泣かないで!~王子様は悪役令嬢に笑ってほしい~

荷居人(にいと)

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1章ー幼少期ー

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「ようやく着いた……長かったなぁ、なんか」

リーダーの人が疲れた様子で基地を眺めてから僕たちを連れて入っていく。基地はただの洞窟のような場所、少し奥に進めば松明で洞窟を照らす明かりが出てきた。

そしてその明かりと共に見覚えのある人影が。

「ひっひっひっどうやら無事に逃げられたようですね」

「……お前誰だよ!?」

「せんせい!」

まるで待ってましたとばかりにいたのは本物の先生で眼鏡はいつもの丸いぐるぐる眼鏡。やっぱり先生はこうでないと、ね!でもなんで誘拐犯の基地に先生がいるんだろう?

「ひひっ宰相を通して依頼をするように仕向けた本当の依頼人ですよ」

ん?つまりは先生が僕と父上を誘拐させたの?せ、先生悪い人になっちゃった!?

「なんだ……依頼人か……ってなると思うかぁ?ああ?なんで俺らの基地知ってんだ」

「ひっひっひっ相手も知らずして誘拐なんて危ないこと頼むわけないでしょう。きっちり調べてありますよ、グレイ・アーカー王子」

先生が悪い人に……!とひとりあたふたしていれば王子という言葉にん?となる。アーカーなんて王族いただろうかと。

「な……っなんのことだ」

「ひひっ隠しても無駄ですよ。既に亡き国アーカー国の王族唯一の生き残り、身長175センチ、体重65キロ、ウエスト………」

なるほど、既にない国なら僕が知らなくてもおかしくはないのかな。

「待て待て待て!んな情報必要か!?いや、どう調べた!?」

「ひっひっひっ私にかかればなんてことありません」

「せんせいはなんでもしってます!僕がなにもいわなくてもきょうなにをしていたかいつもいいあてるんですよ!」

「え、いや、それ……」

「ごほん!ひひっ知らなくともいいことはあります」

ここぞとばかりにえっへんと先生のことを自慢できたことに喜んでいれば、リーダーの人……グレイさんは何故か僕を可哀想な人のように見てくる。何か変なことを言っただろうかと首を傾げるも先生の咳払いでその理由を知ることはできなかった。

先生がそういうなら知らなくてもいいことなんだと僕は納得する。いつだって先生は正しいから。

「はぁ……知ってた上で俺たちに王族の誘拐を頼んだのか」

「ひひっまあ、目的もありましたしね。ピンク頭の少女をキリアス殿下は見ましたか?」

「え?ピンクの……あ、はい!」

そういえばあの変態さんから放してもらえてたのは見たけど、助けずに置いていっちゃったな。グレイさんに呼ばれて慌ててたせいもあるけど……。まあ、命の危険はないみたいだし、大丈夫かな?

「あれがエリーナ嬢の言う夢に出るヒロインだそうですよ?名をリリアーヌ・ミューズと言うみたいです」

「あれが……魔女ヒロイン!」

にしてもヒロインって名前じゃなかったんですね。

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