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序章
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「キリアス様!騙されてはいけません!」
卒業パーティーでうるさく叫ぶのは俺の側近候補だった一人。何故候補に入ったのか今思っても謎なくらいに側近は遠慮したい人物だ。
「キリアス様、信じたくない気持ちはわかります。ですが、エリーナ様は私を……いじめてきたんです」
そして同じく、いやそれよりも煩わしい存在、リリアーヌ・ミューズは学園生活最初から最後まで目障りであり、警戒した人物だった。理由はただひとつ、幼い頃から一途に想うただひとりの俺の婚約者エリーナ・レーヴェを不幸に貶める人物だとエリーナが泣きながら教えてくれたから。
それだけ?と言われようと俺にはそれだけでいい。好きなやつが言うことを誰もが信じないと言っても俺だけは信じるのが俺の信条なのだから。
「リリアーヌの言うことは本当です!まず、リリアーヌが入学してから間もなく……」
「う……っえぐ……」
「ああ、エリーナ、相変わらずお前の涙は美しいが、俺はお前の笑顔が見たい。何も怖がるな。俺が必ずお前を守る」
泣きながらも俺には素直にこの状況が怖いと、不安だと伝えるエリーナはどんなときも可愛らしい。昔から俺に対して素直なのは今でも変わらない。
「それで私本当に辛くて……っ」
「うぐ……っひく」
「謝る必要はない。俺は決して謝罪がほしいわけじゃないからな。まあ、わかっててもすぐ謝るのは知っているが……全く、自虐的なのはほどほどにしろと言っているだろ?」
俺に頼ってばかりで嫌われないかと謝るエリーナに寧ろいくらでも頼って甘えてほしいと思う。まあこれは俺の男としての努力次第だと思うのでぐっと耐えるが。
「……さらには、休憩時間からリリアーヌがお花摘みから戻ってきたときですが」
「ん……っんく」
「ああっエリーナを否定したいわけじゃない!ただ俺はエリーナにもっと自信を持ってほしいだけだ」
できるだけ下手に傷つかないよう気を遣ったつもりだが、余計気にかける結果になってしまい慌てる。俺が傷つけてどうする!
「……わ、私悲しくて……」
「ひっく……」
「大丈夫だ。わかってくれたならいい」
俺が決してエリーナを否定をしたいわけじゃないことを理解してもらえたようで安堵した。全く……今日こそエリーナが一番不安で仕方ない日だというのに……。しっかりしなければ。
「さて、信じる気はさらさらないが、エリーナがいじめてきたというが、証拠はあるんだろうな?」
「「…………」」
何故だ?自分たちで言い始めた癖に絶句した様子なのは。話を一応は聞いてやるというのに。
そんなこともあったなとエリーナと共に過去の話をする。今だにあの日、何故あそこで絶句とばかりに側近候補らとリリアーヌ・ミューズが表情を固めたのかわからない。まあ、エリーナを悪く言うあんなやつらのこと知りたくもないが。
「キリアス様……」
それよりもあの日から泣かずに俺の名前を呼ぶようになったエリーナは結婚してから益々可愛くなって愛しさが増すばかりの日々は幸せでしかない。名前を呼ばれるだけで仕事の疲れは消える。そんな日々の疲れをたった一言で消してくれるエリーナほど王妃に相応しい人は考えられない。……いや、そもそも考えたこともなかったな。
「確かに忘れられない過去かもしれないな」
思考をしながらもエリーナの言葉を無視する気はもちろんない。いつまでもあの日のことは忘れられそうにないと語ったのはエリーナ。俺にとってもエリーナに明るい未来を見せるための大切な日となったのだから忘れるはずもない。
「キリアス様……」
「そ、それは嬉しいが……急に言われては照れる」
キリアス様を好きになって、信じてきてよかったです。今もとても愛してますとは……そりゃあ愛しい人に言われたら結婚した夫婦とはいえ照れる。昔からエリーナはよく泣きながらも積極的な言葉を言うのだからいつまでたってもエリーナには負けてばかり。まあ、エリーナなら尻に敷かれても喜んで敷かれるが。
「キリアス様」
「そうか、もうそんなに経ったのか」
エリーナに言われてエリーナと出会ってからの年月に思いを馳せる。長いような短いような日々だった。出会った日からエリーナがいつか笑えるようにと願いながら、誰よりもエリーナの理解者であり、エリーナを未来の絶望から守るために必死だったのを俺はずっと忘れることはないだろう。
