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1章ー幼少期ー

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「うぇ……っ」

【ちがうんです。わたし、ヒロインにひどいことしたいわけじゃなくて、ただ、わたし、しにたくないだけで】

ついヒロインを倒せばエリーナが死ぬことはないなんて考えちゃったけどそもそもが違った。そうだよね、ヒロインって子は別におとぎ話に出るような魔王とかではないわけで、そもそも僕がヒロインって子と仲良くならなければ済む話なんだよね。

ついついエリーナを泣かせる存在としてなんとなくヒロインって子がひっかかってしまっていた。だって、やっぱり僕が不貞なんてするとは思えないから。

「ヒロインってじつはまじょとかじゃないですか?」

そうなるとやはりヒロインとやらは物語によく出る悪い魔女なんじゃないだろうか?もし、僕が魔女のヒロインに僕がヒロインを好きになる魔法をかけられたとして、それを撃ち破れば、エリーナが可愛いことに嫉妬して毒りんごを持ってくる危ない子に違いない。

た、大変です!エリーナが危ないです!

「……っ?」

しかし、あわあわしだす僕にぽかんとしながら首を横に振るエリーナ。もしかしてエリーナは知らないのだろうか?時に物語は実話から生まれるということを。僕に勉強を教えてくれる先生が言ってたことだ。

「ヒロインはきっとエリーナがしらないだけでわるいまじょのかのうせいがあります!」

魔王はなくても魔女ならどの物語を見ても人間に似ているから可能性はある。

「………っう?」

【まほうはおとぎばなしです。ヒロインはみんながすきになるかわいいおんなのこですよ?】

なんてことだ……。みんなが好きになるなんてそれこそ普通の人間じゃありえない。先生が言ってた。ひとりとして世界中の人に好かれるなんてことはないと。必ず自分に無関心もしくは嫌う人はいるものだから、もし誰もに好かれる人物がいたらそれは人間じゃないって。

だから先生は決して友達はいないけどぼっちじゃないんだって言ってた。ちゃんとした人間すぎて友達ができないだけだと。ちゃんとした人間がよくわからないけど、とりあえず先生が言ってたんだからヒロインって子は明らかに人間じゃないと確信した。

「だいじょうぶですよ!エリーナはぜったいどくりんごからまもりますから!」

こうして僕がエリーナの未来のためにすることは決まった。魔女ヒロインの人を好きにさせる魔法を撃ち破る力を手に入れることと、エリーナに毒りんごから守ること。

打倒魔女ヒロイン!目標はエリーナの幸せな未来!

「そろそろ時間だ。よく話せたか?」

決意を胸に抱けばタイミングよく部屋を退室した大人たちが父上を先頭に戻ってきた。

「ちちうえ、僕はまじょをたおしてせかいをまもってエリーナをしあわせにします!」

「うーん……よくわからんが頑張れ……?」

「はい!ではエリーナ、またあしたあいましょう!きょうはごごからせんせいがくるんです!まじょヒロインのたおしかたきいておきますね!」

「???」

「あーやる気なのはいいが、あの先生のことはあまり真に受けるでないぞ?優秀ではあるが……っておい!キリアス!?」

こうしてはいられないと魔女の物語を読み直して自分でも対策を考えなければと最低限の挨拶と約束は取り付けて部屋を出る。父上の叱る声が聞こえたが、これも全て1秒でも早くエリーナに安心してもらうためなので許してもらいたい。

この時の僕は婚約者エリーナと会って気分があがりまくっていたのは言うまでもない。だからと言ってこの行動が間違っているとは全く思わなかったわけだが。なんせ、全ては好きな人のためなのだから。
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