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狂喜2~ナイト視点~
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『イルク……生きていたら必ずいいことがありますからね』
目が覚めたら赤ん坊で知らない世界だから混乱こそしたが俺を抱くのは母なのだろう。本能的にわかって安心している自分がいた。そしてイルクと言う名に思い出すのはエンド様に仕えたただひとりの裏切り従者。
最悪な名をつけられたものだと苛立つ。だが、次の母の言葉で自分がゲームのイルクだと思い知るのだ。
『イルク……どうか覚えていて、あなたは………』
『!』
この言葉はゲームのイルクが母を失うまで伝えられた言葉であり、母を失ったショックで忘れてしまうという重大イベントとして後に語られる言葉そのまま。
あの憎たらしいイルクになったと思うと複雑だが、ゲーム通りならエンド様に拾われる幸運キャラでエンド様のためならなんでもしたいという俺にとって実に都合のいいキャラ……いや、人物だった。
残念ながらいくらわかってはいても母が死ぬのは確定だ。衰弱死なので盗んで少々の食糧をとるのに精一杯だった子供の俺にはどうしようもない。何よりスラムでは毎日が過酷な生活。休んで看病なんてことはできもしないし、看病に必要なものすらない。育ててくれた恩はあれど、本来のイルクみたく記憶を失うほどのショックはなかった。
俺にはエンド様がいればそれでいいのだから。
しかし母が死んで外に出れば思わぬ人物と出会うことになった。ここはゲームとしてイルクはしばらく母の死に耐えきれず気を失うなどしていただけに微妙な食い違いが起きたのだろう。本来なら幼いイルクが意識あるときに会うことはなかった人物。
そしてエンド様の最後の心のよりどころとなり、命を散らしてエンド様を守りながら心まで守れずに絶望を与える存在。エンド様のためにも死なせてはならない人物だ。まだ出会っていなくとも。
『どうも…………様』
『! 何故それを』
にっこりと子供らしい笑みができているだろうか?笑ってやれば警戒するような目で見られてしまった。子供相手だというのにそこまで警戒しなくてもと思わなくもない。でも、まあ、彼の秘密を知らない子供が知っていればそうなるか。
『俺はこれから近い内にエンド様に会います。きっと俺が気を失う頃にでも拾われるでしょう。その時はエンド様のお手伝いをお願いします』
『そ、それは構わんが……お前さんなにもんだ?』
『そうだな……。これを見てもらえればわかりますか?□□□□□□□!』
『……!な、なんだってあなた様のような方がスラムに?やり方次第じゃスラムなんてすぐ抜け出せるんじゃありませんか?』
あるものを見せれば態度が変わるその人物。確かにイルクである俺は□□へ行けばスラムで暮らすことはなくなるだろう。ゲームを知っている俺からすれば行った結果がどうなるかもわかっているのだし。
それにこの人物に頼めば行くのは簡単になるだろう。
『正直俺はエンド様以外どうでもいい。それにエンド様を幸せにしたい。それにお前も異論はないだろう?』
『……ああ、もちろんです。私めには無理でも貴方様なら……』
『やり遂げるさ。きっとそのためだけに俺は……』
イルクに生まれ変わったのだから。その日はエンド様に会える未来ににやけが止まらなかった。
だがその後はいつ会えるかわからないためひたすら生きるのに必死な日々を過ごし、理不尽な攻撃を時に耐え生き続けてようやく今日エンド様に拾われ、念願のこの世界での名前を頂いた。
イルクの名を呼ばれるなど嫉妬でおかしくなりそうだったため、イルクの名は最初から捨てる気でいた。必要なとき以外いらないと。例えこの世界の母から頂いた名とはいえ構わないだろう。俺がイルクになった時点で本来のイルクは消えたも同然なのだから。
俺は今日からナイト。エンド様の忠実なる僕であり、エンド様を未来に死をなくすために運命をねじ曲げる□□となる。
目が覚めたら赤ん坊で知らない世界だから混乱こそしたが俺を抱くのは母なのだろう。本能的にわかって安心している自分がいた。そしてイルクと言う名に思い出すのはエンド様に仕えたただひとりの裏切り従者。
最悪な名をつけられたものだと苛立つ。だが、次の母の言葉で自分がゲームのイルクだと思い知るのだ。
『イルク……どうか覚えていて、あなたは………』
『!』
この言葉はゲームのイルクが母を失うまで伝えられた言葉であり、母を失ったショックで忘れてしまうという重大イベントとして後に語られる言葉そのまま。
あの憎たらしいイルクになったと思うと複雑だが、ゲーム通りならエンド様に拾われる幸運キャラでエンド様のためならなんでもしたいという俺にとって実に都合のいいキャラ……いや、人物だった。
残念ながらいくらわかってはいても母が死ぬのは確定だ。衰弱死なので盗んで少々の食糧をとるのに精一杯だった子供の俺にはどうしようもない。何よりスラムでは毎日が過酷な生活。休んで看病なんてことはできもしないし、看病に必要なものすらない。育ててくれた恩はあれど、本来のイルクみたく記憶を失うほどのショックはなかった。
俺にはエンド様がいればそれでいいのだから。
しかし母が死んで外に出れば思わぬ人物と出会うことになった。ここはゲームとしてイルクはしばらく母の死に耐えきれず気を失うなどしていただけに微妙な食い違いが起きたのだろう。本来なら幼いイルクが意識あるときに会うことはなかった人物。
そしてエンド様の最後の心のよりどころとなり、命を散らしてエンド様を守りながら心まで守れずに絶望を与える存在。エンド様のためにも死なせてはならない人物だ。まだ出会っていなくとも。
『どうも…………様』
『! 何故それを』
にっこりと子供らしい笑みができているだろうか?笑ってやれば警戒するような目で見られてしまった。子供相手だというのにそこまで警戒しなくてもと思わなくもない。でも、まあ、彼の秘密を知らない子供が知っていればそうなるか。
『俺はこれから近い内にエンド様に会います。きっと俺が気を失う頃にでも拾われるでしょう。その時はエンド様のお手伝いをお願いします』
『そ、それは構わんが……お前さんなにもんだ?』
『そうだな……。これを見てもらえればわかりますか?□□□□□□□!』
『……!な、なんだってあなた様のような方がスラムに?やり方次第じゃスラムなんてすぐ抜け出せるんじゃありませんか?』
あるものを見せれば態度が変わるその人物。確かにイルクである俺は□□へ行けばスラムで暮らすことはなくなるだろう。ゲームを知っている俺からすれば行った結果がどうなるかもわかっているのだし。
それにこの人物に頼めば行くのは簡単になるだろう。
『正直俺はエンド様以外どうでもいい。それにエンド様を幸せにしたい。それにお前も異論はないだろう?』
『……ああ、もちろんです。私めには無理でも貴方様なら……』
『やり遂げるさ。きっとそのためだけに俺は……』
イルクに生まれ変わったのだから。その日はエンド様に会える未来ににやけが止まらなかった。
だがその後はいつ会えるかわからないためひたすら生きるのに必死な日々を過ごし、理不尽な攻撃を時に耐え生き続けてようやく今日エンド様に拾われ、念願のこの世界での名前を頂いた。
イルクの名を呼ばれるなど嫉妬でおかしくなりそうだったため、イルクの名は最初から捨てる気でいた。必要なとき以外いらないと。例えこの世界の母から頂いた名とはいえ構わないだろう。俺がイルクになった時点で本来のイルクは消えたも同然なのだから。
俺は今日からナイト。エンド様の忠実なる僕であり、エンド様を未来に死をなくすために運命をねじ曲げる□□となる。
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