今でも昨日のことのように思い出せる。エリーナとの出会いの日とその軌跡を………。
卒業パーティーでうるさく叫ぶのは俺の側近候補だった一人。何故候補に入ったのか今思っても謎なくらいに側近は遠慮したい人物だ。
「キリアス様、信じたくない気持ちはわかります。ですが、エリーナ様は私を……いじめてきたんです」
そして同じく、いやそれよりも煩わしい存在、リリアーヌ・ミューズは学園生活最初から最後まで目障りであり、警戒した人物だった。理由はただひとつ、幼い頃から一途に想うただひとりの俺の婚約者エリーナ・レーヴェを不幸に貶める人物だとエリーナが泣きながら教えてくれたから。
それだけ?と言われようと俺にはそれだけでいい。好きなやつが言うことを誰もが信じないと言っても俺だけは信じるのが俺の信条なのだから。
「リリアーヌの言うことは本当です!まず、リリアーヌが入学してから間もなく……」
「う……っえぐ……」
「ああ、エリーナ、相変わらずお前の涙は美しいが、俺はお前の笑顔が見たい。何も怖がるな。俺が必ずお前を守る」
泣きながらも俺には素直にこの状況が怖いと、不安だと伝えるエリーナはどんなときも可愛らしい。昔から俺に対して素直なのは今でも変わらない。
「それで私本当に辛くて……っ」
「うぐ……っひく」
「謝る必要はない。俺は決して謝罪がほしいわけじゃないからな。まあ、わかっててもすぐ謝るのは知っているが……全く、自虐的なのはほどほどにしろと言っているだろ?」
俺に頼ってばかりで嫌われないかと謝るエリーナに寧ろいくらでも頼って甘えてほしいと思う。まあこれは俺の男としての努力次第だと思うのでぐっと耐えるが。
「……さらには、休憩時間からリリアーヌがお花摘みから戻ってきたときですが」
「ん……っんく」
「ああっエリーナを否定したいわけじゃない!ただ俺はエリーナにもっと自信を持ってほしいだけだ」
できるだけ下手に傷つかないよう気を遣ったつもりだが、余計気にかける結果になってしまい慌てる。俺が傷つけてどうする!
「……わ、私悲しくて……」
「ひっく……」
「大丈夫だ。わかってくれたならいい」
俺が決してエリーナを否定をしたいわけじゃないことを理解してもらえたようで安堵した。全く……今日こそエリーナが一番不安で仕方ない日だというのに……。しっかりしなければ。
「さて、信じる気はさらさらないが、エリーナがいじめてきたというが、証拠はあるんだろうな?」
「「…………」」
何故だ?自分たちで言い始めた癖に絶句した様子なのは。話を一応は聞いてやるというのに。
そんなこともあったなとエリーナと共に過去の話をする。今だにあの日、何故あそこで絶句とばかりに側近候補らとリリアーヌ・ミューズが表情を固めたのかわからない。まあ、エリーナを悪く言うあんなやつらのこと知りたくもないが。
「キリアス様……」
それよりもあの日から泣かずに俺の名前を呼ぶようになったエリーナは結婚してから益々可愛くなって愛しさが増すばかりの日々は幸せでしかない。名前を呼ばれるだけで仕事の疲れは消える。そんな日々の疲れをたった一言で消してくれるエリーナほど王妃に相応しい人は考えられない。……いや、そもそも考えたこともなかったな。
「確かに忘れられない過去かもしれないな」
思考をしながらもエリーナの言葉を無視する気はもちろんない。いつまでもあの日のことは忘れられそうにないと語ったのはエリーナ。俺にとってもエリーナに明るい未来を見せるための大切な日となったのだから忘れるはずもない。
「キリアス様……」
「そ、それは嬉しいが……急に言われては照れる」
キリアス様を好きになって、信じてきてよかったです。今もとても愛してますとは……そりゃあ愛しい人に言われたら結婚した夫婦とはいえ照れる。昔からエリーナはよく泣きながらも積極的な言葉を言うのだからいつまでたってもエリーナには負けてばかり。まあ、エリーナなら尻に敷かれても喜んで敷かれるが。
「キリアス様」
「そうか、もうそんなに経ったのか」
エリーナに言われてエリーナと出会ってからの年月に思いを馳せる。長いような短いような日々だった。出会った日からエリーナがいつか笑えるようにと願いながら、誰よりもエリーナの理解者であり、エリーナを未来の絶望から守るために必死だったのを俺はずっと忘れることはないだろう。
今でも昨日のことのように思い出せる。エリーナとの出会いの日とその軌跡を………。
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