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1章ー幼少期ー
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すんごく可愛い婚約者はすんごくじゃすまないぐらいに可愛くて一目見た瞬間から幼いながらにどきどきと胸が高鳴ったのがわかる。だけど、僕の婚約者はそうではなかったようで……。
「う……うえぇぇぇん」
僕を見た瞬間大声で泣き始めた。実は僕の顔も自覚がないだけで父上のように怖かったのだろうか?ドキドキとした高鳴りは身をひそめ、ショックを隠せない。寧ろ僕が泣きたい。
しかし、泣いてより幻滅される方が辛い。と頭は冷静なつもりが、急に泣かれたことで僕は慌ててしまっていたようで……
「え?え?どうしたの!?な、なかないで!」
そんな慰めにもならない言い方になり、自分の情けなさに内心項垂れる。いくら泣いた子の相手をした試しがなくてもこれはないと。
「エリーナ、泣くなら静かにと言っただろう?」
そんな僕を……いや泣き止まない娘を見かねてか婚約者の父親であるレーヴェ公爵家の当主ジルバス・レーヴェが僕の婚約者に語りかける。ジルバス公爵とは何度か会った試しはあったが……泣くなら静かにとは?泣く前提?と僕は余計に混乱した。
「常に泣いている子だが、あんなに大声をあげて泣くのは初めて見たな」
「僕はちちうえよりこわいかおだったんですか……?」
「キリアス……お主、私に色々失礼だぞ?また泣いてしまうぞ?」
そんな父上の言葉よりも、僕に対して大声で泣かれた事実に胸が痛む。何がいけなかったんだろうと。あんなに可愛い子に、婚約者でもある子に初対面の出会った瞬間から泣かれるなんて考えてもいなかったから。
「殿下、申し訳ありません。殿下は悪くないんです。ただ、娘は最近夢見が悪いようでして……」
「ゆめ?」
そこへ落ち込む僕に違うのだと言い始めるジルバス公爵に首を傾げる。夢が僕に何の関係があるのだろうと。
「娘は悪役令嬢に生まれてしまったと嘆いていまして……」
「あくやくれいじょうってなんです?」
物語でも聞いたことのない単語について問いかける。だって僕の婚約者は悪役令嬢なんて名前じゃないことぐらいわかっているから。
「悪いことをする令嬢のことを言っているみたいです。悪役の令嬢と言えばわかりやすいでしょうか?」
「なるほど、ものがたりのしゅじんこうのてきみたいなものですね」
「その解釈で間違いはないかと」
しかし、そうなるとやはり疑問が。どう見ても今だに泣き止まない僕の婚約者が悪役になれるとは思わない。寧ろ悪役にいじめられそうだ。もちろんそうなれば婚約者として僕が守るけれど。………僕が怖くて泣かれている場合はどう守ればいいのかは父上と一緒に考えてもらおう。
わからないことは恥ずかしがらずに大人から聞いたり、相談するように先生が言ってたのを思い出す。
「でもかのじょがそうなるようにはおもえません」
「ただの夢だと私も言ってはいるんですがね。どうやら殿下と婚約したら将来ヒロインというものに殿下をとられて婚約破棄され、自分は処刑されるのだと信じて疑わないのです」
「ぼく、ふていなんてしません!」
まさかの出会う前から不貞を疑われるという衝撃の事実にすぐ否定をした。ヒロインって人が誰かは知りませんが、こんな可愛い婚約者を放って他の子になびく気はさらさらない。
性格的なものを言っているならまだ出会ったばかりで何も言えないけど、知る努力はするつもりだし、あの子なら好きになる……なんてよくわからない自信すらある。
何より処刑なんて僕自身が許さない。
今だに泣く僕の婚約者にまずは不安を取り除くべきだと近づいて膝をつく。
