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ああ、これで終わったんだな……。と思いはするものの、あまりスッキリとした気持ちにならないのはどことなくまだ気持ちが整理できてないからだろうか?
愛が冷めた……そういった自覚はあるのに。思ったよりも呆気なく終えたせいかもしれない。
「マリア、婚約破棄直後にする話でもないが今後必ず結婚する必要はない。ステイとは親友同士で縁を結びたかったのもあるが、二人が仲が良かったからというのもある。結婚が必要で婚約をしたわけではない。だからといってこの伯爵家の跡継ぎであるルトがする必要もない。子がいなければそれこそ養子をとればいいのだから」
「お父様……」
今回のことで婚約への拒否感を私が感じていることに、なんとなく父は感じとって私のためにわざわざそう言ってくれたのがわかる。愛が冷めたとはいえ、元々は愛した人。愛した婚約者に裏切られ続けた事実は変わらない。
だからこそ結婚を考えるとどうしてもそれが思い浮かんでしまう。また、裏切られ傷つく痛みを恐れて。
だからこそ父の言葉は今の私にとって救いとなる。
ちなみにルトとは兄のこと。兄は学園を卒業した身で未だに婚約者のひとりもいない。人並みにモテるけれど、自分の好みと真反対の人に好かれやすく、最悪ずっと独り身でもいいと言っているくらいには女性への興味が薄かったりする。
それもあって今回のステイの浮気は兄としてはその心理が理解できないもののようだ。まあ理解してほしいとはもちろん思わないが。とはいえ最低な裏切り行為であることがわからないわけではなく、父に任せてはいたけど、ずっと真顔でステイを見ていた。実は視線を背中越しにひしひし感じながらも黙っていたため、怒りを表情に出すより逆に怖かったのは秘密だ。
「……こうなれば私とマリアが結婚……」
「兄妹で結婚はできないぞ……」
「人間は不可能を可能に変える生き物……」
「さすがに禁断過ぎるからやめなさい」
「厳しい世の中だ」
私を励ましたかったのか、冗談か本気かわからない表情と声質で急に私と結婚なんて言い始めた兄に、父が呆れた様子で止める。普段しっかりしている兄はたまに………いや、ときどき抜けているところがあり、私たちが呆れるか驚く発言するところがあった。
元々不思議なところがあり、悪いことばかりではないが、困ることはたまにあるのが私の兄。本人に悪気はないし、跡継ぎとして支障が出るほどではないようだけれど。大丈夫なのかな?とたまに心配になるのは許してほしい。
「マリア、今後のことは後にするとして、私はあのバカの浮気相手を放置していいとは思えないわ」
そんな兄に続いて口を開いたのは母。あれだけ父に激怒していた母だが、婚約破棄については兄同様大人しく貴婦人としての佇まいを崩すことなく父に任せていた。目は笑っているはずもなかったけれど。
そう思うとあの中でよくステイは反論なんてしようと思ったなと別の意味で感心する。………とまあ、今はそれよりも母の言う通り浮気相手についても考えなくては。
ステイとの婚約破棄はそもそも浮気相手が原因なのだから。二度目まではキス止まりの浮気と調べはついているけど、三度目はあからさまなのもあったが、元々気にしていた親の件もあり調査していない。
なのでどこまでの浮気をしていたかの判断がついていない。とはいえ、正直性行為すら及ぶ浮気に発展していてもなんら不思議ではない。元々の浮気が当たり前みたいなのが高等部で広がったのは、子息たちが性欲による興味からではないかと令嬢たちの中では言われていたから。
貴族は平民と違い、婚約者がいても結婚するまでは清い付き合いが当たり前で、性行為は結婚式をあげ初夜を済ませてからとされている。
でもだからといって性行為に興味がない子息ばかりではない。貴族を襲えば家同士の争いで大問題になるのは当然だが、平民相手なら?そう考えた人が少なくなかったのだろう。
令嬢は初夜まで処女を守り通すことをよしとされていたため、平民の男までその餌食にならなかったのはある意味救いだったかもしれない。子息たちほどではなくても性に興味がひそかにある令嬢もいないとは言えないから。
まあ、平民の女性が餌食になったと言うよりも確実な貴族入りを目指して自らなりにいったものばかりだろうけれど。
今回貴族と一緒の学園生活はあくまで試しであり、貴族になれるかどうかはわからないものだから、欲深く焦った平民ほど貴族を誘惑しようとしていたのが目についてはいたから。
でなければ婚約者略奪宣言なんて言葉は生まれなかっただろう。まあ貴族が平民を脅してとなればまた別問題とはなっただろうけど。
何はともあれ、母の言う通り例え国から選ばれた優秀な平民で成人がまだだったとしても、罪はしっかり償わせるべきだろう。みんながやってるから………ではなく、当然のこととして。
「まずはわかっている人物から順に罪を問いただし、償わせようかと思います」
「よく言ったわ。男同士はあなたに任せたのだから、女同士のことは私に任せてくれるわよね?あなた」
「もちろんだ。しかし、手伝いぐらいはさせてくれ」
「ええ」
「私だけすることがない……。マリアのために何かできることは………今日から女になればいいのか?」
「ルト、変なことを言ってないでマリアの力になりたいなら、貴方は父の手伝いをしなさい」
「はい」
兄が変な方向にいかないよう母は釘をさしながらも、婚約破棄の件では何もできなかったことがよほど嫌だったのか、私よりやる気満々の普段から父より厳しい母を見て、自業自得とはいえ浮気相手の女性たちに同情する私がいたのだった。
