5 / 42
5ーステイ視点ー
しおりを挟む
こんなはずじゃなかった。
ただ僕はマリアの愛を確かめたかっただけなのに。そのやり方のせいでマリアとの未来が消える結果となった。
泣いて言葉が発せないうちに婚約破棄は進められ、父と母に両側から引っ張られ、自分の家に帰宅した今でもこれが現実であることを受け入れられない。
そんな僕に父は冷静にこれからのことを話し出す。
「ステイ……ロック家は有責行為がこちらにあるとして、レブラント家の言い分を全て受け入れると言った。この中にステイの勘当も入っている」
「勘当………」
そこまでされるほどにマリアを傷つけていたのか……そう思うとまだ可能性があるんじゃないかと思えた。僕の浮気行為に傷つくほどの愛がまだあるからこその罰だと思えたから。
別に貴族じゃなくてもいい。マリアと平民の暮らしをするのも悪くないかもしれない。マリアさえいれば僕はそれだけで僕は幸せだから。
「慰謝料もステイに……とある。書かれている金額に加算してロック家からも支払うつもりだが、あくまで加算してだからステイの慰謝料をロック家が肩代わりすることはない」
「………」
父が書かれた金額を僕に見せる。貴族からしても膨大な金額。それはつまり平民になる僕にとって返すのにどれだけかかるかもわからないということ。それでも努力してよい職場につけたならば早くても10年ぐらいで返せるかもしれない。高給取りの職場ならだが。
この金額を返済すればマリアは許してくれるんだろうか?頑張ったねとまた僕と一緒にいてくれるつもりなのかもしれない。ああ、それならマリアと暮らすための資金もしっかり用意してから迎えにいかないと。
「ステイ、聞いているのか?」
「はい、聞いています。大丈夫、必ず慰謝料は払いきります」
「ならいいが……続きを話す」
父は怪訝そうな様子でこちらを見たが、そのまま話の続きを開始する。きっとこれから辛い年月になるだろう。でもこれは僕の罪。マリアが泣いて叱ってくれることで僕を愛してくれているんだとより実感できて酔いしれてしまったことで調子にのった僕への罰。
今思えばそれに値する僕からの愛をマリアには伝えられてなかったのかもしれない。なら、次は僕が愛を示す番だ。
だってマリアもみんながやってるからそれで婚約破棄をしたんだ。マリアの言う通り、僕もみんながやってるからそんな愛を確かめる行為をしてしまった。でもここまで傷つけるつもりはなかったんだ。
ただ、マリアは誰にでも優しいから、僕だけを愛していると実感できる何かがほしかっただけなのに………。
「……も忘れずに。それと1カ月だけ住処を用意してくれているそうだ。家賃を払い続ければ住み続けることもできる。1ヶ月目は別の借金として慰謝料の上乗せであることは忘れるな。1ヶ月以内に働きどころを見つけられないなら家なしになる覚悟もしておけ」
何か聞き逃した気もするが僕のすることは変わらない。家なしになればそれこそマリアに不自由をさせてしまう。そんなことにならないようにしっかり働きどころを見つけなければ。
「場所はここだ。食料は一週間分、これも家賃と同じだ。一週間以降飢えたくなければ死ぬ気で仕事を探すんだな。婚約破棄がショックだからと休む暇はないぞ。待遇としては優しいくらいだ。だからこそ私は慈悲をくれてやる気はない。伝えるべきことは伝えた。この地図だけもって今すぐ出ていけ」
「はい……」
住処まで歩きでいくことになりそうだ。見る限りマリアと偶然的に会えそうにもない場所なのは間違いない。
着くまでに1週間以上かかるかもしれない………が、これもまた僕への罰なのだろう。罰が辛ければ辛いほどマリアが僕を愛しているのだと思えばそれだけで頑張れる。
「ステイ……さようなら。もしまた愛する人を見つけられたなら浮気なんて絶対にしないで。反省と後悔をしっかり見せてほしいわ……二度と会えないとしてもね」
「………お世話になりました」
愛する人は見つかっている。マリア以外にありえない。母は僕のマリアへの愛を疑っているから慰謝料すら返済できないと思っているのだろう。
だけど僕はどう足掻いてでも慰謝料を払いきってマリアを迎えにいくんだ。
この時の僕はそんな未来を思い描いていた。父の言っていた一文を聞き逃したばかりに。
