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1章ー幼少期ー

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「おはなとのみものと……」

「ひっひっひっ」

お見舞いの品に何を持っていこうかと考えていれば背後から聞きなれた笑い声。授業以外での先生は急に現れることが多いので最初こそ何度も驚いたが、さすがにもう慣れていた。気がつけば背後にいるのが僕の自慢の先生だ。

「せんせい!僕……」

「ひっひっひっ事情はわかってますよ。先程床下から聞いて……ごほんごほん」

「せんせい、ごめんなさい。よくききとれなかったんですが……」

たまに先生はよく言葉が聞き取れないときがある。大抵その時は咳をする先生は聞き取れないことを悟って気遣ってくれているのかもしれない。

「ひひっ私の咳で聞こえづらかったかもしれませんね」

ね?優しい先生でしょ?僕も先生みたいにエリーナを気遣えていたら……なんてまた沈んでしまう。

「僕はだめなこです。だいじなエリーナのからだをきづかえませんでした」

きっと先生のことだから僕が何を言っているのかといつものように悟ってくれているのだろうと訳も話さず自分の思いを呟く。こういう甘えがいけないんだろうとは思いながらもいつも先生は僕のためになる教えをしてくれるから父上以上に頼ってしまう。

「ひっひっひっキリアス殿下、過信はいけませんな」

「……っ」

いつものように笑いながらそう指摘する先生。つまりは僕に先生を信用するなと頼りすぎるなということだろう。僕はぎゅっと唇を噛み締める。わかっていたのに、父上にもあんな啖呵を切ってすぐこれじゃあ確かに先生が呆れても仕方ない。

こんなんじゃエリーナにも……と益々暗くなる僕の思考だったが、ぽんぽんと大きな手が僕の頭を撫でる。

「ひっひっひっはき違えてはなりません。私は私を信用するなと言ったわけではありませんよ?私は大いに信用、信頼してくれて結構!私は友達もいなければキリアス殿下以外となると家族ともろくに会話ができぬコミ障……あれ、なんか涙が。いや!そうではなく、そういうことからつまりは、脅迫されるものもなく、キリアス殿下に対する忠誠心はずば抜けて一番を誇る自信もあります!私が言いたいのは自分のできる限度を超えてできていたはずと信じるのがよくないと言うのです!ひひっ」

まるで僕を励ますように、嘘偽りないものとわかるまっすぐな言葉は僕の心に響く。自分を信じるななんて先生くらいしか言わないだろう。こんな先生だから僕は誰よりも信じられるし、頼ってしまう。

「こんかいの僕からせいちょうするにはどうしたらいいですか?」

「ひっひっひっ知識をつければいいのです。今回の場合は医学ですね。相手を見てこういうときはこうした方がいいなど症状の例を学び、対処法を会得する。私、実は医師の免許もあるんで次回からは医学の勉強もしましょう!ひっひっひ」

「はい!」

僕の先生は教師で、騎士団長で、医師でもあるすごい人。さらに知らない先生の姿があっても先生なら納得できてしまいそうである。先生を目指せば父上みたいに立派な王様になれるだろうか?

「では、気持ちを持ち直したところでお見舞い行くんでしょう?ひひっ」

僕が気持ちを持ち直したのを感じた先生がさっきまで考えていたお見舞いへと思考が戻る。先生には何でもお見通しだ。

「せんせいもいくんですか?」

「ひっひっひっキリアス殿下の護衛も兼ねて行かせていただきます。私がいけば他の護衛はいりませんからね!ひひっ」

「ありがとうございます!」

僕が外に出るときは護衛する人を何人かつける必要があるため、それをお願いする時間がそれなりにかかる。だから先生一人でいいならその時間も短縮できるし、僕が何かしら間違いをしたら正してくれるだろうから安心だ。

こうしてようやく僕はエリーナのお見舞いの品を持ってレーヴェ家へ赴いた。
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