もちろん庇う気はさらさらないけれど。
愛が冷めた……そういった自覚はあるのに。思ったよりも呆気なく終えたせいかもしれない。
「マリア、婚約破棄直後にする話でもないが今後必ず結婚する必要はない。ステイとは親友同士で縁を結びたかったのもあるが、二人が仲が良かったからというのもある。結婚が必要で婚約をしたわけではない。だからといってこの伯爵家の跡継ぎであるルトがする必要もない。子がいなければそれこそ養子をとればいいのだから」
「お父様……」
今回のことで婚約への拒否感を私が感じていることに、なんとなく父は感じとって私のためにわざわざそう言ってくれたのがわかる。愛が冷めたとはいえ、元々は愛した人。愛した婚約者に裏切られ続けた事実は変わらない。
だからこそ結婚を考えるとどうしてもそれが思い浮かんでしまう。また、裏切られ傷つく痛みを恐れて。
だからこそ父の言葉は今の私にとって救いとなる。
ちなみにルトとは兄のこと。兄は学園を卒業した身で未だに婚約者のひとりもいない。人並みにモテるけれど、自分の好みと真反対の人に好かれやすく、最悪ずっと独り身でもいいと言っているくらいには女性への興味が薄かったりする。
それもあって今回のステイの浮気は兄としてはその心理が理解できないもののようだ。まあ理解してほしいとはもちろん思わないが。とはいえ最低な裏切り行為であることがわからないわけではなく、父に任せてはいたけど、ずっと真顔でステイを見ていた。実は視線を背中越しにひしひし感じながらも黙っていたため、怒りを表情に出すより逆に怖かったのは秘密だ。
「……こうなれば私とマリアが結婚……」
「兄妹で結婚はできないぞ……」
「人間は不可能を可能に変える生き物……」
「さすがに禁断過ぎるからやめなさい」
「厳しい世の中だ」
私を励ましたかったのか、冗談か本気かわからない表情と声質で急に私と結婚なんて言い始めた兄に、父が呆れた様子で止める。普段しっかりしている兄はたまに………いや、ときどき抜けているところがあり、私たちが呆れるか驚く発言するところがあった。
元々不思議なところがあり、悪いことばかりではないが、困ることはたまにあるのが私の兄。本人に悪気はないし、跡継ぎとして支障が出るほどではないようだけれど。大丈夫なのかな?とたまに心配になるのは許してほしい。
「マリア、今後のことは後にするとして、私はあのバカの浮気相手を放置していいとは思えないわ」
そんな兄に続いて口を開いたのは母。あれだけ父に激怒していた母だが、婚約破棄については兄同様大人しく貴婦人としての佇まいを崩すことなく父に任せていた。目は笑っているはずもなかったけれど。
そう思うとあの中でよくステイは反論なんてしようと思ったなと別の意味で感心する。………とまあ、今はそれよりも母の言う通り浮気相手についても考えなくては。
ステイとの婚約破棄はそもそも浮気相手が原因なのだから。二度目まではキス止まりの浮気と調べはついているけど、三度目はあからさまなのもあったが、元々気にしていた親の件もあり調査していない。
なのでどこまでの浮気をしていたかの判断がついていない。とはいえ、正直性行為すら及ぶ浮気に発展していてもなんら不思議ではない。元々の浮気が当たり前みたいなのが高等部で広がったのは、子息たちが性欲による興味からではないかと令嬢たちの中では言われていたから。
貴族は平民と違い、婚約者がいても結婚するまでは清い付き合いが当たり前で、性行為は結婚式をあげ初夜を済ませてからとされている。
でもだからといって性行為に興味がない子息ばかりではない。貴族を襲えば家同士の争いで大問題になるのは当然だが、平民相手なら?そう考えた人が少なくなかったのだろう。
令嬢は初夜まで処女を守り通すことをよしとされていたため、平民の男までその餌食にならなかったのはある意味救いだったかもしれない。子息たちほどではなくても性に興味がひそかにある令嬢もいないとは言えないから。
まあ、平民の女性が餌食になったと言うよりも確実な貴族入りを目指して自らなりにいったものばかりだろうけれど。
今回貴族と一緒の学園生活はあくまで試しであり、貴族になれるかどうかはわからないものだから、欲深く焦った平民ほど貴族を誘惑しようとしていたのが目についてはいたから。
でなければ婚約者略奪宣言なんて言葉は生まれなかっただろう。まあ貴族が平民を脅してとなればまた別問題とはなっただろうけど。
何はともあれ、母の言う通り例え国から選ばれた優秀な平民で成人がまだだったとしても、罪はしっかり償わせるべきだろう。みんながやってるから………ではなく、当然のこととして。
「まずはわかっている人物から順に罪を問いただし、償わせようかと思います」
「よく言ったわ。男同士はあなたに任せたのだから、女同士のことは私に任せてくれるわよね?あなた」
「もちろんだ。しかし、手伝いぐらいはさせてくれ」
「ええ」
「私だけすることがない……。マリアのために何かできることは………今日から女になればいいのか?」
「ルト、変なことを言ってないでマリアの力になりたいなら、貴方は父の手伝いをしなさい」
「はい」
兄が変な方向にいかないよう母は釘をさしながらも、婚約破棄の件では何もできなかったことがよほど嫌だったのか、私よりやる気満々の普段から父より厳しい母を見て、自業自得とはいえ浮気相手の女性たちに同情する私がいたのだった。
もちろん庇う気はさらさらないけれど。
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