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5ーステイ視点ー

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こんなはずじゃなかった。

ただ僕はマリアの愛を確かめたかっただけなのに。そのやり方のせいでマリアとの未来が消える結果となった。

泣いて言葉が発せないうちに婚約破棄は進められ、父と母に両側から引っ張られ、自分の家に帰宅した今でもこれが現実であることを受け入れられない。

そんな僕に父は冷静にこれからのことを話し出す。

「ステイ……ロック家は有責行為がこちらにあるとして、レブラント家の言い分を全て受け入れると言った。この中にステイの勘当も入っている」

「勘当………」

そこまでされるほどにマリアを傷つけていたのか……そう思うとまだ可能性があるんじゃないかと思えた。僕の浮気行為に傷つくほどの愛がまだあるからこその罰だと思えたから。

別に貴族じゃなくてもいい。マリアと平民の暮らしをするのも悪くないかもしれない。マリアさえいれば僕はそれだけで僕は幸せだから。

「慰謝料もステイに……とある。書かれている金額に加算してロック家からも支払うつもりだが、あくまで加算してだからステイの慰謝料をロック家が肩代わりすることはない」

「………」

父が書かれた金額を僕に見せる。貴族からしても膨大な金額。それはつまり平民になる僕にとって返すのにどれだけかかるかもわからないということ。それでも努力してよい職場につけたならば早くても10年ぐらいで返せるかもしれない。高給取りの職場ならだが。

この金額を返済すればマリアは許してくれるんだろうか?頑張ったねとまた僕と一緒にいてくれるつもりなのかもしれない。ああ、それならマリアと暮らすための資金もしっかり用意してから迎えにいかないと。

「ステイ、聞いているのか?」

「はい、聞いています。大丈夫、必ず慰謝料は払いきります」

「ならいいが……続きを話す」

父は怪訝そうな様子でこちらを見たが、そのまま話の続きを開始する。きっとこれから辛い年月になるだろう。でもこれは僕の罪。マリアが泣いて叱ってくれることで僕を愛してくれているんだとより実感できて酔いしれてしまったことで調子にのった僕への罰。

今思えばそれに値する僕からの愛をマリアには伝えられてなかったのかもしれない。なら、次は僕が愛を示す番だ。

だってマリアもみんながやってるからそれで婚約破棄をしたんだ。マリアの言う通り、僕もみんながやってるからそんな愛を確かめる行為をしてしまった。でもここまで傷つけるつもりはなかったんだ。

ただ、マリアは誰にでも優しいから、僕だけを愛していると実感できる何かがほしかっただけなのに………。

「……も忘れずに。それと1カ月だけ住処を用意してくれているそうだ。家賃を払い続ければ住み続けることもできる。1ヶ月目は別の借金として慰謝料の上乗せであることは忘れるな。1ヶ月以内に働きどころを見つけられないなら家なしになる覚悟もしておけ」

何か聞き逃した気もするが僕のすることは変わらない。家なしになればそれこそマリアに不自由をさせてしまう。そんなことにならないようにしっかり働きどころを見つけなければ。

「場所はここだ。食料は一週間分、これも家賃と同じだ。一週間以降飢えたくなければ死ぬ気で仕事を探すんだな。婚約破棄がショックだからと休む暇はないぞ。待遇としては優しいくらいだ。だからこそ私は慈悲をくれてやる気はない。伝えるべきことは伝えた。この地図だけもって今すぐ出ていけ」

「はい……」

住処まで歩きでいくことになりそうだ。見る限りマリアと偶然的に会えそうにもない場所なのは間違いない。

着くまでに1週間以上かかるかもしれない………が、これもまた僕への罰なのだろう。罰が辛ければ辛いほどマリアが僕を愛しているのだと思えばそれだけで頑張れる。

「ステイ……さようなら。もしまた愛する人を見つけられたなら浮気なんて絶対にしないで。反省と後悔をしっかり見せてほしいわ……二度と会えないとしてもね」

「………お世話になりました」

愛する人は見つかっている。マリア以外にありえない。母は僕のマリアへの愛を疑っているから慰謝料すら返済できないと思っているのだろう。

だけど僕はどう足掻いてでも慰謝料を払いきってマリアを迎えにいくんだ。

この時の僕はそんな未来を思い描いていた。父の言っていた一文を聞き逃したばかりに。
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