ただ僕はマリアの愛を確かめたかっただけなのに。そのやり方のせいでマリアとの未来が消える結果となった。
泣いて言葉が発せないうちに婚約破棄は進められ、父と母に両側から引っ張られ、自分の家に帰宅した今でもこれが現実であることを受け入れられない。
そんな僕に父は冷静にこれからのことを話し出す。
「ステイ……ロック家は有責行為がこちらにあるとして、レブラント家の言い分を全て受け入れると言った。この中にステイの勘当も入っている」
「勘当………」
そこまでされるほどにマリアを傷つけていたのか……そう思うとまだ可能性があるんじゃないかと思えた。僕の浮気行為に傷つくほどの愛がまだあるからこその罰だと思えたから。
別に貴族じゃなくてもいい。マリアと平民の暮らしをするのも悪くないかもしれない。マリアさえいれば僕はそれだけで僕は幸せだから。
「慰謝料もステイに……とある。書かれている金額に加算してロック家からも支払うつもりだが、あくまで加算してだからステイの慰謝料をロック家が肩代わりすることはない」
「………」
父が書かれた金額を僕に見せる。貴族からしても膨大な金額。それはつまり平民になる僕にとって返すのにどれだけかかるかもわからないということ。それでも努力してよい職場につけたならば早くても10年ぐらいで返せるかもしれない。高給取りの職場ならだが。
この金額を返済すればマリアは許してくれるんだろうか?頑張ったねとまた僕と一緒にいてくれるつもりなのかもしれない。ああ、それならマリアと暮らすための資金もしっかり用意してから迎えにいかないと。
「ステイ、聞いているのか?」
「はい、聞いています。大丈夫、必ず慰謝料は払いきります」
「ならいいが……続きを話す」
父は怪訝そうな様子でこちらを見たが、そのまま話の続きを開始する。きっとこれから辛い年月になるだろう。でもこれは僕の罪。マリアが泣いて叱ってくれることで僕を愛してくれているんだとより実感できて酔いしれてしまったことで調子にのった僕への罰。
今思えばそれに値する僕からの愛をマリアには伝えられてなかったのかもしれない。なら、次は僕が愛を示す番だ。
だってマリアもみんながやってるからそれで婚約破棄をしたんだ。マリアの言う通り、僕もみんながやってるからそんな愛を確かめる行為をしてしまった。でもここまで傷つけるつもりはなかったんだ。
ただ、マリアは誰にでも優しいから、僕だけを愛していると実感できる何かがほしかっただけなのに………。
「……も忘れずに。それと1カ月だけ住処を用意してくれているそうだ。家賃を払い続ければ住み続けることもできる。1ヶ月目は別の借金として慰謝料の上乗せであることは忘れるな。1ヶ月以内に働きどころを見つけられないなら家なしになる覚悟もしておけ」
何か聞き逃した気もするが僕のすることは変わらない。家なしになればそれこそマリアに不自由をさせてしまう。そんなことにならないようにしっかり働きどころを見つけなければ。
「場所はここだ。食料は一週間分、これも家賃と同じだ。一週間以降飢えたくなければ死ぬ気で仕事を探すんだな。婚約破棄がショックだからと休む暇はないぞ。待遇としては優しいくらいだ。だからこそ私は慈悲をくれてやる気はない。伝えるべきことは伝えた。この地図だけもって今すぐ出ていけ」
「はい……」
住処まで歩きでいくことになりそうだ。見る限りマリアと偶然的に会えそうにもない場所なのは間違いない。
着くまでに1週間以上かかるかもしれない………が、これもまた僕への罰なのだろう。罰が辛ければ辛いほどマリアが僕を愛しているのだと思えばそれだけで頑張れる。
「ステイ……さようなら。もしまた愛する人を見つけられたなら浮気なんて絶対にしないで。反省と後悔をしっかり見せてほしいわ……二度と会えないとしてもね」
「………お世話になりました」
愛する人は見つかっている。マリア以外にありえない。母は僕のマリアへの愛を疑っているから慰謝料すら返済できないと思っているのだろう。
だけど僕はどう足掻いてでも慰謝料を払いきってマリアを迎えにいくんだ。
この時の僕はそんな未来を思い描いていた。父の言っていた一文を聞き逃したばかりに。
5
お気に入りに追加
1,961
あなたにおすすめの小説
(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?