「僕は、キリアス・ラドゥーンともうします。まだであったばかりだけど、ぜったいにきみをしあわせにするから!僕をしんじて!」
でも僕はどうあってもまだ子供だし、出会ったばかりだからこそ何の根拠もなく不安を取り除くなんて難しい。だからこそ彼女に信じてもらい、その信用に僕自身が答えることで少しずつ取り除けたらいいと思う。
「ひく……っう……っ」
こくりと頷く彼女にほっとする。しかし、彼女の涙が止まることはなく、泣きすぎて話せないのか予め想定されたかのように机にある紙とペンで彼女が泣きながら何かを伝えようとしてか慣れた手つきで書く。
「う……っう……っ」
【わたしはエリーナ・レーヴェともうします。いきなりないてすみません。けっしてでんかのかおがこわいわけじゃないんです。みらいが、こわいんです】
僕が顔を気にしていたことを聞かれていたようだ。なんとなく恥ずかしく思いながらもほっとする。顔が怖いと言われたとしてもそこばかりはどうしようもない部分だから。
「だいじょうぶです!みらいがこわいのわかります。僕もちちうえみたいにりっぱなおうさまになれるかいつもしんぱいですから!」
「……うう……っ」
あれ、そうじゃないんだけどみたいに泣きながら首を傾げられた。うう……僕にはまだ女心がわからないようです。
「あ、エリーナとよんでいいですか?僕はキリアスとよんでください!」
「ん……っ」
誤魔化したわけではないけれど、殿下呼びは寂しく感じたのでそう言えばこくりと頷くエリーナ。それだけの仕草がとても可愛いものだから先程までひそんでいたドキドキがまた戻ってきた。
「ちちうえ!エリーナがすんごくかわいくて……僕どうしたらいいんでしょうか!?」
おかげで身体中が熱くて次は何をどうしたらいいのかとたんに頭が働かなくなる。だから本気で困って父上に問いかけたというのに、聞いたとたん一瞬ぽかんとした大人たちが使用人含めて吹き出すように笑うので訳がわからなかった。
僕は本気で困ってるのに……エリーナに話も回せない気のきかない子だと思われたらどうするんですか!しばらく僕は笑う大人たちにぷんぷんだったのは言うまでもない。
「う……うえぇぇぇん」
僕を見た瞬間大声で泣き始めた。実は僕の顔も自覚がないだけで父上のように怖かったのだろうか?ドキドキとした高鳴りは身をひそめ、ショックを隠せない。寧ろ僕が泣きたい。
しかし、泣いてより幻滅される方が辛い。と頭は冷静なつもりが、急に泣かれたことで僕は慌ててしまっていたようで……
「え?え?どうしたの!?な、なかないで!」
そんな慰めにもならない言い方になり、自分の情けなさに内心項垂れる。いくら泣いた子の相手をした試しがなくてもこれはないと。
「エリーナ、泣くなら静かにと言っただろう?」
そんな僕を……いや泣き止まない娘を見かねてか婚約者の父親であるレーヴェ公爵家の当主ジルバス・レーヴェが僕の婚約者に語りかける。ジルバス公爵とは何度か会った試しはあったが……泣くなら静かにとは?泣く前提?と僕は余計に混乱した。
「常に泣いている子だが、あんなに大声をあげて泣くのは初めて見たな」
「僕はちちうえよりこわいかおだったんですか……?」
「キリアス……お主、私に色々失礼だぞ?また泣いてしまうぞ?」
そんな父上の言葉よりも、僕に対して大声で泣かれた事実に胸が痛む。何がいけなかったんだろうと。あんなに可愛い子に、婚約者でもある子に初対面の出会った瞬間から泣かれるなんて考えてもいなかったから。
「殿下、申し訳ありません。殿下は悪くないんです。ただ、娘は最近夢見が悪いようでして……」
「ゆめ?」
そこへ落ち込む僕に違うのだと言い始めるジルバス公爵に首を傾げる。夢が僕に何の関係があるのだろうと。
「娘は悪役令嬢に生まれてしまったと嘆いていまして……」
「あくやくれいじょうってなんです?」
物語でも聞いたことのない単語について問いかける。だって僕の婚約者は悪役令嬢なんて名前じゃないことぐらいわかっているから。
「悪いことをする令嬢のことを言っているみたいです。悪役の令嬢と言えばわかりやすいでしょうか?」
「なるほど、ものがたりのしゅじんこうのてきみたいなものですね」
「その解釈で間違いはないかと」
しかし、そうなるとやはり疑問が。どう見ても今だに泣き止まない僕の婚約者が悪役になれるとは思わない。寧ろ悪役にいじめられそうだ。もちろんそうなれば婚約者として僕が守るけれど。………僕が怖くて泣かれている場合はどう守ればいいのかは父上と一緒に考えてもらおう。
わからないことは恥ずかしがらずに大人から聞いたり、相談するように先生が言ってたのを思い出す。
「でもかのじょがそうなるようにはおもえません」
「ただの夢だと私も言ってはいるんですがね。どうやら殿下と婚約したら将来ヒロインというものに殿下をとられて婚約破棄され、自分は処刑されるのだと信じて疑わないのです」
「ぼく、ふていなんてしません!」
まさかの出会う前から不貞を疑われるという衝撃の事実にすぐ否定をした。ヒロインって人が誰かは知りませんが、こんな可愛い婚約者を放って他の子になびく気はさらさらない。
性格的なものを言っているならまだ出会ったばかりで何も言えないけど、知る努力はするつもりだし、あの子なら好きになる……なんてよくわからない自信すらある。
何より処刑なんて僕自身が許さない。
今だに泣く僕の婚約者にまずは不安を取り除くべきだと近づいて膝をつく。
「僕は、キリアス・ラドゥーンともうします。まだであったばかりだけど、ぜったいにきみをしあわせにするから!僕をしんじて!」
でも僕はどうあってもまだ子供だし、出会ったばかりだからこそ何の根拠もなく不安を取り除くなんて難しい。だからこそ彼女に信じてもらい、その信用に僕自身が答えることで少しずつ取り除けたらいいと思う。
「ひく……っう……っ」
こくりと頷く彼女にほっとする。しかし、彼女の涙が止まることはなく、泣きすぎて話せないのか予め想定されたかのように机にある紙とペンで彼女が泣きながら何かを伝えようとしてか慣れた手つきで書く。
「う……っう……っ」
【わたしはエリーナ・レーヴェともうします。いきなりないてすみません。けっしてでんかのかおがこわいわけじゃないんです。みらいが、こわいんです】
僕が顔を気にしていたことを聞かれていたようだ。なんとなく恥ずかしく思いながらもほっとする。顔が怖いと言われたとしてもそこばかりはどうしようもない部分だから。
「だいじょうぶです!みらいがこわいのわかります。僕もちちうえみたいにりっぱなおうさまになれるかいつもしんぱいですから!」
「……うう……っ」
あれ、そうじゃないんだけどみたいに泣きながら首を傾げられた。うう……僕にはまだ女心がわからないようです。
「あ、エリーナとよんでいいですか?僕はキリアスとよんでください!」
「ん……っ」
誤魔化したわけではないけれど、殿下呼びは寂しく感じたのでそう言えばこくりと頷くエリーナ。それだけの仕草がとても可愛いものだから先程までひそんでいたドキドキがまた戻ってきた。
「ちちうえ!エリーナがすんごくかわいくて……僕どうしたらいいんでしょうか!?」
おかげで身体中が熱くて次は何をどうしたらいいのかとたんに頭が働かなくなる。だから本気で困って父上に問いかけたというのに、聞いたとたん一瞬ぽかんとした大人たちが使用人含めて吹き出すように笑うので訳がわからなかった。
僕は本気で困ってるのに……エリーナに話も回せない気のきかない子だと思われたらどうするんですか!しばらく僕は笑う大人たちにぷんぷんだったのは言うまでもない。
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