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浮気相手については母に任せるとして、私は婚約破棄に後悔はなくても改めて気持ちの整理をすることにした。
とはいえ、その日はなんだか色々と疲れてしまったので翌日に持ち越すことに。
学園に行けば勘当されたステイを見かけなくなったが、わざわざ噂になるようなことはなかった。婚約破棄で令息を見なくなることがそれなりにあったので、自然と察してもらえるのだ。
それでもステイが浮気する前は相思相愛と言われていた私たちだから、心配の声をかけてくれる人もいた。今思えばステイばかり見て、私は友人たちとの関わりが今まで少なかった気もしたため、この機会に友人とより仲を深めていくのも悪くないかもしれない……なんてことを思う。
もちろん深めるのは友情であって他の何物でもない。相手は同姓だしね。
「そういえばマリアは知っているかしら?ご令嬢が噂に惑わされて平民と浮気した話を」
「令息………ではなく、ですか?」
そんなことを考えながら友人のエイビィ様と話していれば、令息方ではなく令嬢が浮気をしていたという話になり、驚く。今まで令息ばかりで令嬢で浮気をする方は聞かなかったから。
もしかしたらそんな噂が流れたから私の婚約破棄はより話の内容が薄れたのかもしれない。ある意味ありがたくはある。気持ちの整理がしやすくて。冷めた愛とはいえ、今までの楽しかった思い出もある中、気持ちの整理は大事だから。
「それがご令息は浮気はしてなかったようだけど、令息方の浮気が当たり前みたいな噂に惑わされた令嬢が勘違いで令息を問い詰め、していない令息は当然否定するも令嬢は噂に惑わされて信じられず、そこで令嬢に恋をした平民が慰めることで互いに愛が芽生えたようで………捧げてしまったんですって」
「まさか……」
「ええ、はしたないので小声で言わせていただくけれど……純潔を」
「まあ……っ」
浮気にしてもいい、してはいけないなんてものはなく、してはいけないが鉄則だが、それでも行き過ぎた浮気は当然ある。その噂の令嬢の場合自ら傷物となったのだから、これからの未来例え令息が許して結婚をしようと傷物令嬢として悲惨な未来しか見えない。
いっそ平民になった方が幸せな可能性すらあることをしたわけだ。婚約破棄をされ、勘当をされなかったにしても嫁ぎ先はろくなのがないだろう。
「でも救いなのかどうかはわからないけれど、令嬢は平民を愛しているようで平民もそれは同じ。だから、令嬢は自分に有責を受け入れて婚約破棄に応じたみたい。そして自ら平民になる道を選んだみたいよ」
「そうなると………それを狙っていたようにも思えますね」
「そうなのよ。元々男爵家の方で、平民とも近い距離感だったのもあって平民になることに躊躇いはなかったそうなの」
「男爵家の令嬢……?」
ふとしばらく見ていなくて体調でも崩したのだろうかと思った人がいた。
「ええ、マリアが考える人で合ってるわ。スカーレット様よ」
「ええっ!あの方が?」
それは私にとって衝撃的だった。男爵令嬢と貴族としての身分は一番下かもしれないが、令嬢の鏡と言われる程に優秀な方。公爵家の婚約者であったのもあるが、そのかなりの身分差があったとしても誰もが納得するぐらいには貫禄もあった。
誰にでも優しく、厳しく、公爵家の婚約者だからと傲慢になることもなく、自らの身分を弁えながらそれでいて高い身分の人の間違いをも言葉巧みに諭せるお人。令嬢の憧れとまで言われた人だからこそ浮気をする方なんて思いもしなかった。純潔を捧げてまで。
「驚きよね……でも、スカーレット様幸せそうだったんですって。公爵様も自分に至らぬところもあったからと互いに納得している婚約破棄みたいよ。それでも解消にすれば甘い判断に周りへの示しがつかないし、スカーレット様自身婚約破棄を望んでいたみたいだから公爵様からの婚約破棄として受け入れたみたい」
「スカーレット様ならもっとやり方もあった気がするけれど……」
「みんなそう言っていたわ。けど、たまたまそれを話していた令嬢の言葉に次期公爵様が直接言ったんですって……スカーレット様は元々公爵家に嫁ぐことを望んでいなかったと。それでも優秀なスカーレット様を迎えたいと公爵家が離さずにいたから起きたことだと。まあ、これは直接言われたのが私だから知っていることよ。噂では最初に言った噂に振り回されて追い詰められていった行き先が平民との浮気となっているわ。次期公爵様がスカーレット様への償いもあって訂正していくつもりらしいから、そのうち事実が噂となるかもしれないけれどね。公爵家の考えとは違うみたいだから、次期公爵様が自ら訂正していくしかないみたいなのだけどね」
「そうなの……」
ステイのことでそんな平民と恋に落ちた令嬢との噂すらちっとも知らなかった。最近はステイの浮気について考えることが多くて聞き逃していた可能性もあるだろうか?