青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。
けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの?
中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。
婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。
久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」
煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。
その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。
だったら良いでしょう。
私が綺麗に断罪して魅せますわ!
令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?
嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。
要らない、と申しましたが? 〜私を悪役令嬢にしたいならお好きにどうぞ?〜
あげは
恋愛
アリストラ国、侯爵令嬢。
フィオラ・ドロッセルが私の名前です。
王立学園に在籍する、十六歳でございます。
このお話についてですが、悪役令嬢なるものがいないこの時代、私の周りの方々は、どうやら私をそのポジションに据えたいらしいのです。
我が婚約者のクズ男といい、ピンクの小娘といい…、あの元クズインといい、本当に勘弁していただけるかしら?
と言うか、陛下!どう言う事ですの!
ーーーーー
※結末は決めてますが、執筆中です。
※誤字脱字あるかと。
※話し言葉多め等、フランクに書いてます。
読みにくい場合は申し訳ないです。
※なるべく書き上げたいですが、、、(~_~;)
以上、許せましたらご覧ください笑
(完結)私が貴方から卒業する時
青空一夏
恋愛
私はペシオ公爵家のソレンヌ。ランディ・ヴァレリアン第2王子は私の婚約者だ。彼に幼い頃慰めてもらった思い出がある私はずっと恋をしていたわ。
だから、ランディ様に相応しくなれるよう努力してきたの。でもね、彼は・・・・・・
※なんちゃって西洋風異世界。現代的な表現や機器、お料理などでてくる可能性あり。史実には全く基づいておりません。
婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?
鶯埜 餡
恋愛
バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。
今ですか?
めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?
その言葉はそのまま返されたもの
基本二度寝
恋愛
己の人生は既に決まっている。
親の望む令嬢を伴侶に迎え、子を成し、後継者を育てる。
ただそれだけのつまらぬ人生。
ならば、結婚までは好きに過ごしていいだろう?と、思った。
侯爵子息アリストには幼馴染がいる。
幼馴染が、出産に耐えられるほど身体が丈夫であったならアリストは彼女を伴侶にしたかった。
可愛らしく、淑やかな幼馴染が愛おしい。
それが叶うなら子がなくても、と思うのだが、父はそれを認めない。
父の選んだ伯爵令嬢が婚約者になった。
幼馴染のような愛らしさも、優しさもない。
平凡な容姿。口うるさい貴族令嬢。
うんざりだ。
幼馴染はずっと屋敷の中で育てられた為、外の事を知らない。
彼女のために、華やかな舞踏会を見せたかった。
比較的若い者があつまるような、気楽なものならば、多少の粗相も多目に見てもらえるだろう。
アリストは幼馴染のテイラーに己の色のドレスを贈り夜会に出席した。
まさか、自分のエスコートもなしにアリストの婚約者が参加しているとは露ほどにも思わず…。
いつまでも甘くないから
朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。
結婚を前提として紹介であることは明白だった。
しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。
この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。
目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる