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1章ー幼少期ー

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「あれからは絶対逃げろ!捕まったらキリアス筆頭にあれより年下すべて犠牲になると思え!」

「いや、なんで縄とれてんの?なんで誘拐された側が仕切ってんの?ってか俺、絶対あれより年下なんだけどぉ!?」

縄がとれた後の父上は突如窓から顔を出し、指示をし出した。あの先生に似た人はよっぽど危ない人なんだろう。父上の叫びにリーダーの人が焦った様子でよりスピードをあげたようだ。馬車はガタガタいって気を抜けば舌を噛んでしまいそうなくらいに荒い運転。

「ひーっひっひっひっ愛でさせなさーい!ロリッ子ひとりじゃ私は満足できんのだぁ!」

「えぇぇぇんっこわいよぉ!ママぁ!」

そんなガタガタうるさい馬車の中でも聞こえる外からの叫び。とりあえず誰かしらあのピンクの女の子を助けてあげようとかはないんだろうか?

「ちちうえ、おんなのこはたすけないんですか?」

「キリアス、時に犠牲ひとつで大勢が助かるなら切り捨てるのも王の判断として必要だ」

「ほんねは?」

「あれはお前の先生じゃなきゃ太刀打ちできん。危ないやつだが、危険ではないし一時的なものだから今は逃げるのが先決だ」

「そうですか……おんなのこはかわいそうですが、エリーナじゃないならがまんしてもらうしかないということですね」

「いや、エリーナ嬢だった場合もだな……」

「だめです。エリーナだったら僕はみぶんをすてでもたすけます!」

好きな人ひとり守れずして僕は王になれるとは思わないから。それにエリーナを見捨てる判断をすればそれこそ僕はエリーナに自分を信じてほしいなんて二度と言えなくなる。

生半可の気持ちで魔女ヒロインに勝てるとは思わない。エリーナへの気持ちだけは何がなんでも僕は裏切りたくないんだ。

「うーん、うちの息子は本当に立派だなぁ」

「でもこんかいはエリーナじゃないのであのおんなのこにはがんばってもらいましょう!」

でも今の僕はまだまだ未熟者の自覚はある。だからエリーナが関わってないなら今回は父上の言う通りにすべきだろう。それに危険がないと父上が断言してくれたし、知り合いのような感じでもあるから多分大丈夫なんだろうし。

「潔いな……」

「せんせいがいってました!おんなのなみだはほとんどがうそのなみだなのだと!」

「いや、あれは本気の涙じゃないか……?」

父上が何か呟いたが何か石でもつまずいたのか馬車がガタンと大きく揺れた音でその呟きは全く聞こえなかった。そしてそれと同時に馬車は停止。外からはとたんに悲鳴が聞こえた。
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