みんなもやってるから浮気ですか?なら、みんながやってるので婚約破棄いたしますね

荷居人(にいと)

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「マリアがこんやくしゃでよかった!」

「うん、わたしもよ!ステイ」

私たちは政略結婚………ではなく、親同士が仲がよく結ばれた婚約。互いに仲もよく、婚約に不満はなかったし、互いの初恋もまた互いだったから私は幸せでいっぱいだった。

このままステイと仲を深めて幸せな結婚生活を……なんて何度も考えたこと。

だけど現実は全く反対のものだった。

運命の分かれ目は、学園の高等部に入ったとき。この時期も悪かったのだろう。貴族の子供が減り、優秀な平民を育て、貴族の一員とする方針が決められ、試しにと教育をした平民を高等部なら国の考えを理解できる年頃ということで何人も入れられた。

そこまではまだよかった。実際貴族の令嬢、令息も貴族減少を防ぐためのことを理解をし、平民に理解できないことを教え、平民の暮らしについて知ることで貴族たちもまた自分達の領地を考えるきっかけとなったから。

しかし、互いに仲を深めるからこそ身分への境界線が揺らぎ、平民は欲を持ち、貴族はその平民の欲をかぎとり、利用できるのではと拗らせるきっかけを作ることとなった。

そうしてできたのが浮気を正当化させるような遊び。浮気をすることで婚約者の愛を確かめるなんてことを言い、その裏は自分の性欲の捌け口をしたいだけ。

嫌がる平民にはしない。しかし、受け入れた平民には将来を約束する。もしくは、金銭のやりとり。

誰が始めたかなんてわからない。気がつけば男が浮気するのは当たり前のことだと傲慢な令息が増え、泣く令嬢は後をたたず。それにステイは仲間入りしていた。

最初の一回目は平民と浮気する令息が増えたという噂から、ステイは違うはずと疑う罪悪感を拭うために調べたこと。

しかし、それは疑いを明らかにしただけで私は信じられない思いでいっぱいだった。

優しくて、誠実で、一途に私を見てくれていた彼がなぜと。

私はステイを泣きながら責めた。

「何故ですか!?私という婚約者がありながら浮気など………!」

「すまない!みんながしていることだからと断れなくて………愛してるのは君だけなんだ!」

あまりに不誠実な行い。断れる、断れないの話ではないことを彼はわかっているのだろうか?

「愛してるのが私だけなら浮気の必要などあるのですか!?ないでしょう!」

「それは……最近君は友人との時間が多くて寂しくて………愛されているか不安になったんだ。それでこれなら確かめられるって………つい」

その時私は確かにステイとの時間があまりとれていなかった。浮気をされた令嬢の中には私の友人も数多くいて慰めたり励ましたりと時間をとられていたから。

浮気したステイが悪くないわけではないけれど、私もステイの気持ちを考えてあげられなかったかもしれない。そう考え直して私はステイとの時間をもっととるように約束してその日は泣きながらも反省し続けるステイを許すことにした。

それからはステイとの時間を多くとり、ステイの浮気を忘れられそうになった頃。ステイは二度目の浮気をした。

気づいたのはステイが予定があると何度も私の誘いを断り、私を誘わなくなって怪しんだためだ。高等部になるとすることが増えるのはよくあること。だけど、あからさまにそれは増えすぎた。

結果、その浮気かもしれないと怪しんだことは的中することになる。

「私との時間を断ったのはステイでしょう?なのに何故!?」

「みんながしてることだから僕だけがしないわけにはいかないだろ?マリアとの時間を断ったのは悪かったって思ってる。でも、付き合いが悪いって言われてさ……。貴族の嗜みみたいなものだ。でも、愛してるのはマリアだけだからさ」

二度目は涙をせずとも責めた。裏切られた悲しみと怒りと色んな思いが渦巻く中で放たれた言い訳は訳のわからないものだった。

みんながしているから?貴族の嗜み?意味がわからない。聞き分けてくれとばかりに困った顔をするステイが何よりも。

「でも………傷ついたの。ステイだって私が浮気したらどんな気持ち?」

「それは……嫌だ。その男を殺したくなる……」

ああ、よかったと思ってしまった。私の浮気もみんながしてるなら仕方ないなんて言われたらもうどうすればいいかわからなかったから。

「なら、もう二度としないで………」

「うん、ごめん……マリア」

怒りか、悲しみか、震える手を隠すようにして私はステイにそう言った。ステイは困った様子からちゃんと反省するように唇を噛み締めていたから、次こそは大丈夫だと私は……………信じていたかったのに。
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