泣かないで!~王子様は悪役令嬢に笑ってほしい~

荷居人(にいと)

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2章ー少年期ー

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「し、失礼しました……お話というのは息子のサンについてでして」

服に血をつけたままに話し始める次期宰相候補にその血が気になって話が聞きづらいなとは思いつつ、やっぱり息子についてかなんて予想通りの話にため息が出そうになる。側近候補から外したことを抗議しに来たのだろう。寧ろあれで候補に入れたことが謎なんだけど。

「わ、わた、私も……息子のセドルクについて、です………ぐすっ」

こっちはこっちで泣き始めてる筋肉だるま……じゃなく、次期騎士団長候補にどれだけメンタル弱いの?と未来で騎士団長は任せられないななんて考えをする。言うまでもなくメンタル弱い騎士団長ほど頼りないものはない。今は言わないけど。

「ななななんとか側近こぅげふっに戻していただけませんか?」

「え、無理です」

「ぐはっそ、そこをなんとか!」

「無理ですが」

「げふっげふぼらぁっ」

あまりに直球すぎて驚きはしたけど、いくら吐血しようとも考えを変える気はない。エリーナのためでもあるけど、それ以上にあれが側近になるのはおれが疲れる未来しか見えない。

「せ、セドルクを……」

「あ、無理です」

「ま、まだ……なにも言ってないのにぃ……ううっ」

世の中には見るに絶えない涙が存在するものだ。これがエリーナならおれはいいよ!って言ってしまいそうなものだけど、目の前のはいい大人で、筋肉だるま……鼻水は勘弁してねと寧ろ突き放したい。どちらにしても聞く価値もない話にもういいかと再び腰をあげようとした時だった。

「こぅほげふっにするだけで、いいんです!サンは身体が弱く、毎日こぅげふっごほっから外されたことを気に病んで血を吐いて日に日に青ざめて……」

その吐血は遺伝的なものなの?という疑問を抱きつつ、それを聞いてより候補から遠ざかっていってることに次期宰相候補は気づいてないだろう。身体が弱い側近がおれを支えられるとは思わない。ただでさえそれがなくても期待できないのに。寧ろこの人が次期宰相の候補とはいえなれているのが不思議なくらいだ。本当に実力だけはあるのだろう。それなりに。今の様子を見ていたら全てが直球すぎてそうは思えないけど。

「セドルクも毎日暗い様子で、見てられないんです……っ」

おれもあなたの涙が見るに絶えないです。と言いかけそうになってなんとか口を閉じる。余計見たくもない涙が増える気がして。寧ろあれだけ失礼な息子なら暗いぐらいがいいんじゃなんて思ってしまうおれは酷いだろうか?正直救済措置すらとりたくない。

というよりこれが面倒で父上はおれにこの二人を会わせたような気がしてきた。後で代わりにエリーナに会う時間をたっぷりもらうことにしよう。

「そういうことで、この話しはなかったことで!」

「「へ?」」

三度目の腰あげは止められそうになることもなく部屋から出ることができた。まあ後はなるようになることだろうと自己判断して。
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