令嬢として噂話は社交界にも必要なスキルともなるのに……遅れて知るなんてだめね。スカーレット様の不在から疑問をもって誰かに聞いてみるくらいはできただろうに。
もっと早くに冷めた愛に気づけば、無駄に時間を過ごしていなかったかな。
この噂をわざわざ伝えてくれたのはエイビィ様がステイとのことを察してか、せめて日々変わる情報の流れに遅れないよう気遣ってくれたのかもしれない。
それにしても浮気を肯定はどうあってもできないけど、身分関係なく今まであったものを捨ててまで愛を選べるスカーレット様は素直に羨ましいと思えた。
それは相手をそれだけ信じているからこそだと思えたから。
浮気はもう勘弁してほしいが、相手を信じて愛し愛される関係となれる日が私にも来るだろうか?そんなことをふと考えさせられた話だった。
とはいえ、その日はなんだか色々と疲れてしまったので翌日に持ち越すことに。
学園に行けば勘当されたステイを見かけなくなったが、わざわざ噂になるようなことはなかった。婚約破棄で令息を見なくなることがそれなりにあったので、自然と察してもらえるのだ。
それでもステイが浮気する前は相思相愛と言われていた私たちだから、心配の声をかけてくれる人もいた。今思えばステイばかり見て、私は友人たちとの関わりが今まで少なかった気もしたため、この機会に友人とより仲を深めていくのも悪くないかもしれない……なんてことを思う。
もちろん深めるのは友情であって他の何物でもない。相手は同姓だしね。
「そういえばマリアは知っているかしら?ご令嬢が噂に惑わされて平民と浮気した話を」
「令息………ではなく、ですか?」
そんなことを考えながら友人のエイビィ様と話していれば、令息方ではなく令嬢が浮気をしていたという話になり、驚く。今まで令息ばかりで令嬢で浮気をする方は聞かなかったから。
もしかしたらそんな噂が流れたから私の婚約破棄はより話の内容が薄れたのかもしれない。ある意味ありがたくはある。気持ちの整理がしやすくて。冷めた愛とはいえ、今までの楽しかった思い出もある中、気持ちの整理は大事だから。
「それがご令息は浮気はしてなかったようだけど、令息方の浮気が当たり前みたいな噂に惑わされた令嬢が勘違いで令息を問い詰め、していない令息は当然否定するも令嬢は噂に惑わされて信じられず、そこで令嬢に恋をした平民が慰めることで互いに愛が芽生えたようで………捧げてしまったんですって」
「まさか……」
「ええ、はしたないので小声で言わせていただくけれど……純潔を」
「まあ……っ」
浮気にしてもいい、してはいけないなんてものはなく、してはいけないが鉄則だが、それでも行き過ぎた浮気は当然ある。その噂の令嬢の場合自ら傷物となったのだから、これからの未来例え令息が許して結婚をしようと傷物令嬢として悲惨な未来しか見えない。
いっそ平民になった方が幸せな可能性すらあることをしたわけだ。婚約破棄をされ、勘当をされなかったにしても嫁ぎ先はろくなのがないだろう。
「でも救いなのかどうかはわからないけれど、令嬢は平民を愛しているようで平民もそれは同じ。だから、令嬢は自分に有責を受け入れて婚約破棄に応じたみたい。そして自ら平民になる道を選んだみたいよ」
「そうなると………それを狙っていたようにも思えますね」
「そうなのよ。元々男爵家の方で、平民とも近い距離感だったのもあって平民になることに躊躇いはなかったそうなの」
「男爵家の令嬢……?」
ふとしばらく見ていなくて体調でも崩したのだろうかと思った人がいた。
「ええ、マリアが考える人で合ってるわ。スカーレット様よ」
「ええっ!あの方が?」
それは私にとって衝撃的だった。男爵令嬢と貴族としての身分は一番下かもしれないが、令嬢の鏡と言われる程に優秀な方。公爵家の婚約者であったのもあるが、そのかなりの身分差があったとしても誰もが納得するぐらいには貫禄もあった。
誰にでも優しく、厳しく、公爵家の婚約者だからと傲慢になることもなく、自らの身分を弁えながらそれでいて高い身分の人の間違いをも言葉巧みに諭せるお人。令嬢の憧れとまで言われた人だからこそ浮気をする方なんて思いもしなかった。純潔を捧げてまで。
「驚きよね……でも、スカーレット様幸せそうだったんですって。公爵様も自分に至らぬところもあったからと互いに納得している婚約破棄みたいよ。それでも解消にすれば甘い判断に周りへの示しがつかないし、スカーレット様自身婚約破棄を望んでいたみたいだから公爵様からの婚約破棄として受け入れたみたい」
「スカーレット様ならもっとやり方もあった気がするけれど……」
「みんなそう言っていたわ。けど、たまたまそれを話していた令嬢の言葉に次期公爵様が直接言ったんですって……スカーレット様は元々公爵家に嫁ぐことを望んでいなかったと。それでも優秀なスカーレット様を迎えたいと公爵家が離さずにいたから起きたことだと。まあ、これは直接言われたのが私だから知っていることよ。噂では最初に言った噂に振り回されて追い詰められていった行き先が平民との浮気となっているわ。次期公爵様がスカーレット様への償いもあって訂正していくつもりらしいから、そのうち事実が噂となるかもしれないけれどね。公爵家の考えとは違うみたいだから、次期公爵様が自ら訂正していくしかないみたいなのだけどね」
「そうなの……」
ステイのことでそんな平民と恋に落ちた令嬢との噂すらちっとも知らなかった。最近はステイの浮気について考えることが多くて聞き逃していた可能性もあるだろうか?
令嬢として噂話は社交界にも必要なスキルともなるのに……遅れて知るなんてだめね。スカーレット様の不在から疑問をもって誰かに聞いてみるくらいはできただろうに。
もっと早くに冷めた愛に気づけば、無駄に時間を過ごしていなかったかな。
この噂をわざわざ伝えてくれたのはエイビィ様がステイとのことを察してか、せめて日々変わる情報の流れに遅れないよう気遣ってくれたのかもしれない。
それにしても浮気を肯定はどうあってもできないけど、身分関係なく今まであったものを捨ててまで愛を選べるスカーレット様は素直に羨ましいと思えた。
それは相手をそれだけ信じているからこそだと思えたから。
浮気はもう勘弁してほしいが、相手を信じて愛し愛される関係となれる日が私にも来るだろうか?そんなことをふと考えさせられた話だった。
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