」
「戸籍では………メイリーンでは……」
「おとこのぼくはそんざいしちゃだめなんだって!ままが、おかしくなるから。だからおんなのこのぼくのなまえがメイリーンなんだよ」
二人はそんな俺の話に顔を歪めて辛そうな顔をする。でも何故二人がそんな顔をするのか、俺にとってはその事実が当たり前のこと過ぎてわからなかった。
「私のせいだ……全て……私が盲目的すぎたせいだ……」
「あなた……止められなかった私にも責任はあります」
「じいさん、ばあさん……どうしたの?かなしいの?」
何かを悔やむようにじいさんとばあさんが泣き出すのはこれだけじゃなかった。俺と母について、時に父について何かを話す度に二人は涙を流していた。
まるでそれは自分達のせいだと悔やむかのように。
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